18:招集
いつも誤字報告ありがとうございます(*´∀`)♪
「んぅ…」
むくりとセラは起き上がると傍で眠るレイルの寝顔を眺める。
そしてゆっくりとレイルの胸に手を当てると精神を集中させて魔力を感じ取る。
「…やっぱり竜の血が強くなってる」
セラはレイルの魔力の中に竜の力が流れているのを感じ取ると眠るレイルの唇と自身の唇を重ね合わせる、そしてゆっくりと自らの魔力を流し込んでレイルの魔力を取り込む。
「ん…」
体内にレイルの魔力が流れ込んでくる、最初は身を焦がされる様な感覚だったが今ではこの魔力譲渡の感覚が癖になってきている。
(どんどん染められてるみたい…)
しばらくして魔力譲渡を終えて唇を離すと再び魔力を感じ取って竜の力が抑えられてるのを確認する、それにほっと胸を撫で下ろすが再び思案に暮れる。
(これは応急処置にしかならない…)
今でこそセラの魔力で抑えてはいるがレイルの竜の力は日毎に増してきている、いつかは分からないがいずれ魔力譲渡だけで抑えられなくなるのは確実だった。
魔術によって封印を施すという手もあるが用途が限定的な封印魔術はかなり高等な魔術であり生憎とセラはその類いの魔術に関しては修めていない。
(先生なら封印魔術が使えるかも知れないけど…)
自身に魔術を教えたあの人ならばと考えたがセラでさえ行方を知らない、何よりもセラの首に掛かる首輪を見ればあの人は間違いなく主人であるレイルに怒髪天となるのが予想できた。
なにせ自分と別れる際にも最後の最後まで本当の娘を見送る様に泣きながら門出を祝ってくれた人だ、そんな人がセラの今のこの状況を見て冷静でいられるかと聞かれたら自信はない。
(教皇様なら封印魔術を知っているかも…)
次会った時に相談をしてみよう、レイル自身が覚えるかセラがレイルに掛けるかは分からないが共にいる為にも封印魔術の習得は必須だと再認識したセラはベッドから出て服を纏うとドアにノックがされる。
「セラちゃん起きてる?」
「シャルさん?夜中にどうしたんですか?」
「バニス教団に動きがあったわ、緊急の招集が開かれたからレイル君と一緒に来て頂戴」
「っ!…分かった、すぐに向かう」
セラはすぐにレイルを起こして支度を整えると三人で向かった。
―――――
招集された部屋ではライブス教皇を除いた主要な面々が揃っており、全員が集まったと判断されてエリファスが音頭を取る。
「まずは報告させて頂きます、1日前になりますがエルメディア帝国騎士団の“黒騎団”が壊滅したという報が入りました」
エリファスがそう発言すると空気が張り詰める、黒騎団の勇名は王国にも響き渡るだけあってそれが壊滅したというのは相当なことだと察せられた。
「壊滅の原因はなんですか?黒騎団が生半可な魔物や敵に負けるとは思えないのですが」
「…黒騎団の生き残りの証言によると敵は一人だったそうです」
「一人!?」
「相手は“制裁”の奇跡を名乗る剣士だったそうです、並外れた剣術と不可思議な技を使っていたらしいのですが後は容姿以外にめぼしい情報は得られませんでした」
「容姿?」
「全身を黒い服で覆っていたそうですが顔に牙の意匠が施された仮面をしていたと」
「…なにも分かってないのと同じですね」
「ただひとつだけ気になる事が」
そう前置きをしてエリファスはレイルを見る。
「制裁の奇跡は自らの技を“魔剣術”、と呼んでいたそうです」
―――――
同時刻、王都付近にて。
小高い丘から王都を見据える人影があった、その横に別の人影が立つ。
「何の用だ」
「いえ、こちらの準備は終わったので貴方にも一応報告をと」
「いるか、お前だろうが信徒だろうが邪魔なら斬るぞ」
「あら怖い、でしたら斬られない様に気をつけなくてはいけませんね?」
「…ちっ」
人影のひとつは舌打ちを残して消える、それを見送ると残った者、アステラは指を鳴らすとその背後に巨大な人型の影が現れる。
「さて、始めましょうか」
口を三日月に歪めてアステラは告げた。
「舞台を整えに…」
不穏な空気撒き散らすの大好き




