15:急報
ちょっと報告があります。
「なんで本気で戦い合ってるのですか貴方達は」
模擬戦後、レイルとゾルガは治療を受けるとエリファスからこんこんと説教を受けていた。
「幸い回復術で済む範囲だったから良かったものの今はバニス教団との戦いが控えているのですよ?」
「…すいません」
「いや、なんというか彼の熱に当てられてな…」
「将軍は普通に反省してくださいね?」
にこりと笑いながらエリファスは告げるがその眼はいつかのシャル同様笑っていなかった。
「まぁお陰でレイル殿の実力を知れましたし、どうやら調子も取り戻せた様ですから私からはこれまでにしておきましょう」
「では私も…」
「将軍は公務があるので続きは行きながらにしましょうか」
そう言うとエリファスはレイルにまた後でと言い残して将軍と去っていった、とりあえずは鈍った感覚も取り戻せたし良かったと考えて練兵場を後にしようとすると入り口にふたつの影が立っている。
そこにはやらかした子供を見る眼をしたシャルと責める様な眼をしたセラだった。
…セラの雰囲気からしてかなりのご立腹だと分かる、先程の戦いの無茶な魔術行使をバッチリ見られていたらしい。
エリファスがレイルの説教を切り上げたのはどうやら彼女の存在もあった様だ…。
―――――
その後セラについてきてとだけ言われて部屋に戻る、シャルは「私お仕事してくるわね」と言い残して風の様に消えた。
…逃げやがったと思ったがどう考えても自分が悪いので責める事は出来ない。
そうして部屋の中には正座するレイルとその前に立つセラという構図が出来上がっていた。
「…いきなり付与魔術を自身に掛けるなんて無茶過ぎる」
ぽつりとセラは静かな声で告げる。
「付与魔術は制御を間違えれば身体を破壊しかねないもの、それをぶっつけ本番で使うだなんて自殺行為に等しい」
「すまない、勝つにはあれしかないと思って…」
「…シャルさんの言った通りだった」
そう言うとセラはふぅとため息をついてレイルと目線を合わせるといきなり頬を引っ張ってきた。
「レイルは一人になるとすぐ無茶をする」
「そんな事は…」
「ある、私が目を離すとレイルは無茶をしてきた」
言い訳も許さず断言される、自身の行動を思い返して反論できないレイルはされるがまま黙ってしまう。
「だからもう目を離さない」
「ふぇっ?」
「私がレイルが無茶しない様に傍にいる、レイルが死に急がない様に見てる事にする」
セラは頬を離すと不意に深いキスをレイルにしてきた。
唾液が交わる音を立てながら口を離すと蠱惑的な眼をしてレイルを見つめてきた。
「絶対に死なせたりしないから…」
その後、レイルは日が暮れるまでセラと部屋の中に籠っていた…。
―――――
日が暮れる頃、ゾルガとエリファスは執務室にて各地に派遣した調査員やギルドからの報告に目を通していた。
「あれ以来バニス教団の動きが捉えられんな」
「少なくともウェルク王国内ではですがね…」
戒めの奇跡の件以来バニス教団は不気味なほど動きがない、まだ五日程とはいえここまで捉えられないのは異常とさえ言えた。
「一体どうやって隠れているのか」
「し、失礼します!!」
そう呟いた途端、執務室を蹴破る勢いで兵士が入ってくる。
「何事ですか、落ち着いて簡潔にお願いします」
「は、はい!!信じがたい事ですが…」
エリファスが差し出した水を呷ると兵士は深呼吸して告げた。
「エ、エルメディアの帝国騎士団の一角、“黒騎団”が壊滅したとの事です!!」
「何っ!?」
その一報は束の間の平穏に終わりを告げるものだった…。
報告ですがストックが切れましたorz
リアルの事情もありますが次回から隔日更新になります、余裕が出来ましたら続けて更新しますのでお楽しみ頂いてる方々にはご迷惑おかけしますが完結まで書ききりますので何とぞお付き合いお願い致しますm(__)m




