14:魔術
予約が1日ズレてました...m(__)m
再び剣がぶつかり合う、レイルは身体強化を変わらず発動しているがゾルガが絶妙な加減で力を逃して均衡を保っている。
(やはり技術では敵わないか)
かといって距離を取るのも得策ではない、魔術でも加速の制御に関してもゾルガはレイルの上をいっている。
だからこそ勝機があるとしたら魔術を使われる遠距離よりも至近距離で戦う方が勝ち目があると判断してゾルガに喰らいつく。
思考を、感覚を、動作をより早くする、今自分が持てる全てを余すことなくゾルガに叩きつける、それをゾルガはただ淡々と捌いていく。
足りない、今のままではゾルガの技術を超える事は出来ないと分かる。
(どうすれば良い!?今の俺がこの人を上回るには…)
剣戟の中で加速する思考が視覚を通してゾルガを捉える、それはゾルガの動きだけでなくゾルガが纏うものすら映し出した。
(あれは…風の魔力?)
風の魔力がゾルガの全身と長剣を覆う様に包み込んでいる、その風が振るわれる長剣の剣速を自在に変化させていた。
(だから急に速度が上がったりしたのか)
そして全身に纏った風を鎧にしてダメージを軽減させたり動作の加減速を行っている、それがゾルガの魔術。
(魔力操作による身体強化ではなく、魔術による強化…)
思考する、視覚から得た情報がひとつ、またひとつと頭の中の情報と繋がってひとつの仮定を組み上げる。
思い出せ、自分はあの時どうやった?あの時の魔力の流れを、イメージをどうやって行った?セラから教えられたものをあの時確かに掴んだ筈だ。
組み上げる、積み上げる、仮定を結論へと変えてレイルは実行に移す。
『飛翼』を発動して距離を取る、練兵場の端まで下がって腰だめに剣を構える。
(あれは、居合いか?)
ゾルガはレイルの構えを見て考える、侍を名乗る異国の剣士が使う納刀した状態から放つ高速の剣術だ。
だが居合いは基本的に自分から踏み込まない限りはカウンター以外には使えない技だ、初見ならまだしも相対した事があるゾルガは風の刃をレイルに向けて放つと同時に加速して迫る。
(その技では風の刃と私の剣を同時には捌けん!!)
唸りを上げてゾルガがレイルに迫る、先に風の刃がレイルに届こうとした瞬間…。
「“雷加”」
レイルの全身を雷が走って覆い尽くすとこれまで以上の速さで駆けて風の刃を置き去りにする。
「なっ!?」
雷を纏ったレイルはゾルガに向けてまっすぐに駆ける、雷光の如き速さにゾルガは咄嗟に長剣を構えると雷刃と化した剣が叩きつけられる。
それは凄まじい轟音と衝撃を伴ってゾルガを吹き飛ばした…。
―――――
「ぐっ…」
魔術を解除したレイルはその場で膝をつく、制御しきれなかった雷はレイルの体を限界以上に強化した反動を起こしていた。
軋む体に痛みを感じながら顔を上げる、視線の先には長剣を構えて立つゾルガがあった。
(勝てなかったか…)
そう落胆するレイルにゾルガが呟く。
「私の敗けだ」
「…え?」
「腕が上がらない、折れてはいないが動かせん」
どこか晴れ晴れとした表情をしながらゾルガは告げる。
「貴殿の勝ちだ、レイル」
とりあえず決着




