表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/195

閑話:シナリオ

次章の前日譚みたいなものです


そこは暗く深い礼拝堂だった、朽ち果て植物に侵食された壁には燭台の灯りが揺らめき灯りに照らされて浮かび上がるのは黒いローブを纏った者、教団員達が四方を囲む様に佇んでいる。


そして部屋の中央には血で書かれた魔方陣の上に拘束され猿轡を噛まされた男が座らされていた。


「やあ、待たせたね」


男の前にフードを被り純白の法衣を纏った男が現れる、手に握られた血肉で造られた様な赤い短剣が妖しく光る。


「――!――――っ!!」


拘束された男は必死に抵抗するが教団員に取り抑えられ、強制的に立たされる。


そして男の胸に短剣が突き立てられた。


「―――――――っ!!!?」


すると短剣から赤い霧の様なものが昇り、突き立てられた胸を中心に血管の様な線が広がっていく。


「か、がっ!?ぐあァァァァァァァッ!!!?」


男の体が変容していく、拘束を引き千切って膨れ上がっていく肉体が広がった線に締めつけられ肉の塊から徐々に生物の形を取り戻していく。


だがそこには人の姿はなく、青銅色の肌をした頑強な巨人の魔物“鎧鱗巨人(グレンデル)”が立っていた。


「うん、どうやら魔人化は安定してきた様だね」


一部始終を観察してた法衣の男は涼しげな声で呟くとグレンデルが雄叫びをあげて殴りかかる。


人の頭を容易く粉砕する膂力を秘めたグレンデルの一撃、男はそれを片手で受け止めていた。


「しかし知能の低下は如何ともし難い、まぁ聖具の事もあるし、そこまで望むものでもないか」


受け止めた衝撃でフードが捲れ上がる、そこには彫像めいた美貌に純白の髪、そして山吹色に輝く瞳をした顔が露になった。


「“静かに”」


ただ一言、それだけでグレンデルは地面にひれ伏す、まるで誤って主人に噛みついてしまった犬の様に体を震わせながら…。


「頼んだよ」


それを一瞥すると教団員に声を掛けて男は礼拝堂を出る、暗い廊下を歩いていると後ろに気配が現れる。


男は振り返らずに歩きながら後ろに現れた修道女に声を掛ける。


「やぁアステラ、急に呼び出してすまないね」


「お気になさらず、それでどうされましたか?」


「うん、君には伝えた方が良いかなと思ってね」


そう前置きを置いてから男はなんて事ない様に告げる。


「バスチールが死んだよ」


「あら…」


「あんまり驚かないね?」


「驚いてますよ?ただあの方はやけに偉そうで尊大で頭に血が昇りやすい方でしたがそれでも死ぬ所は想像できなかったので」


顎に指を添えながらアステラは答える、そしてそのまま疑問を口に出した。


「それで誰に殺されたのです?もしかしてご自身の聖具で首を括られたのですか?」


「いや殺されたよ、それも真正面から戦ってね」


「まぁ、王都にそれほどの強者がいたという情報はなかったのですが…バスチールさんの聖具であれば今の人々に負けるなんてない筈ですのに」


「殺ったのはレイルという剣士だよ、ついでに言えば…えっとなんだっけ君がフォルトナールで見つけた…セネクだっけ?あれを倒したのもその剣士だ」


「あら、戻ってこないのであの子に倒されたとばかり…」


まるで雑談の様に二人は生き死にを語る、そこには哀悼の気持ちなど欠片もなかった。


「これで奇跡は私を含めて二人、随分と減ってしまいましたね」


「いや、三人だよ」


アステラの言葉に訂正を入れる、男は微笑みを浮かべて語る。


「まぁ色々と予想外の事は起きてるけど織り込み済みさ、人が持つ底力は四十年前の実験の時に良く教えてもらったからね」


「では…」


「支障はないからとりあえずは見てみようじゃないか、これから先で私が書いた筋書き(シナリオ)通りに行くのか、それとも誰かが変えるのか」


男は楽しげに笑う、まるで予想外の事を期待してるかの様に…。


「まあもしもの時は手を加えるよ、君は私の指示があるまでいつも通りで頼んだよアステラ」


暗い闇の中に姿を消す男にアステラは深く頭を下げる。


「かしこまりました、我らが教主バニス様」






―――――


「それにしても本当に予想を超えてくるなぁ…」


闇の中でバニスは嗤う。


「たった四十年とは言え彼等以外で聖具を持った魔人に勝つ者が現れるなんてね、あぁ本当に…」


「人とは素晴らしい」


これにて2章は終わりになります、次の更新ですがプロット作成と見直し等をしたいので9/20から始めたいと思います。


自分が書きたいものを書いてますが皆様に楽しんで戴ける様にしますのでどうかお待ち下さいm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作書き始めました、良ければご覧ください。 侯爵次男は家出する~才能がないので全部捨てて冒険者になります~ https://ncode.syosetu.com/n3774ih/
― 新着の感想 ―
[一言] 「バスチールがやられた様だな…」「フフフ…奴は我ら幹部の中でも最弱…」「人間ごときに負けるとは奇跡の面汚しよ…」みたいな会話期待してたけど意外と信頼されてたバスチール。しかし奇跡の連中って大…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ