2:黄金級冒険者
まぁこうなるな
「ちょっ、セラ...」
思わずぎょっとしてしまったレイルが否定する暇などなく…。
あの氷華の魔女がパーティー組んだ!?
パーティーってか奴隷!?
あいつ一体なにしやがったんだ?
俺もあんな奴隷欲しいわ…
いや俺は美少女の奴隷になりたい…
おい今言ったの誰だ
周囲は既に様々な憶測やらなんやらの声が上がって収拾がつかなくなってる、とりあえずセラを連れてギルドを出ようとするが…。
「…君がレイル君だね?ちょっとお姉さんに詳しく聞かせてもらえないかなぁ?」
肩を掴まれ振り向くと笑っているのに笑ってないシャルの顔があった。
―――――
シャルに事情を話す事になったレイル達はシャルの後に続いてギルドの談話室に向かう事になった。
基本ギルドの談話室等は白銀級以上しか使用許可がないはずなのだが彼女はあっさり使うと決める辺り使用に慣れてるとわかる。
なによりも歩いてる姿だけでその実力は伺える、微塵もぶれない体幹が鍛え抜かれた果てに備わったものだと物語ってる。
「セラ、彼女の等級ってわかるか?」
「…黄金級、この街には二人しかいない内の一人」
「やっぱりか」
なんとなく予想していたがこんな形で会う事になるとは思わなかった。
「二人共、内緒話は後でね」
そんな事を話してる内に談話室に着いたので中に入り向かい合う様に席に座る。
…終始笑顔なのがめちゃくちゃ怖い。
「とりあえず自己紹介から始めましょうか。
私はシャルロッテ・ウィーダル、セラちゃんが言ってた通り黄金級冒険者よ」
「あぁどうも、俺はレイルです。
一応は白銀級冒険者をやってます。」
「かしこまらなくて良いわ、いつも通りの話し方で結構よ」
「あ、あぁ…」
なんなんだろうか、このなんとも言えない居心地の悪さは…。
本来であればパーティー登録を済ませて鍛練に向かっていた筈なのに…。
「それで?なんでセラちゃんを奴隷にしたのか納得いく説明をしてもらえるかな?」
現実逃避は許されない様だ、というかどんな説明しても次の瞬間斬り掛かってきそうな気配がするのに納得できる説明なんて出来る気がしない。
「…首輪は私が自分で着けた、レイルに非はない」
「…え?自分で?」
するとセラが答えた。
「これは正当な取引の証明、私が彼に持ちかけて彼はそれに応じただけ…やましい事は何もない。」
「え、えぇ…?でも彼も男なんだからそれを楯に迫ってくる可能性だって…」
「…私の目的は知ってる筈」
言い募るシャルを遮ってセラは言葉を紡ぐ。
「私達は互いを信用して手を取り合うと決めた、お互いの目的を誰よりも理解しているから…疑う必要なんてない」
迷いのない眼でセラは毅然と言い切る、自分を信じていると断言された事に思わず嬉しさがこみ上げてくるが表に出さない様に自制する。
二人の様子を見て困惑とも何を聞けば良いのかわからないともとれる様な表情を浮かべるシャルだがそこにドアを開けて年配の職員が入ってくる。
「あ~っと…話してる途中で悪いんだが3人共、ギルドマスターがお呼びだ」
「えぇ…?ちょっと待たせられない?こっちはこっちで大事な話してるんだけど」
「そうもいかねんだよ、早く行ってくれないと俺の首が飛ぶかも知れねぇんだ」
「…ここのギルドマスターは遅刻しただけで首を刎ねるのか?」
思わず口を挟んでしまうが年配の職員はため息をつくと呼ばれた用件を口にした。
「今回の魔物の暴走群に関して将軍様直々にお話を聞きたいそうだ、そんなお方じゃねえとは思うが万が一にも機嫌を損ねて死ぬなんざゴメンだからはよ行ってくれ」
思わぬ相手に全員揃って顔を見合わせてしまった。
次回ギルドマスター(影薄い)登場




