48:潜入
日が昇り、準備を終えたレイル達は文字通り“伏魔殿”となった首都へと向かう。
防壁に辿り着くとシャルが独特の意匠が施されたナイフを空間に突き立てるとガラスに穴が空いた様になって人一人が通れるスペースが生まれた。
「皆、これを着て」
そう言ってシャルは全員に黒いフードが付いた外套を配る、言われた通りに着てから穴を潜り防壁を抜けるとそこにはオーガやグレンデルといったダンジョン深層に現れる様な上位の魔物達が我が物顔でうろついていた。
「行きましょう、街はまだダンジョン化が進んでないみたい」
「ああ、それにしても本当にバレないんだな」
「過信は禁物よ、相手に気付かれたり魔力を放出したら効果が消えちゃうから」
レイル達が纏っている外套はシャルの一族が独自に作り出した魔導具で一時間だけ魔物を含めた生物の認識を阻害するというものだ。
レイル達はシャルの先導の下なるべく魔物達が少ない道から城へと向かっていく、三十分ほどジグザグに進むと城のすぐ近くまで辿り着いた。
「変ね…」
「どうした?」
シャルが城の門の前を示す、そこには武装したオーガ二体が門番の様に立っている以外は周囲には魔物の姿どころか気配すらなかった。
「…魔物はあの二体だけだな」
「罠、の可能性が高いのだけどそれにしては周囲になにも無さすぎるのよね」
「…ひとまずあの二体を倒して城に入るか?」
「見た限り城に入れるのはあの門しかない以上それしかないわね、片方は二人に任せて良いかしら?」
シャルの提案にレイルとセラは頷くと二手に別れて左右から門番達に近付いていく、そして遮蔽物がなくなった所でレイルとローグが門番へと向かって走る。
門番達は目の前に現れた二人を認識して声を上げようとするがその瞬間に片方は喉を氷刃で斬り裂かれ、もう片方はシャルの刺突剣で貫かれた。
「「っ!?」」
「しっ!!」
「竜剣術『崩牙』」
声を上げる事が出来ず動きが止めた門番達をローグが戦槌で頭を兜ごと砕き、レイルが剣で首を斬り落とす。
声を上げる間もなく門番達を倒したレイル達は門へと向き直る、シャルが調べてみるが鍵の類は見つからなかった。
「どうしようかしら」
「どいてくれ」
シャルを下がらせるとレイルは剣に魔力を込めて『崩牙』で門を斬り裂く、少しして人一人通れるくらいに門にスペースが生まれた。
「師匠はこうやって城に入ったらしい」
「…うん、それダンジョン以外でやっちゃ駄目よ?」
レイル達は門を潜り抜けてダンジョンと化した城の中へと入っていった。




