37:集う黄金級
「おう、お前さん達が新しい黄金級か」
話しているとレイル達はローグに声を掛けられる、ローグは少しだけ目を細めてレイルとセラを見る。
「…お前さん達、歳幾つだ?」
「?…20ですが」
「…私は18」
「マジでか…俺の半分くらいしか生きてねえのにどんだけ練り上げられてんだよ、いやあの竜をぶっ倒す所は見てたがよ…俺もう要らねえんじゃねえか?」
「んな訳ないでしょ、この二人が特別なのよ」
ローグの呟きにシャルが呆れながらも答える、レイルとセラが誰何の視線を向けるとシャルがローグの脇を小突く。
「そういや自己紹介がまだだったな、俺はローグ・カイゼル、お前さん達と同じ黄金級冒険者だ」
「…ローグ・カイゼル、あの“ダンジョンの主”の?」
「そうよ、まあ実際はモグラみたいなものだけどね」
「モグラじゃねえっての」
レイルもその名前を聞いて思い出す、レイルとセラが昇格する前はウェルク王国には二人しかいなかった黄金級冒険者であり、ダンジョン神話層の探索を行える数少ない一人だと噂で聞いた事があった。
「確かダンジョンで暮らしていると聞いた事が…」
「そうさ、だけどちょいと前に棲み家にしてた所が崩れちまってな、仕方ねえから街に戻ったらギルマスにこっちに行けって言われてよ」
「…それで黄金級になれるのか?」
黄金級冒険者は国家規模の案件を任せられるだけの等級だ、故に与えられる権力と同時に相応の責任を求められる、ダンジョンに籠っていたらそれを果たせないのではとレイルが疑問を浮かべているとシャルが答える。
「この人はダンジョンから帰ってきた時に持って帰ってくる資源や素材がとんでもないのよ、それこそギルドの年の収益に匹敵するくらいのものをね、歴史上でもダンジョン探索だけで黄金級になったのはこの人くらいよ」
「年単位!?」
「…文字通り桁が違う」
「大した事じゃねえよ、使わねえもん売っ払ってるだけだからな」
心の底からそう思ってるのだと態度で表すローグにレイルとセラは確かに黄金級としての器を垣間見た…。
―――――
ウェルク王国の一室に再びレイル達は集う、前回いなかったローグも今回は参加していた。
「でだ、ぶっちゃけた話どう動く?」
バルセドが頬杖をついて問いかける、それにウェルク王が答えた。
「まずは現状の把握を、こちらが動かせる兵は現状だと五千といった所、そちらはどうかな?」
「…全部合わせて一万って所だ、これ以上は俺の国が狙われた時の事を考えると動かせねえ」
「…相手には竜種がいなくなったとは言え未だこちらが優位にあるとは言えん」
部屋に沈黙が下りる、するとフラウが立ち上がって円卓に広がった地図に手を置いた。
「今の状況じゃこちらから攻める事は出来ないわ、でも守りに入ってもじり貧である事は事実よ」
「ならどうするってんだ?」
「なら手はひとつよ」
フラウは地図の上に置かれた駒をアスタルツの首都がある場所へと置いた。
「魔物の大群をこちらで引きつけて、その間にバニスをこちらの一番強い戦力で叩く…それが私が考えれる最善手よ」




