30:潰竜の暴威
「かかか!やはり戦いとはこうでなくては!!」
笑いながらクロムバイトは翼をはためかせて大きく旋回する、黒い魔力を体から放出しながら空を飛び漆黒の流星となってクロムバイトはエルグランドに狙いを定めた。
「突っ込んで来る気か!?」
「ちぃっ!しっかり掴まっていろ!!」
エルグランドがそう叫ぶと一条の流星となったクロムバイトを飛び上がって避ける、クロムバイトは弧を描いて旋回すると再び接近しながらブレスを放った。
エルグランドが回避を試みるも放たれたブレスがまっすぐに迫る、だがすかさずセラが氷の盾を複数展開していく事によって僅かに軌道が逸れる事でギリギリ回避に成功する。
「エルグランド―――――ッ!!!」
“潰矢の雨”と共にクロムバイトが真上から急降下してくる、前のものより倍近くの数が今までの様にただ放たれるだけではなく黒球が全てレイル達に向けて迫った。
降り注ぐ黒球を斬撃と魔術、ブレスによって迎撃する、しかしひしゃげた空間と煙を突っ切ってクロムバイトが姿を現した。
「レイル!」
「…っ!?クソ!!」
レイルはセラを引き寄せてエルグランドの背中から飛び降りる、その直後に突っ込んできたクロムバイトがエルグランドとぶつかり絡まる様に落ちていった。
二体の竜が土煙を上げて地上に落ちる、体勢を入れ替える様に地面を転がりながら掴み合っていたがエルグランドの頭を鷲掴みにしたクロムバイトが力のままにエルグランドの頭を地面に叩きつけた。
地響きの様な咆哮を上げながら何度も叩きつける、重力魔術によって叩きつけられる威力が増したそれは地面を砕いて頭を半ばまでめり込ませていた。
「砕けろエルグランドッ!!!」
「させるか!」
クロムバイトの背中に飛び乗ったレイルが首元に永劫争剣を突き立てる、苦悶の声を上げてクロムバイトはレイルを振り落とそうとエルグランドを放してその場で暴れる。
激しく動き回るクロムバイトにレイルの体も激しく揺れる、爪のついた腕が掴もうとしているのを察してダインスレイヴを引き抜いて飛び降りるとレイルに向き直ったクロムバイトが爪を漆黒に染めて振り上げた。
『崩天爪牙』を発動すると同時に爪が振り下ろされる、巨岩が落ちてきたかの様な衝撃と重圧にレイルの剣を持つ腕が悲鳴を上げた。
「ぐぅ…っ!」
しばらく刃と爪は拮抗していたが次第にレイルが押されていく、押し潰そうとクロムバイトが力を込めた瞬間に後ろからエルグランドが腕に噛みついた。
「ぐあぁっ!!?」
エルグランドの牙が鱗を砕いて肉を焼く、爪に込められた魔力が霧散するとエルグランドは顎に更に力を込めて腕を噛み千切った。
「があぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
辺りに肉の焦げる匂いが広がる、肘から先を噛み千切られたクロムバイトはもう片方の腕に魔力を注ぎ込んだ。
「消えろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
クロムバイトの腕に竜巻の様に魔力が纏わりつく、振るわれた腕はエルグランドの腹に刺さり、勢いのままに上空に高速でエルグランドは打ち上げられると雷火で出来た体が崩れていき、空中で消えていった…。




