17:合議の始まり
その光景が夢だとすぐに分かった、それは一度見た荒涼とした大地だったから。
荒涼とした大地で怪物と化した友を手に掛け、その後も蛮神共が残した呪いを滅ぼさんと世界を回った男の記憶だった。
幾多の戦いを経て、多くの命を奪って、その理由すら朧気になりながらも男は歩き続けた。
その刃がいずれ神々に届くのだと信じて…。
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「う…」
目を覚ますと久しぶりに見る天井があった、体を起こして置いてあった水差しごと水を一息に呷る。
口元を拭ってもう一度周囲を見渡すとやはり王城の一室だった、眠ってる間に運ばれたのだとなんとなく察したレイルは外されていた装備を着け直していると部屋のドアが開けられた。
「レイル?もう起きて大丈夫なの?」
「あぁ、とりあえず異常はないみたいだが…俺はどれくらい寝てたんだ?」
「あれから丸一日、あの後に先生が来て一緒に王都に戻ったの」
それからの王国の動きなどを教えてもらうとセラが起きたらウェルク王が呼んで欲しいと言われたと伝えられ一緒に部屋を出る。
そして玉座の間に着くと中へ入る事を薦められて入るとウェルク王とイデアル王子が話し合っていた。
「レイル、体はもう良いのか?」
「ご心配頂きありがとうございます、起きてからも異常はありません」
「ならば良い、それと此度はイデアル王子、ならびにマイラ王女を良く守ってくれた」
「私からも改めて礼を言わせて欲しい、貴殿達が居なければ私達は山を越える事すら出来なかっただろう」
ウェルク王に続いてイデアル王子もレイル達を労う、それにレイルとセラは頭を下げて返礼するとウェルク王は顔を引き締めて言葉を紡いだ。
「本来であれば褒美と休みを与えたいのだが…出来ればお主達にはこの後行われる合議に参加してもらいたい」
「合議にですか?」
「うむ、伝令によるとエルメディア皇帝がもうすぐこちらに到着するそうだ、火急の事態ゆえ皇帝が到着次第すぐに合議を開催する」
ウェルク王が言い終わるとその直後に皇帝が到着したという知らせが届けられた。
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ウェルク王城の一室にある円卓をそれぞれの国の代表とその護衛等が囲んでいた。
ウェルク王の後ろにはゾルガ将軍にエリファス、グリモア宰相が控えイデアルの後ろにはマイラとキリムが控えていた。
そして白で統一された鎧を纏う騎士達を控えさせ鍛え込まれた肉体を上等な衣で覆った壮年の男性、エルメディア皇帝バルセド・エルメディアが向かい合っていた。
レイル達はライブス教皇とフラウの後ろに控えて様子を見ていると頭を掻きながらバルセドが口を開いた。
「アスタルツがやられたってのはマジなのか?」
「…事実だ、もしも勝利しているならばその報告の為の使い魔や伝令が来る筈だが一報も届いていない」
「…アスタルツを滅ぼせるだけの魔物共がいて更には古竜までいるだぁ?もうあれらは国土のねえ一国みてえなもんじゃねえか」
バルセドがため息を吐きながら背もたれに思い切り寄り掛かる、その状態のまま更に言葉を続けた。
「こんだけの事をやらかしてんだ、奴等はまだ手を隠し持ってるだろうよ、うちの黒騎団を潰したのはそっちが片付けたらしいがな」
「…とりあえずは現状分かっている戦力をどうするかを考えよう」
視線を向けられたウェルク王がそう提案するとレイルに視線を向けた。
「レイルよ、件の古竜と直接戦ったのはお主だけだ、率直に聞くがお主なら古竜に勝てるか?」
ウェルク王の問いにレイルは少し思案して答えた。
「確実に勝つならばもう一人、セラが共にならば勝てるかと思います」
「へえ?」
レイルの答えにバルセドが疑問の声を上げるとそのままレイルに声を掛けた。
「お前さん古竜と戦うのは初めてじゃねえんだろ?しかもその時も今回も一人で戦ったらしいじゃねえか」
「…それがなんでしょうか?」
「いやなに、後々の事を考えるならよ…」
バルセドはそう言って区切ると値踏みする様な視線を向けながら紡いだ。
「お前さん一人で古竜を倒せねえのかって聞いてんのさ」
無茶振り皇帝




