16:戦いの後
「レイル!」
レイルの姿を確認したセラが急いで駆け寄る、その場で手当てを行おうとするセラをレイルは手で制した。
「今は一刻も早くこの山を抜けよう、クロムバイトを恐れて逃げた魔物達がいつ戻ってくるか分からない…」
「…ん、なら馬車の中で」
「キリム殿、すぐに出発できますか?」
「勿論だ、今日中に山を抜けてみせるとも」
キリムに勧められて馬車の中に入ると馬車が動き振動が少しだけ伝わってくる、馬車は内部の空間を拡張させる魔術と振動を軽減させる魔術が付与されているらしく思っていた以上の揺れはなかった。
「レイル、上脱いで」
「あぁ…イデアル王子、マイラ王女、少しだけ失礼します」
レイルはセラに促されるまま上半身の防具と服を脱いで見せる、体には幾つかの内出血した痕や打撲痕といった傷が残っていたが“竜血魔纏”による再生によって大きな傷は治っていた。
レイルの残った傷にセラがポーションを浸した布を当てたり水の魔力で傷を冷やしていく、処置を終えて服を着直したレイルは徐に立ち上がって馬車の上に登ろうとしていた。
「レイル、まだ休んでた方が…」
「襲撃を察知するくらいなら大丈夫だ、とりあえずは山を抜けるまで油断は出来ない」
「…分かった、でも戦うのは私がする、そこだけは譲らない」
「あぁ、任せる」
話し終えたレイルとセラは馬車の上に登って警戒を再開する、幸いな事にそれ以降の魔物の襲撃はなく日が傾いて沈みかける直前にレイル達は山を下りて宿場町まで着く事が出来た。
―――――
宿場町に入って馬車から降りたレイルの体が揺らぐ、慌ててセラが支えるがレイルの顔には色濃い疲労が浮かんでいた。
無理もないと言える、丸一日警戒の為に感覚を強化し続けた上にクロムバイトとの戦いがあった、如何にレイルが竜の血によってその戦いで受けた傷などは治っても消耗や精神的な負荷がなくなる訳ではない。
なんとか気を取り直したレイルは全員で冒険者ギルドに向かって奥の一室を借りる、レイルはその部屋のベッドに寝かされた。
「レイルは休んでて」
「だがまだやる事が…」
「後は私がする、私も黄金級冒険者だから問題ないからレイルは休んで」
「…すまない、任せた」
譲る気はないという態度の裏に自分の事を案じてくれている事を察したレイルはそう言い残して瞼を閉じた。
緊張の糸が切れた事であっという間に眠りについたレイルの頭に優しく手を添えたセラは起こさない様にゆっくりと手を話して部屋を出る。
ギルドにアスタルツの現状の報告するとにわかにギルドは大忙しとなった、王都への連絡は使い魔の中でも最速のものが使われ今後の対応などと言ったものを検討してる内に夜は更けていった。
夜が明けるとウェルク王の依頼を受けて文字通り飛んできたフラウがギルドを訪れる。
「レイルはどうしたの?」
「まだ起きません…」
「…古竜、それも全盛期の存在と戦ったなら仕方ないわね」
その後フラウによって王国軍がこちらに向かって来ている事が報告される、到着次第町の住人の避難や侵攻に対する防備が築かれる事になりイデアル達はフラウやセラと共に王都に向かう事になった。
レイルはフラウ達によって王都に運ばれている間も目覚める事はなく目を覚ましたのは王都に着き王国軍が宿場町に着く頃だった…。




