6:番人
中ボス戦です、長くなったので分けました(^^;
『天竜の封窟』は5層の地下へと降りていく形になっている。
それ以降は誰も降りたがらない、潜った者が1人として帰ってこないという事と今レイルの目の前にいる5層の下への道を塞ぐものが理由だろう。
一際広く天井が高い部屋に佇むそれは見た目は巨大な鹿だがその体は黒一色で禍々しく枝分かれした角は血の様に赤い。
なによりも爛々と輝く目は視線だけで焼き焦がさんばかりにレイルを睨みつけてくる。
5層の番人、鹿の姿をした災厄『フルフル』
この魔物がここに潜った多くの冒険者を退けてきたからだ。
「クオオオオオッ!!」
フルフルが雄叫びを挙げて突進してくる、突き出された角を剣で受け止める。
岩がぶつかったかの様な衝撃に襲われ、地面を削りながら押し込まれていく。
「くっ…らぁっ!!」
身体強化をして尚押し込まれるが勢いが弱まった瞬間前蹴りを出してフルフルを蹴り飛ばす、魔力を集中させて蹴り飛ばしたがフルフルは首を数度振って再びこちらを睨みつけてくる。
前脚を上げるとレイルに向けて振り下ろしてくる、後ろに跳んで避けると地面が蜘蛛の巣状に割れて礫が飛び散る。
「ふっ!!」
飛来する礫を弾き、前脚を振り下ろした態勢のフルフルに『疾爪』を放つ、フルフルの顔に斬撃が直撃してのけ反り、生まれた隙をついて『崩牙』を上段から放つ。
「クォォォッ!!!!」
フルフルは即座に首をひねって迫る剣に角を突き出すと剣と角がぶつかり、鍔競り合うが拮抗はすぐに崩れて剣が角に喰い込み、半ばから砕いた。
「クオオオオオッ!?」
角を砕かれて叫ぶフルフルに返す刀で斬り込むがその寸前に宙を蹴って上へと逃げられた。
(仕留め損ねた…!)
思わず心の中で悪態をつく、情報通りならフルフルの恐ろしさはここからなのだ、だからその前に倒しておきたかった。
宙を駆け回るフルフルの角に魔力が集まっていく、それは空気の弾ける音と火花を伴っていき…。
次の瞬間、雷が解き放たれ槍の様に撃ち出された。
「くっ!?」
迸る雷を転がる様に避けて走る、後ろの壁を穿った威力に戦慄するが気を取り直して構える。
(本来は雷の雨を落とすそうだが…)
おそらく片角を砕いた事で本来の威力を出せないのだろう、今の雷なら避ける事は難しくない。
問題は宙を駆け回る相手をどうやって倒すかだ。
(『疾爪』は威力が足らない、『崩牙』は相手に近づく必要がある、あの高さじゃ身体強化を全開にしても届かない…?)
思考する中で気付く、そもそもフルフルはどうやって宙を駆けているのか、それに気付いた瞬間フルフルが宙を蹴る所を観察する。
(脚を出した瞬間に魔力を放出している、放出の反動を利用して宙を蹴っているのか!)
それに気付いた瞬間、背筋に悪寒が走る。
ついさっきまでフルフルは雷を撃ち出してくるだけだった、だが今のフルフルは全身を雷に包まれながらこちらに向けて態勢を整えている。
直感に従って全魔力を足に集中させて跳ぶのとフルフルが落雷の如く落下してくるのは同時だった。
轟音と閃光が辺りを覆い尽くした…。
注:基本的にドラゴンもフルフルもソロで挑むものではありません、主人公は少数派です(^_^;)




