3:残されたもの
砂糖が足らん
特使の件を話し終えた夜。
レイルは一人中庭に出ると永劫争剣を引き抜く、月光に照らされた黒い刀身を少しだけ眺めると構える。
もはや呼吸の様に行える魔力操作を使ってダインスレイヴに魔力を注いでいく、魔力を注がれた黒い刀身から僅かに魔力が溢れた状態を維持して剣を振るう。
中庭で黒刃の閃きが黒く輝く、縦横無尽に振るわれるそれは見る者がいれば一種の剣舞の様に映るであろう。
最後の一振りと共に中庭の木々が揺れる、魔力操作を解くと同時に構えを解くと息を吐いてダインスレイヴを見つめる。
「やっぱり力は使えないか…」
剣としては申し分なく使えるがゼルシドが振るっていた時の様な圧は感じられない、今のこれは頑丈な剣という以外の使い道はないだろう。
そしてなによりも…。
(あの最後の技は…)
ゼルシドが最後に放った奥義をレイルは脳裏に焼きつけていた、だがあれからどれだけ記憶をなぞって剣を振るってもあの技を再現する事は出来なかった。
少しでも近付ければとダインスレイヴを振るってはみたが近付こうとすればするほどにあの時見た技への遠さが身に染みて分かってしまう。
「本当に、遠いな…」
師が残した最後の修行、それはレイルが剣士として初めてぶつかり、あまりにも高い壁だった…。
―――――
「レイル」
声を掛けられ振り向くとセラが物陰から姿を現す、一段落がつくまで待っていてくれたのだと分かったレイルは歩く速度を早めてセラの傍まで行く。
「待ってくれてありがとな」
「大丈夫、待つのは嫌いじゃないから」
一言二言交わしながら部屋へと戻る、と言っても想いを交わして以降はセラはレイルと一緒にいる様になりレイルの部屋は今はセラと共同で浸かっている状態だった。
「やっぱり上手くいってない?」
「あぁ...」
あれからレイルはゼルシドが辿り着いた境地を垣間見るために出来る事をしていた、鍛練の他にフラウやライブスに当時のゼルシドの事を聞いたり王城に保管されている武術書などを閲覧するなど手を尽くしたが手がかりにはならなかった。
(どうすれば…)
壁につき当たったレイルが思考の海に潜りかけるとふわりと背中から手が回される、セラが銀髪をたなびかせてレイルを抱き締めていた。
「落ち着いて…」
「え…?」
「眼がまた金色になってる」
言われて近くにある鏡を見るとレイルの瞳は金色の竜の瞳となっていた、どうやら思案し過ぎて無意識に昂っていたのだと気付くが一度そうなると鋭敏となった感覚がセラを捉えてしまう。
セラを前へと引き寄せると腰を掴んで胸を鷲掴みにする、くぐもった吐息がレイルの耳を通して昂った本能を刺激した。
竜の血を制御した、と言ってもレイルはまだ二十の盛んな年頃であり少しでも昂って本能が強まれば抑えるのは辛い事だった。
「…しても良いか?」
「…ん」
セラが口元を押さえながら頷くと手を掴まれて唇を奪われる、ベッドの上に押し倒されたセラは顔を赤らめながらも獣の様に息を荒げるレイルを受け入れる。
この後シャルから渡された避妊薬が減ったのは言うまでもない…。
竜の血をバイ◯グラ扱いしてるのは誰だ




