1:討伐に向けて
4章始まります
戦いから少しして…。
レイルは王国の兵士達と模擬戦を行っていた、自らの鍛練とゾルガ将軍からの頼みもあって一対多の模擬戦をしていたが。
「せやあぁ―――――っ!」
レイルは前から斬り掛かる兵士の木剣の腹を叩いて逸らすと足払いを掛けて転がす、その直後に背後から繰り出された木槍を脇を通す様に避けて木槍を掴んで捻ると同時に背後の兵士に後ろ蹴りを放って蹴り飛ばしながら木槍を奪う。
飛んできた矢を魔力を集中させた眼で見切りながら手にした木槍で弾き落とすと左右から同時に木剣が振るわれる。
脚を一瞬で強化して跳躍する事で避けると右にいた兵士の腹を槍で突きながら着地すると即座に手離して再び斬り掛かってきた木剣を持った手を掴み止めると懐に滑り込む様に潜り込んで背負い投げの要領で床に叩きつける。
続けて三人同時にレイルに襲い掛かるが足下の木剣を蹴り上げて掴むと三方向から振り下ろされた木剣を受け止めると身体強化と同時に体を回転させて薙ぎ払う。
再び放たれた矢を薄皮一枚で避けると矢が放たれた方向に向けて木剣を投げるとくぐもった声と共に地面に人が倒れる音が響いた。
「そこまで」
練兵場にゾルガ将軍の声が響き渡る、レイルの周囲には呻きながら起き上がろうとする兵士達と訓練用の武器が散乱していた。
「素手の状態から八人がかりで相手にならぬか、これは貴殿が強すぎるのか我が兵達の鍛練が足らぬと考えるべきか…」
「普通に考えて前者でしょう」
ゾルガの呟きにエリファスが答えてレイルがそれを首肯する、今しがたレイルが手合わせをした兵士達は冒険者になれば青銅級でも上位になれるぐらいの力量はある。
「強ぇ…」
「後ろからの攻撃になんであんな正確な対処が…」
「とゆうか剣士どころか人間の動きかあれは?」
起き上がった兵士達が次々と口にしながらレイルを見る姿にゾルガはため息をつきエリファスは苦笑いを浮かべる、あれだけやられながら起き上がって口を開けるのはレイルが八人を相手取って手加減していたという事に他ならない。
(男子三日逢わざれば刮目せよと言うがまさしくだな)
「ゾルガ将軍、エリファス副将、レイル様」
レイルへの感心を強めながらも兵士達を叱咤しようとしたところでウェルク王の侍従が現れて三人に声を掛ける。
「陛下からお三方に謁見の間に来る様にとのお達しです、教団の事に関してお話があると」
三人は顔を見合わせると頷いて謁見の間へと向かった。
―――――
「全員集まった様ですので始めさせて頂きます」
謁見の間には既に全員が揃っておりグリモア宰相が音頭を取って始める。
話されたのはウクブ・カキシュや奇跡との戦いの事後処理などと言ったのが報告され、それらに対してはあらかじめ決めてあったのかそのまま承認された。
「続いての報告ですがエルメディアから伝書が届きました」
「エルメディアから?」
グリモアはウェルク王に顔を向けると一礼する、ウェルク王はそれを確認すると自身から経緯を話した。
「知っての通り我々はバニス教団の存在を認めた、それはエルメディア及びアスタルツでも同様だ」
そこでだ、と前置きをしてウェルク王は一同を見渡すと届けられた伝書の内容を語る。
「そしてエルメディアからこう申し出があった、もはや隠し立てする必要がない以上迅速にバニス教団を討伐する為にも直接話し合いたいとな」
次回また面倒くさい話になります




