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会津遊一 ホラー短編集

健太君

作者: 会津遊一
掲載日:2009/08/05

私は子供の頃、人を殺した事がある。

それは野原で追いかけっこをしていた時の事。

振り回していた棒で偶然にも友達を殴ってしまったのだ。

慌てて駆け寄るも、健太君は動かなくなっていた。

怖くなった私は、キョロキョロと辺りを見渡した。

そして、誰にも見られていない事を確認してから、1人で逃げ帰ったのだった。


子供心に、もう駄目だ。

誰かに殺されると思った私は、帰宅後も布団の中で震えていた。

だが次の日になっても、叱られることは無かった。

その次の日も、そのまた次の日になっても、何か言われることは無かった。


数日後、いい加減学校に行けと親に怒られた私は渋々と登校した。

すると、健太君の席に花瓶が置いてあるのが目に入ったのだ。

別の友達に、

 「どうしたの?」

と聞くと、

 「事故で亡くなったんだ」

と教えてくれた。

でも、私には分からなかった。

今でも、この両手には健太君を叩いた感触が生々しく残っている。

なのに事故で死んだと聞かされても、私にはピンと来なかったのだ。

呆然と立ちつくしている私を余所に、学校内に何時もと同じチャイムの音が響いたのである。

それはもう、10年以上前の話。

今では夢でうなされる事も無くなっていた。


私は出社前に髭を剃っていた。

すると、何かを吸い込んだらしく、ゴホゴホと咳き込んでしまった。

 「貴方、大丈夫? 顔を真っ赤にさせて」

背後から心配した妻に話しかけられた。

 「ああ、平気だよ」

 「カゼだったら気をつけてよね、もうすぐあの子の誕生日なんだから」

 「分かっているさ」

私がひげ剃りを洗面台に戻すと、何かに気が付いた妻が一言呟いた。

 「あら、でも貴方、首の廻りだけが、やけに赤いわよ」


始めは、直ぐに消えるだろうと気にしていなかった。

だが、その赤は消えるどころか少しずつ濃くなり、徐々に何かの形に成っていったのだ。

最近では、ワイシャツのボタンを全部とめても、首元からはみ出してしまう程大きくなっていた。

全体的に広がっていくので隠しようが無い。

会社の人には虫に刺されたと説明した。


そして最後には赤いシミが、小さな子供の手が首を絞めているようにしか見えなくなっていた。

妻には何度も病院に行くように言われたが、それは無駄だと私には解っていた。

これは健太君の呪いなのだ。

幸せの絶頂にいる私をどん底に落とすため、こうやって嫌がらせをして楽しみ、そして殺すつもりなのだ。

自分のしでかした事が原因とはいえ、それではあまりに惨い仕打ちではないか。

罰を下すのなら、もっと早めにやって欲しかった。


次の日、私は会社を休んで健太君を殺した野原にやってきていた。

そして大地に頭を付けて、大声で叫んだのだ。

 「健太君、ごめんよ、許してくれ! 本当は、ずっと悪いと思っていたんだ! でも、怖くて言い出せなかったんだよ! 今からでも警察に出頭するよ! だから許しておくれよ!」

私は涙を流し、何度も謝った。

それこそ喉が張り裂けようとも、謝り続けるつもりであった。

だが、私の心からの謝罪が通じたのか、喉の辺りが軽くなったのだ。

慌てて胸元を覗いてみると、本当に例の赤いシミが消えていた。

 「健太君、ありがとう」

私はもう一度、頭を下げた。


帰宅すると、妻が慌てて出かける準備をしていた。

 「何か合ったのか?」

 「それが子供の首の辺りが、さっき急に真っ赤になったのよ。だから、ちょっと病院に行こうと思うんだけど。って、貴方、どうしたの? 顔が急に真っ青になっているわよ」

 

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