やはり進化しすぎな件
「さて、じゃあ実験していこうか」
「お~」
<同意、お~>
アリスの気持ちを聞きて数刻後、現在俺は訓練場に来ている。
新しくなった{時空計}の力を確認するためだ。
ん?アリスから深淵の話を訊かなかったのかって?そりゃ、訊いたよ。
でも、誓約で何も喋れないらしいし、神格になった影響かそこら辺の記憶が混濁してるらしい。
アリスが元王女だったくらいしか話は聞けなかったぜ。
序でにレンとアリスの紹介も済ませておいた。
で、{時空計}の変化だが、こんな感じだ。
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{夢幻時空 クロノ・ドリーム}
時空天神が仕事の休憩時間で作り出した
懐中時計型時空干渉系スキル補助装備。
それが神格の覚醒に伴い進化を果たした
装備。装備者に適応し、自身の思うがま
まにできる空間の作成や認識する時空に
属するものを自由に弄ることが可能にな
り、更にその行動をするときに必要な魔
力が抑えられる。
装備能力 夢幻時空 時空翻弄 正確無比
共存適応 破壊不能 召喚 顕現
装備状態 懐中時計・人型 神格覚醒
<アリス・スートランド>
連携S ⁅次元操作⁆
製作者 時空天神 モノ・クロノス
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レンの時と同様に結構強化されている気がする。
今気づいたけど、{解析計}は神格覚醒で見た目に変化がなかったのに対して、{時空計}はかなりしっかり変化してるよな。
理由は何だろ?やっぱ神格の成り方かねぇ?……分からないから良いや。
あと、ユナさん達が今はいないので、アリスには人間体になってもらっている。
「レン、軽くで良いから能力の解説を頼む」
<了解、夢幻時空はアリスさんの『夢幻』の権能の力を受け継いだものです、《夢見る不思議の国》もそのまま使えると思ってください、多少制限は付くようですが>
え?制限にはよるが、クソ強くない?ユナさん達以下なら使えば一方的に勝てるような状況に引き込めるってことだろ?凄いなぁ(小並感)
<継続、時空翻弄は時間操作の進化系です。時間だけでなく空間・次元にも干渉可能に、その上影響力も強化されています。マスターのスキルが使えなくなってもアリスさんがいれば転移でも何でも出来るってことです>
<追加、アリスさんが時空翻弄を使用する場合には魔力が消費されません>
そういう言い方をするってことは、スキル封印系の技とかってあるのか。
因みにこの世界で、時間は世界の内に存在するものに平等にかかる経過・加速・遅滞・停止の理、転じてその理で認識できる変化を指す。
空間は世界に物質が存在する為の保持・保存の理、転じてその理が影響する範囲を指す。
次元は世界に非物質が存在する為の保持・保存の理、転じて普通認識・知覚することが出来ないが空間に重なるように存在するその理が影響する範囲を指す。
これらは、一般的には知られていない。
あと追加情報何気にヤバくない?アリスとの意思疎通が完璧なら実質無限に操作可能ってことだろ?
<継続、正確無比は時空干渉補助と精度超上昇を合わせ強化したものです。効果は単純に時空系統の操作を行う時に補正・強化がされるのと、その行動に必要な魔力の消費を軽減します>
地味だけど、こういうのって結構大事だよな。
<継続、共存適応は私の進化適応とほぼ同じもの、破壊不能も同様です>
うん、これは予想通り。
<継続、召喚は"ある一つの物"を除いて代価を払い、あの空間でアリスさんが召喚できた生物を呼び出せます>
ある一つの物?まあ後で聞こうか。
<継続、顕現は今アリスさんがしていることです。分体を出すスキルです、今のように分体に意識を移すことも可能、逆に分体を出した状態で意識だけど本体に戻すことも可能です……私も欲しい>
あ、そういうことも出来るのね、これ色々と検証できそうだな。
うん、大幅強化だね!白少女との戦いもこれ使いこなせてたらもっと楽だったかも。
いや、過ぎたことは仕方ないか。
「夢幻時空は最後にして、他から検証していくんだが、アリス行ける?」
「問題無しですよ!お兄さん」
元気ですねぇ……俺も張り切りますか。
今やるのは、主に三つ、他は今度の暇な時でも問題無いからな。
1・召喚で出せるものの確認、2・時空翻弄の操作性の確認、3・夢幻時空の制限と使い心地の確認だ。
早速1から始めよう。
「レン、召喚で代価無しに出せる物って何なんだ?」
<解答、アリスさんの武装{夢幻銃 ヒュプノス}です>
「成程、そうきたか。んじゃ《召喚・夢幻銃》」
発動のキーワードっぽいのを何となく唱えてみると、見たことがあるが少しだけ違う散弾銃が目の前に現れた。
金色がベースで水色の装飾が施されている上に紫色のラインが走る散弾銃。
紫のラインはあの空間の時には無かったな、神格化の影響だろうな。
そして意外にも重たい、ドリームとアリス、こんなの持ってよくあの速度で動けるな。
「取り敢えず引き金を引いてみる[バンッ!!]うぐぅ、反動強ッ!?」
引き金を引くと紫色の弾丸が勢いよく飛んでいく、これは魔力弾か。
「何やってるんですか、お兄さん」
「アリスよくこんなの使えるな。扱いにくすぎるんだが?」
「そんなこと無いですよ。重くないですし、反動も無いですし最高の相棒です」
「今の俺見てた?アリスの言ったことと真逆なのだが?」
引き金を引いた瞬間、しっかり持っていたにも関わらず後ろに体が少し動いたんだぜ?幾ら俺が軽かろうとアレは可笑しいだろ、反動が強すぎる。
しかし、アリスはそんなこと無いというのだが、本当か?
ニヤニヤしているアリスへと夢幻銃を手渡す、するとアリスは、
「ほら、全然重くないじゃないですか」
あろうことか、ブンブン振り回し始めた。
体感じゃ、10~15㎏はあると思うんだがなぁ?
実はアリスが凄くムキムキとか?いや、あの細腕を見る限りそんなことは無さそうだ、あの細腕にそれだけの力があったら俺は流石に寝込むぞ、俺の自尊心はボロボロだ!!
「[バンッ!!]ほら反動だって無い」
「え、えぇ~?レン、何かないのか?」
<解答、マスターの{真理を壊す灰塵剣}と同じです。主と認めない者には簡単には扱えないようです>
「ああ、そゆこと。アレはアリス専用武器ってことね」
<追加、実際の処マスターはアリスさんの主ですので、時間は掛かりそうですがその内使えるようになると考えられます。それと『武器主』で扱う分には問題無いかと>
そうか、スキルで操ればっ―――待てよ?アレ?もしかして……。
「《武器主・操作支配》……やっぱりか」
「どうかしましたか?お兄さっ―――うわぁっ!!」
「よっ、これは便利かもしれないな」
突如、俺へと引き寄せられるように飛んできたアリスを、"まるでどう来るか分かっているかのように動き"抱きしめてキャッチする。
アリス滅茶苦茶軽いな、大丈夫なのかコレ?いや、もう人間じゃないし別にいいのか。
いやぁ~棚から牡丹餅とはこのこと、戦略の幅が広がりそうだ。
「ん~!!いつまで抱きしめてるんですか!!」
「あ、済まん」
「フンッ、あんまり女の子を突然抱きしめるとかしない方が良いですよ、全くお兄さんは……凄く安心したなぁ」
アリスに注意され、抱きしめていた腕を離す。
俺の拘束から逃れたアリスは、少し距離ある位置に移動してしまった。
う~む、不用心だったか、今後は気を付けなければ。
で、そんなことよりだ。
「『武器主』で操作できるものにアリスも対象になってた。まあそれでさっき引き寄せたんだけど」
「え?私も対象――いや当然ですか、今の私は装備ですから、武器と判定されても可笑しくないですね」
「これ、かなり使えると思うんだが、アリスはどう思う?」
アリスには俺のスキルについても全て教えてある。
『武器主』と言いながら、コレ俺の装身具とかも動かせたするようになったんだよな、練習したら。
だが{白星}は動かせない、多分俺の意識の問題なのだろう。
俺の持つ装身具は、能力的に俺自身が無意識に装備というより武器と認識しているから動かせるのだと思う。
でも{白星}には攻撃に転用できる能力や戦闘に直接干渉する能力が無いから装備と思っているんだろう、だから操作できない。
スキルは、この世界の住民や俺が思っているより、使用者の意識によって出来ること範囲が大きく変わるってリュミス様が言っていた。
意識で変わるなら自分自身を武器と認識すれば、操作できるのかね?でもそれは当分試せそうにない、俺には、まだそこまで認識を広げることは出来ないからな。
と、思考は一旦切り上げて、検証に戻ろう。
「これなら私に負荷は幾らか掛かりますが、私の出せる最高速以上で移動できそうですね。他には私とお兄さんの意思疎通が完全なら奇襲にも使えそうです。けど、心配もあります」
「心配か、聞いても?」
此処は聞いて置かないとな!
「勿論です。先ず、意思疎通が出来ていない場合、お兄さんが私の行動を阻害する可能性です。私が自立行動をしている前提ですが、例えば敵からの二体の敵A・Bがいたとします」
「私がAを攻撃している最中にBが私に攻撃を仕掛けて来た時に、お兄さんがBの攻撃を回避させる為に私を操作したとすると、Bの攻撃を回避できてもAへの攻撃が失敗、悪い方に考えればその攻撃の被害が仲間に行く可能性もあります」
「更には私がBの攻撃に気付いていて既に対策をしていたとすれば、お兄さんの行動は全てが無駄、寧ろ不利益を生み出してしまうことも考えられます。私にはお兄さんを操作できないので逆の状況で同じことはあり得ません。でも、これはレンさんが居るので起こる確率が限りなく低そうですが」
確かにありそうではあるが、アリスの言う通りレンが居るし、これはあまり気にしなくて良さそうだな。
「次に、私がお兄さんの行動を阻害する可能性です。お兄さんが私を操作している間は、当然その分のお兄さんの思考を割くってことです。そのせいで、お兄さんの行動が遅れてしまうかもしれません」
「ん~ありそうではあるんだが、それもレンが予測しそうだな。レンが予測できなそうな時は多分、別れて行動しないだろうし」
「はい、そうですね。というかさっきの二つはそれっぽく考えただけで特に問題にはならないと思います」
「え?じゃあ、長い説明は特に意味が無いってことか?」
「はい」
そ、そうなんだ、何故そんなことを?
当然考えがあってのことなんだろうけど、俺が考えるに最後のことの強調の為ってとこかな。
正直言って、心配事は特になさそうだけどな?思いつく問題は、レンと俺で対応可能な範囲内のことばかりだし。
「私が、一番心配しているのは……」
「しているのは?」
「お兄さんのスキルに私は抗えないので、お兄さんにあんなことやそんなことされてしまうかもしれないということです」
……。
…………。
………………。
なぁるほどぉ~、確かにそういう使い方も出来るな!
「ってする訳ないだろが!!!」
「え~そんなこと言って~このアリスちゃんの姿態を味わいたいのではぁ~?」
すっっっごいウザい~、リュミス様とユナさんを足して二で割ったような内容と弄り方だ。
この感じ、ドリームそっくりでもあるな。
はぁ~頭痛くなりそうだわ。
「《召喚・玉兎》,いけっ!白玉ァ!」
[ムキュアァッ!?]
「――ムベッ!?いてて、お兄さん、急に白玉ちゃんを投げつけてこないでください。ごめんね白玉ちゃん、痛かったですよね」
[キュキュゥ]
したり顔で近付いてくるアリスの顔面に{夢幻時空}の召喚で魔力を代価に呼び出した白玉を投げつける。
不満が聞こえてくる気がするが無視する。
知るか!あ~ゆうのは、昼間に乗る気は無いんだよ。
「召喚できるのは、確かにあの空間に居た生物、然もボス格の奴だけだな」
ビジュアルの問題もあるけど、あまり使い処は無さそうだ。
囮とか肉壁くらいにしか使わなそう、あと癒し枠で白玉呼ぶのくらいか。
そろそろ2に移ろう。
「アリス、時間を遅くしてくれるか?」
「分かりました。《時間遅滞》……う~ん今一ですね」
「ん?そうか、ほいっしっかり遅れてるじゃないか」
アリスに時空翻弄で時間を遅くするように頼み、それはしっかり発動した。
その証拠に、収納から取り出した剣を投げると、ゆっくり少しずつ床へと落ちていく。
だが何かアリスは納得していないようだ。
「いえ、効果範囲がこの部屋だけですし、もっと遅くも出来たんですよね」
「いや無理だろ、此処はアリスの支配する空間じゃないだろ?」
「……成程、確かにそうですね」
アリスは自分の想像通りに時間を操作できないことに納得していなかったようだ。
俺が思うに、深淵試練でのアリスの時間操作とかは、今の操作とはやり方が根本から違うんだろう。
あそこではアリス自身がそれを自由に操作する権限があり、それを行使して干渉していた、逆に今は時空翻弄という能力として制限された状態で干渉している。
時間という理に対して、上位から干渉しているか、下位から干渉しているかの差が効果範囲や効力の上下に影響しているんじゃないかと思う。
「アリス、一旦これ解除してくれ」
「はい、解除しましたよお兄さん」
「早いな、じゃ俺もやってみるか《時間減速》」
俺が使っても特に問題無いな、魔力消費も大きいが前よりも減ってる。
次は転移を試そうか。
「アリス、転移してくれるか?一mくらい前で良いから」
「了解です。っと問題ありませんね、あそこと同じ感覚で出来ます」
「因みにどんなイメージでやってるか聞いてもいい?」
俺は⁅次元操作⁆で空間に干渉して転移している。
⁅次元操作⁆という名だが、操作しているのは理では無く、範囲の方だと最近知った。
次元と空間は別物だが、密接な関係にある為、次元操作でも少しだけなら干渉出来る。
次元は空間に重なるように存在している、これが前提というかこの世界ではそういうものだ。
その次元を操作して無理やり空間に次元に入る穴のようなものを作る、尚次元は知覚出来ないので俺の『記憶庫』のようなスキルや魔道具でなければ、違和感すら感じれない。
あけた穴に入り、移動したい箇所にも穴を開けておくと、対応した空間の場所へと出る、こんな感じの方法で俺は転移している、この一連の作業を高速でやるといつもの感じになるのだ。
難しいのは次元には物質が存在できない、だから次元に入る時に二つ穴を開けて無いと元の場所に弾き出されるところ。
あとは、空間にかかる保存の理が開けた次元の穴を塞ごうとするので転移する間は、ずっとスキルで穴をあけてなきゃいけないので、転移の消費魔力は多いのだ。
でも、初めて試して雪山に転移した時は、転移自体は成功していたんだよな、意識は無いのに。
俺は、今の俺がやってる方法以外で転移したとか、他からの干渉があったと考えている。
まあそこまで重要視はしていない、今アリスに聞いているのだって、今後はアリスの方法を使った方が魔力効率が良いかもしれないからだしな。
「自分の周囲の空間と転移したい場所の空間そのものを入れ替えてる感じですね。う~んと、完成したジグソーパズルで同じ形のピースを入れ替えてるみたいな?」
「あ~おっけ、そういう感じね」
俺のより滅茶苦茶やり易そうなんだが?今後はこっち使おう。
よし、知りたいことは分かったし最後の3に移ろう。
先ず、アリスに質問しようか。
「そもそも、『夢幻』の権能ってそもそもどんな力だったんだ?」
「『夢幻』は夢や想像を現実に複写・反映させる権能でした」
想像の反映か……成程、道理であの出鱈目な領域を作れるわけだ。
でも、元々多少は俺の《死》みたいに制限はあるだろうし、絶対というわけでも無さそうだ。
強力なのは変わらないだろうけどな。
「レン、制限についての説明を頼む」
<了解、制限は五つです。一つ、夢幻時空で作り出した物体は使用終了と同時に消える。二つ、夢幻時空での現実干渉力はマスターの精神力に依存する。三つ、夢幻時空の一度の最大使用時間は一時間。四つ、再使用のインターバルは使用時間とマスターの魔力に依存する>
どれも制限と態々言う訳だから、元々四つとも無かったのか、で最後は?
<そして、五つ目は、夢幻時空の使用には一度の戦闘につき、一度の粘膜接触が必要となる。よって夢幻時空はマスターとアリスさん二人揃っていないと使用できない>
「へぇ~なるほ、どぉ~?」
何か間に変なのなかった?ねんまくせっしょく…………ねんまく、接触…粘膜接触!?
「それってさぁ、キスってこと?」
<別解、又は●●●でも可です>
「…………レン、何時からそんな……」
俺は何処で教育を間違えた?
これは、軌道修正が確実に必要だな、でアリスはどうなってる?
「ジ~~~」
ほらぁ~って顔でこっちを見てくるな!!
大体それでもよくてもする訳ねぇだろ、だって使うの戦闘以外にないし。
厄介な制限がついたもんだぜ。
じゃあ、気を引き締めて使うか。
「来い、アリス」
「はぁ~い、で、する―――んんっ!?」
「よしっと」
こっちに近付いて来たアリスの腕をグッと引っ張り、引き寄せて唇を奪う。
何気に今朝のはやられた感が強かったので、軽口を叩かれる前に終わらせる。
ふむ、満足です。
「お、おにーしゃん、な、なにを」
「え?必要だからだけど?」
顔を真っ赤にして口をパクパクしているアリスに何でもないように言葉を返す。
されるのは慣れてないのな。
「い、やきゅうに、ダメ、ぁぅ~」
「て、大丈夫かアリス!?」
目を回して崩れる様に倒れたアリスを受け止める。
これは、やり過ぎたか?
「うにゅ~」
「熱にうなされてるみたいな感じだな」
<情報、突然の事態に疑似脳回路がショートしたかと推測されます。数時間で元に戻るかと>
「情報ありがと、レン」
そうか、アリスは受けが苦手か、一応覚えておこう。
収納から出した大きめの布を訓練場の床に敷いて、そこにアリスを寝かせる。
さて、気を取り直そうか。
「レン、この状態でも夢幻時空は使用できるか?」
<解答、発動条件を満たしているので使用可能です>
先にキスしてたら片方に意識が無くても離れてても使用できるのか、成程。
さっさと終わらせますかね。
「レン、記録頼むぞ」
<了解、マスターの御心のままに>
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