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アリスの家



「う~ん何処だ?いやマジで、製作者頭悪すぎだろ。何でこんな手間かかる羽目になってんだよ」


 クソ猫ギミックボス、もといチェシャ猫を倒した俺は今、キレながら黒い残骸を風魔法で吹き飛ばしていた。

 奴を倒して数秒後、俺が内部に取り残されたまま、この謎の三角錐は崩壊した。

 それ自体は別に転移で回避できたから問題無かった。

 問題なのは鍵が見つからない事、恐らくは崩壊した三角錐の下敷きになったと考えられる。

 なんせこの三角錐、全長三百mちょいあったからさぁ!もうかなりの量を除けた筈なのにまだまだある。

 苦労するとこ絶対ココじゃない。


「レン、再度鍵を探してくれ、結構量減らしたからいけないか?」


<索敵…………発見!後方一m、直下五十㎝の位置に存在します>


「おっけ、よし!漸くこの作業から抜け出せるぜ」


 三角錐の素材は探知系のスキル全てを阻害する力があったせいで、レンの索敵で鍵を探せないでいた。

 量減ったから効果が薄れたみたいだ!

 いや長かったぁ~。

 レンの情報通りに後ろへ下がり風魔法を発動させ、残骸を吹き飛ばす。


「あったぁ!持ち手が猫だし間違いない!」


 残骸の中にガラスのように透き通った持ち手が猫の鍵を見つけ、一気に近付き取りに行く。

 はぁ~やっとだぜぇ~。

 というかもう日が落ち始めてるんよね、夜になって大丈夫かな?

 微妙なとこか、よし休憩挟んで直ぐに『深淵鍵の巨大樹』……ではなく、アリスの家に向おう。

 あそこには必ず何かあるし、アリスがどうなってるか気になるからな。


「レン、一時間後に移動を再開する、時間になったら教えてくれ」


<了解、タイマー設定>




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「休憩終了!向かうとしますか。レン、一応アリスの家の場所表示しといてくれ」


<了解、展開完了>


 すっかり荒廃した都市を駆けて、アリスの家に向かう。

 まあ、都市は壊滅してるから障害物無いし、丸見えだし迷う訳ないが。

 …………そろそろ草原に出る、あの烏は出で来るかねぇ?


「………こ、来ねぇ……今は気にしない方向で行こう」


 ちょっと期待してたんだがな、今度こそ殺そうと思ったのに。

 なんて思いながらも来ないと安堵し、少しだけ警戒を緩める。


 数分後。

 視界の先にあるはアンティーク調の大きな家、外観には特に変化は無い。

 この空間において『深淵鍵の巨大樹』以上に重要だろう彼女に何か起きていないとは考えにくい、そのことから改めて気を引き締める。

 というか今思ったが『深淵鍵の巨大樹』はこの空間で神に等しい力を持ってるんだから、それ以上に厳重なプロテクトがあるアリスって一体何者だ?

 一度思考から追い出していた情報が合わさり疑問が生まれる。

 そして、あのアリスそっくりの女もだ、どんな関係性で何が目的で何故この空間に居るのか。

 生まれた疑問はねずみ算式に増えて行く。

 でも結局の処は、今情報が少なすぎて分からないんだよな、はぁ~モヤモヤする。

 ……そろそろ着くか。


「―――っと、到着」

 

 敷地内に入り、一度足を止め、敵の気配が無いか確認し玄関の前まで歩く。

 ん~先ずはそうだな。


「アリス!居るか!レイだけど!」


 ………………反応なしか。


「レン、内部の生体反応って確認できる?出来たら、表示頼む」


<了解…………反応発見、表示します>


「おっ、しっかり一つあるな。場所は……寝室か、仮眠でも……」


 いや、流石に都市から離れてるとしても俺の破壊行動の音が聞こえない筈はない、寝てるのは可笑しい。

 ……可笑しいよな?多分、何か起きてんな。

 さっさと直接見に行くか。

 ドアノブに手を掛け引いて玄関を開ける。

 内部は、昨日・今朝見た物と変わっていない、落ち着いた感じの一体感のある内装そのままだ。


「変化してな―――ッ!?アリスッ、じゃねぇなぁ!?」


 アリスの家に足を踏み入れた瞬間、背後で不快音が鳴り、それに反応して反射的に一気に中へ飛び入り、後ろを見る。

 そこには、右手に鋭利なナイフを持つアリスに服装から顔の細部までそっくりな少女がいた。


<報告、生体反応無し、アレは生物ではありません>


「だよな。目のハイライト無いし、気配を感じれなかった。なっ、そして敵対してるしっ!」


 レンの報告を聞きながら、目の前の少女を観察していると急加速してナイフで斬りかかってくる。

 それを右腕(黒白)で受け、その衝撃に驚く。


「ちっから強ぇ!てっ足っ、ぐっ重い!」


<追加、対象を解析の結果、対象は機械生命体と呼ぶ存在かと>


「機械生命体…成程、道理で嫌に重い訳だ」


 右腕で攻撃を受けた瞬間、少女は即座に蹴りを放ち、距離を取り構え直す。

 見た目はアリスだが、レンの報告の感じからして完全にアリスとは別物みたいだな。

 なら都合がいい、機械らしくスクラップになってもらうとしよう!


雷属性付与(エンチャントサンダー)、機械に特攻と言えば雷でしょ!」


 いや、水もありだな、けど今は雷しか使えないからいいや。

 さあ行くっ―――え?」


<緊急!マスター回避を!>


「流石にむっ、ギッ!?《死壊する過去(ディストル・プロ―シ)》!クソ痛ぇなぁ!」


 目の前の少女を殴ろうとした瞬間、足を引っ張られ転ぶ。

 後ろを確認すると、同じ服装で同じ顔、同じナイフを持つ少女が数十人は居た。

 その中の一人が俺を押さえ、他の数人が的確に腱をナイフで切り裂いてくる。

 次々に襲う激痛に耐えながら思考を巡らせる。


「《痛覚断絶(ペインカット)》ッ!!ごめんアリス《天籟の嵐渦(サイクロンストーム)》ッ!」


 集中する為に一時的に痛覚を捨て、周囲の被害を度外視にして超級風魔法をぶっ放す。

 あぁーー!やっぱ室内で放つのは馬鹿だったぁ!

 ていうか何でこの風でこの家崩れねぇんだよ!家壊すわごめんて意味でアリスに謝ったのに必要ねぇじゃん!

 右腕の指先を鉤爪のようにしながら武器主(ウェポンマスター)で操り、地面へとしがみ付き吹き荒れる風に抗う。


<報告、先程まで存在していた個体達の崩壊を確認。魔法を解いても大丈夫そうです>


「ありがとレン!解除、ふぅー……よし!調べよう、の前に《死壊する過去》」


 傷だらけの身体を治して、周囲を確認する。

 家具などは吹き飛び壊れているが、家自体にはそれほど変化は無い、如何やら唯の素材で出来ている訳では無い様だ。

 他にはバラバラになった少女達の身体落ちている、その一つ、腕らしき部分を拾い注意深く見る。


「硬い、そして重い。断面は……良く解らんが機械だということは解るな。何体も居たし、量産型?アリスそっくりな所を見ると、これらのモデルはアリスなのは確定。じゃあ誰が作った?外に居た人間モドキ・怪物共とは明らかに毛色が違うし……」


 人間モドキ・怪物共と同じ原理で造られているとしても格が違う、連携するし攻撃も何か的確だった。

 ………分かんねぇし寝室にさっさと言った方が良さそうだ。

 散らばる身体を踏まないようにしながら、寝室へと歩く。

 場所は覚えている、だって今朝まで居たしね。


「リビングからこっちの廊下に出て、突き当り右の部屋、此処」


<報告、先程の機械生命体の反応無し、内部にはアリス様一人かと>


「ん、じゃあ入るか、アリス~起きてる~?」


 迷いなく、寝室の扉を開けて、アリスへと声を掛けながら入る。

 アリスはベットの上に、毛布もかけず仰向けに寝ていた。

 変わったところや異常は特になく、稚い寝顔を晒している。

 しっかりと安否を確認しようとすると、


「―――ッ………テメェ……」


「んにゃ?あれぇ?」


 アリスの目が開かれた、そして、その瞳は紅に染まっていた。

 その瞳を見た瞬間、俺は一瞬で後ろへと飛び退いた。

 俺が離れたら、少女は体を起こし、俺を見てくる。


「おにーさん、何で生きてるのぉ?しっかり殺したと思ったのに」


「生憎、死んでも死なないもんでね」


「じゃあ、今度は確実に私が―――ん?」


 俺に話していた途中で少女は突然言葉を止め、虚空を見た。

 それを訝しんで見ていると、少女は急に口が三日月のように弧を描き、俺を見てくる。


「へぇ、おにーさんがか」


「何だ?何かあんのか?」


「いや何も、良いよ。じゃあおにーさん、Ⅴの最後の試練に行こうか」


 意味の分からないことを告げてくる少女。


「お前何言って―――ッ!?」


「《夢見る不思議の国ドリームワンダーランド》」


 俺が声を掛け終わる前に、少女は唱え、辺りが光に包まれた。



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