夢?
「んー片っ端から買い集めたけど……多いな」
学院の中間試験とエキシビションマッチから一週間。
特に用事の無かった日に都市中を回りながら買い物をした、のだが……。
リビングの机パンパンに積まれたボードゲーム他諸々、うん、買い過ぎ。
俺この世界に来てから金遣い荒くなってかもしれない、気を付けなければっ!!(使命感)
「オセロ、囲碁、チェス、将棋、チェッカー、バックギャモン、マンカラ、人生ゲーム、魔王すごろく、王国創記、トランプ、ウノ、ドミニア、etc.etc.……」
まあ、いいや、ユナさん達とかリュミス様とかエクレア様とかティアとかアルン達とかとやれば良いしね。
シンラとナユタも来れば良いんだけどな~如何せん何処に居るかわからんし。
「取り敢えず、極晶具に突っ込んで、明日整理しよう、今日もう遅いしな」
机上のゲーム達に触れて、仕舞う。
収納を終えたら、寝室へ行きコートを脱いでベットに入る。
毎度寝心地サイコォ~~―――ZZzzzzz………
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「あ、れ……?ど、こだ此処?」
何処だぁ?此処ォ?
…………いやマジで何処だ?
立っているのは真っ黒でそこに在るようで無い、今にでも落ちてしまいそうな漆黒の地面ような何か。
上を見れば、星空がちっぽけに見えるくらいの壮大な宇宙?銀河らしきものが広がっている。
俺は自室で寝た筈、つまりは此処は夢の中だ!
「だと考えると妙に意識がハッキリとした夢だな」
止まっていても仕方が無いので、適当に歩く。
何かあるわけでもなく、唯黒々とした地面と銀河があるだけだ。
そうしてぼーっと歩いていると、突然周囲に変化が訪れる。
空間がブレて俺の中心に囲むようにして六つの扉が出現した……どゆこと?
「何か描いてあるな、これは……」
各扉にはⅠ.Ⅱ.Ⅲ.Ⅳ.Ⅴ.Ⅵとローマ数字が描かれていた。
………選べってこと?だろうなぁ。
どうせ夢だし適当にいこう、一から六で選ぶなら丁度良いのあるし。
「ここで取り出したるは、サイコロォーーー!!!」
何か謎にテンション上がってるかも俺。
そのままハイテンションでサイコロを空中へとスパーキングッ!!!
ピュウゥーーーー コロコロコロ………コロンッ
空中から落ちてきたサイコロが転がり、止まる。
さーてどの目かな~……五だ、じゃあⅤの扉に入ろう。
目的の扉に近付き、何とはなしに調べてみる。
中世っぽい雰囲気の意匠が施され、俺の目の高さ丁度くらいにでかでかと「Ⅴ」と描かれた両開き戸の扉。
この空間には全く合っていない、不可思議な扉だ。
「入ってみるか」
考えても仕方ないので扉を押し開く、とそこには。
「コレ大丈夫か?」
開いた扉の先には虹のように様々な色の木が広がっていた……『壁のような感じ』で。
扉からちょこっとだけ顔を出して下を覗き込む。
視界の上半分に森、下半分に空が見える、普段とは逆で気持ち悪くなる。
もっとよく見ようとすると体が謎の力に引っ張られ扉から全身が出てしまう。
やっべぇ!?ってそっちに落ちんの!?
てっきり見える地面と平行、今の重力通りに落ちるかと思ったのだが、地面へと吸い寄せられるように落ちる。
「重力が変わったってことか?いや、そんなこと言ってる場合じゃない!?風精の気紛れッ!!」
急速に迫る地面、即死確定の速度で落ちている。
思考を切り替えて風魔法を発動する、下から吹き上げ るような風によりもう手がつきそうな高さで体が止まり、ゆっくりと地面へと降りる。
「あれ?扉無いんだけど?詰んでないか?俺……いや、夢だしなぁ……」
自分が落ちてきたであろう場所を見ると、そこには何もなかった。
扉のあった形跡すら全く無い、唯青々とした空が広がっているのみである。
「切り替えよう、これは夢なんだから……」
『夢』と言う度に嫌な想像が頭を過るが、気にしないようにする。
そんなこと無い、絶対、これは唯の明晰夢だ。
言葉通りに思考を切り替えて、辺りを見回す、さっき上?から見たときと同じで様々な色の木がズラッと生えており、結構深い森の中らしい。
「幻想的と言えば良いのか?ちょっとゴチャってる気がして鬱陶しいな」
記憶庫で調べた限りでは半径五キロ以内に脅威になりそうな生物と知性のある生命体、人間とかは居なかった。
特に目標になるような物も無いので適当に歩く。
森のざわめきと小鳥の鳴き声が聞こえてくる、中々良い雰囲気、ピクニックになら来ても良さそう、鬱陶しいが。
…………いや、夢だから来れるわけ無いだろ、ハッハッハッ、ハッハァー……。
収納から、クッキーを取り出して食べる。
何か口に含んでいないと気付いてはいけないことに気付いてしまいそうだ。
ローズさんのクッキーうめぇ、色がヤバイけど。
あの人、血気苺好きすぎるんよ、やっぱり血みたいだからなのだろうか?
でも血を飲んでるとこ見たこと無いんだよなぁ、使徒になったから必要なくなったのかもしれないけど、流石にしたいだろうし……そもそもこの世界の吸血鬼ってどんななんだ?戻ったら訊いてみよ。
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ピンッ……ピンッ……ピンッ……
………………………何も無さすぎる。
白金貨を指で上に弾いて遊びながら、特に変化のないカラフルな森を歩く。
ていうかマジで何もない、もう二時間くらい歩いてるんですけど?
警戒していない訳じゃ無いが今は記憶庫の索敵も切っている、何かないかなぁ暇すぎるんよ……魔法の練習でもしますか。
「かなり魔力を籠めて、風生成。お~緑色のモヤっとし何かだ、多分これが風なんだよな」
濃度の高い魔力は目に見え、その属性によって色が付く、とユナさんが言っていた。
水属性魔力で見せてくれたけど、ちょっと青みの水としか思えなかったが風は凄いな、元々目に見えないからかなり分かり易い。
「風操作、ふむ、実態無いからムズイ。というかそれ以前に普通に移動しか出来ないんだが?水とはいえ、あそこまで細かい造形とかやっぱユナさん化け物だな」
ユナさんは魔法の基礎を教えてもらった時に魔法で出した青い水を水操作で精巧な東洋系の龍にして動かしていた、それはもう小さいけど本物と思えそうな程であった。
その時は凄いなぁ~くらいにしか思わなかったがこうして自分でもやろうとしてみると改めて本当の凄さが理解できる。
もっとこう、回転とかちょっと形変えるだけにしよ、今の俺には難易度が高すぎる。
「真ん丸に成形してっと、イメージはそうだなぁ……ミキサーで良いか、はっ!」
綺麗な球体になった、緑色の靄が高速回転しだす。
我ながら中々に成功してるんじゃないか?こいつをそのまま木へとっ!
バキバキバキッ!!
「ワァオッ!?………強くない?」
1m程離れた場所にあった木の右側が抉られるように吹き飛び自身を支えられなくなった木は折れてしまった。
初級魔法でも工夫の仕方次第でここまで威力が上がるか……ほんっと魔法は面白いぜ!
取り敢えず成形と回転だけをやろう、それ以上は歩きながらは難しいし警戒が出来なくなるだろうからな。
「うむむ~取り敢えずは、正四面体。次に、正六面体…………正八面体……………正十二面体………………正二十面体…………………」
あれ?意外とイメージ通りに形に行くな、もっと尖った感じに―――
ガサガサッ
何だ?俺の索敵をすり抜けて来やがった。
黒白を長剣にして構える。
[キュ?]
「……………あ?」
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