一睡もしていないなど言えるわけもなく
「んーそうだなぁ」
そう言われてもして欲しいことも欲しい物も無いんだよな。
むむぅ~~~………そうだっ!!
「なあ、ラーティア」
「なっ何だ、レイよ、そう見つめられると照れるのだ///」
「俺と―――
結構、かなり、滅茶苦茶悩んだけど今はこれ以上思い付かなかった。
けど、良い案だと自信を持って言えるぜ!
―――友達になってくれないか?」
「………とっ友達?わ、我とか?」
「ああ、それが俺の要求だ」
「わっわわっ///……いいのだ!OK、肯定、YESなのだ!!寧ろ我からお願いなのだ!!」
「お、おう」
予想以上の反応に思わず狼狽える。
でも、嬉しそうで良かった、流石にこれを拒否されたら俺のオリハルコン並みのメンタルでも傷が付くこ間違いなしだったからな。
後、喜んでる姿可愛すぎる。
「では手を出してくれ、レイ!!」
「分かったから落ち着け、ティア」
「ティア?」
「いつまでもラーティアじゃ、呼びにくいからな、良いだろ?」
「ティア…ティア…良い!ありがとうなのだ!」
俺の言葉を繰り返し、花が咲いたような笑顔をするティア。
可愛い。
何故こんな要求にしたかというと話を聞いた限りだと、ティアが友達ゼロだから。
これにはしっかりとした理由がある。
龍には戦名という称号に近いものが龍の王、龍王から一定以上の強さになると与えられるらしい、ティアで言うと風刃龍というのがそうだ。
これを持っているのはとても名誉なことらしいが、それがティアがぼっちの理由となっている。
戦名を持っている龍はそこそこいるらしいが、戦名を与えられる基準の一定以上の強さ、これが問題でマジで半端ない強さじゃないと駄目らしい。
だから持っているのは皆歴戦の龍達のようだ、その方らは皆から尊敬や羨望される凄い龍達みたいだ。
けれどティアは龍の中ではまだまだ子供なのに、その歴戦の龍達と肩を並べる程強くなり、さらには戦名も与えられたことで同年代が関わりにくい存在になってしまったらしい。
だから同年代で友達ゼロ、強いのも色々大変らしい。
別にこの要求の理由はそれだけではない、龍との関係はあった方が何かと便利そうだし、有事の助っ人としても申し分ない、善意や哀れみだけで関係を作ろうとはしていない。
けど、一番はやっぱ……………可愛いから、まあ俺も男だし?可愛い子とは友達でいたくない?普通?それにいい子そうだからね、何かしてあげたい……俺よりも強いけど。
それと確か、これで良いのか?
「はい、ティア」
「ん?ああそうか、我が言ったのだったな」
ティアの方に右手を出す。
何をするのか分からないが、取り敢えず言う通りにする。
ティアは俺の手を取り、膝をついて俺の手に口を近づけ、そのまま俺の人差し指を咥える。
指に柔らかい何かが触れ、そのまま這う様に俺の指に巻き付きながら動く。
うん、これ舌だねぇ、めっちゃ舐められてるんですけど。
「んっ……んぁ……んゅ……」
「………はっ!?ティア何してっ!?って力強ッ!?」
ティアの行動に思考が停止していたが、何とか意識を戻して指を抜こうとするが、手と口でガチガチに固定されていて全く動かない。
この、正直に言えば嫌ではないのだが、目的が分からんからどうすればいいのか分からんし、振り解けないし、とても困る。
仕方ない、このままされるがままでいるか…と、考えていると指からティアの口が離れた。
指と口の間にトロッとした銀色の糸が………ゴクッ。
いや、駄目だ、落ち着け。
平静を装い、さも普通かの如くティアに訊く。
「レイと我の魔力を繋げ、互いに記憶させたのだ。これでレイと何処に居ても世界が違っても念話で会話することが出来る、人同士などでは出来ない方法であるがな。後この仕方が三番目に魔力を繋げるのに効率が良いとされているのだ」
「因みに一番と二番は?」
「二番目がAで、一番はCだ、滅多にやるものは居らぬしそこまで行くまでに既に魔力は普通繋がっている」
「?………ああ、そういうことね、こっちの世界ではその表現よく使うのね」
魔力を繋げるか、驚いたけどこれは嬉しいね。
連絡手段って言うのはいっぱいあった方が良い。
これでやれるだけやったかな。
「ティア、俺を元の場所に戻せる?」
「レイ…帰ってしまうのか?」
「ああ、俺にもやることがある、仕方が無い。けど安心しろ、何時でも念話は出来るんだろ?寂しくなったら何時でも話しかけてこい、何時でも話し相手になろう。落ち着いたら声を掛けるからまた此処に呼んでくれ、勿論それ以外でもこっちから話しかけることだってある。だからほんのちょっとの間だけさ」
「………レイ、分かった。我もしっかりせねばならぬな、では門を出そう。通れば元の場所に戻るであろう」
そうティアが言うと目の前に翡翠色の扉が出現する。
「ありがとな」
しっかりとそう告げ、扉を開けて潜る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
元の池の前まで戻ってきた。
「もう…朝…だと」
時空計を確認する。
七時か…三人共起きているかね?まあまだ遅れている訳じゃないし、ギリ許容範囲だろ。
極撃で戻るか。
「の前に、《疲労死壊》行くか」
来た時と同じように、樹の枝を飛び移って移動する。
ん~朝の森、これはこれで良いね、また来たい。
そろそろか。
「魔法を解除、よしっとふぅー戻れた」
張っていた結界魔法を解除して、キャンプ地へと本当の帰還をする。
ん?音がする、とすると三人は起きてたか。
「レイさん!何処に行っていたんですか?」
「朝起きたら居なくて心配した、結界で出れなかったし」
「書置きでもしていって欲しかったわ」
「ごめんごめん、ちょっと散歩にね」
一睡もせずこの森の調査をして龍と戦って、更に変なのと戦っていたなど当然そのまま言えるわけもなく、俺は無難に嘘をついた誤魔化した。
「三人共、今は何していたんだ?」
「正直に言えば、レイさんが居ないのを不思議には思いましたけど、不安には思っていなかったので普通に朝食を食べて、ある程度帰る準備は済ませました」
「結界も張ってあったし、安心して作業で来たわ」
「ふむふむ」
まあ、そうだよね。
俺のランクから考えてこの程度の森で死ぬことなんてほぼゼロだと思うよね。
「じゃ、俺もちょっとご飯食べたら、神盟友好都市に戻ろっか」
「わかった、その間ソラ達はちょっとゆっくりする」
「済まんがそれで頼む」
「まあ、まだやること残ってるから丁度良かったけどね」
さてと、朝食の準備しよう、健康的な日々を過ごすには朝食は欠かせなからな……寝てねぇけど。
帰ったらしっかり寝よう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はい、依頼完了です」
「ありがとうございます」
「いつもより、効率良かったから、報酬いっぱい」
「そうね、今回は本当にありがとう、レイ」
そう時間が掛からず俺達は神盟友好都市に戻って来た。
元が遠くないから、大して時間が掛かんないのは当然だよな。
そして、ギルドで依頼の完了報告をし終わったところだ。
「別にいい、さて俺も終わったことだし、戻りますか。……三人共まだ学生なんだろ?学業の方は疎かにすんなよ、後々困るからな。その他何か困ったことあったら、手が空いてるときは手伝ってやるよ」
「ありがとうございます、レイさん。レイさんも気を付けてくださいね」
「今回は助かった、また一緒に依頼行きたい。けどまだまだソラ達じゃ力不足、だから頑張る」
「最後にレイ、貴方に二つ名はあるの?唯気になっただけなんだけどね」
「『黒の断頭台』……ちょっと前にニュースになってたっぽいし、簡単に情報は見れる筈だぞ。んじゃ、またな」
別れの言葉を告げ、ギルドを出る。
バリバリ俺も学生の歳なのだが…何を言っていたのだろう、俺は。
ま、仕方ない、あの三人は伸びそうだしいい子達だしね、頼まれれば協力くらいなら幾らでもしてあげるさ。
眠いし、災厄の箱に戻るとしますか。
『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになります!




