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堕ち切れぬ者




 ―――()()()()()()だろう』


 堕ち切れぬ者、か、なるほどねぇ。

 名前からして。


「堕ちた者関連か?アレ?」


『ああその通り、単純に言えば堕落時に理性を失った、堕ちた者の()()()()()だ』


「成り損ない……」


『感じる気配察して、元はかなりの上位生物だと思われる』


 へぇ~ちょっと新人使徒の俺には荷が重いんじゃあ、ありませんかねぇ。

 そうも言ってらんねぇ、やれるだけやるしかないっしょ。


「ん~とこれだ、ベリーナさん謹製の雷風飴、爽やかなミントで美味いな」


『む?お主風の魔力が強くなったな』


「そういう効果の飴なんだよ、まだ魔力変換が慣れねぇ、試していくか天風嵐(テンペスト)


 今食べたのは、前にベリーナさんに貰った箱に大量に入っていた飴だ。

 自身の風属性適性の強化の飴、だったけど俺適性無かったから使い処も無かったんだけど、今なら使える。

 俺に適性が出来たことも後で調べなきゃな。

 早速、灰百足を中心に風魔法を使う、う~んでもちょっと浮くくらいで効果は今一つだな。


『《斬風一刀(キリカゼイットウ)》』


「俺の時より力込めてね?」


『当然だ、手加減など出来る相手では無いからな』


 やっぱ手加減されてたのね、俺。

 薄々感じてたけど、やっぱ気配から考えて攻撃弱すぎたんだよ。

 にしても、あの一撃でちょっと斬り傷付いただけかよ、阿保硬度だな。

 でもコレ俺の役割決まったな。


「俺が全力で隙作るから、その間に最大火力行けるか?」


『無論、今はお主を信頼しよう、流石に我だけでは手間がかかるからな』


 倒せないとは言わないと、呆れるぜ。

 けど今は心強い。

 なら俺も期待に応えますかね。


「ふぅ~ッ!!風精と舞う(シルフ・バイレ)金に物言わせて戦いますかね、ほいっ!」


 風魔法で空中を浮遊して移動し、ユナさん達に作って貰った、手榴弾のような物を灰百足へと投げ込む。

 コレ、一個10万D、白金貨一枚分するんだぜ?金投げつけてるのと一緒だよ。

 だがしかし、多分一つで俺の全力に近しい威力を叩き出す、そう考えると安すぎるんだなこれが。

 消耗品が自分と同じ強さなのをどう思ってるかって?

 あの人達は常識で考えちゃ駄目なんだよ、使える物は使う、それでいいんだよ。

 今投げたのはユナさんの《地獄の業火(インフェルノ)》が込められたのとネフィラさんの《天籟の嵐渦(サイクロンストーム)》が込められた二つだ。

 火魔法と風魔法は頗る相性が良いからな。


「良く焼けてんねェー、俺の火災旋風(ファイヤストーム)が遊びに思える程の高火力」


 灰百足が悲鳴を上げながらのたうち回る、タフだな。

 この手榴弾の難点は、ある程度の衝撃が無きゃ起動しないこと。

 それに手榴弾を中心として魔法が発動するから、しっかり当てなきゃ唯の無駄。

 ラーティアは風を操るから、吹き飛ばされたら全て不発に終わるから相性最悪だ。 

 だから使わなかった。


「さて、これだけじゃ駄目だ、てことで炎も収まって来たし、追加!」


 更に二つの手榴弾を投げ込む。

 瞬間、灰百足や弱くなっていても大きい炎の嵐、周囲にある全てが等しく凍りつく。

 そして鼓膜が破れそうなくらいの轟音を立てて雷が落ちる。

 まだ、後一手か、はぁ~これで終われば良かったのによぉ!!


「《時間加速(クロックアップ)()超時間圧縮ハイパーアクセラレート》,ミニガン、増殖(マルチプル)50、装弾(リロード)標的(ターゲット)自動(オート)連続(コンティニュイ)発射(ファイア)ッ!!!」


 まるで時が止まったかと錯覚する程、世界が遅れる。

 これあり得ない程の速度で魔力消費するんだよ、今出来んのは最大一分まで。

 増殖した黒白を灰百足を中心に全方位に移動、展開する。

 今回は魔力弾ではなく、予め製作してもらった実弾を使う、さっきの手榴弾より一発一発の威力は落ちるがその分数撃つ、総合的な威力で言えばこっちの方が上だ。

 発射の命令(コード)と共に全ての黒白から弾が放たれる。

 ん~爆発の光が強すぎて何も見えね~けどこれで本格的に内部にダメージ通るようになったろ。

 さっきまでアイツは苦しんでいるように見えたって言うか実際にちょっと苦しかったんだろうけど、それは殆ど外殻が傷ついたことによるもの、内部には効いていなかった。

 ラーティアの攻撃を上手く効かせる為に、今こうして外殻を取っ払ってるという訳。

 もう魔力切れるな、最後に灰百足を打ち上げて、ラーティアが攻撃を当てやすいようにするか。


「オラッ!時間加速解除!決めろ!ラーティア!!」


『承知!《風刃之天斬(フウジンノアマキリ)()空断一閃(ソラタツイッセン)》!!!』


 爆発を下部に集中させて、灰百足を上空へと吹き飛ばす。

 それをしっかりと確認し、ラーティアへ合図を送る。

 合図に応えて放たれた極大の斬撃は俺の知覚速度を超えて灰百足を真正面から綺麗に真っ二つにする。

 ふむ、強くない?これ俺勝て無くね?


「ん?領域が解除された?」


『もう必要が無いからな』

 

 斬られた灰百足が溶ける様に消える、と同時にラーティアの固有領域(アイゲンテリトル)が解除され、元のドーム状の空間に戻る。

 ふ~ん……


「俺には、んなもん必要ないってか?あ?」


『そうでは無い』


「じゃあ何だ?」


『我とお主は敵ではなかった、唯それだけだ』


 敵じゃないぃ?何をふざけてやがる?

 テメェ、会って直ぐにバチクソ殺してきたじゃねぇか。

 そうして警戒をしているとラーティアが強く発光する、その光量に思わず目を瞑る。

 目を開けるとそこには、エメラルドグリーンの髪、翡翠色の瞳、絹のように艶やかな肌、そして風刃龍(ラーティア)と同じ角の生えた、奇麗より幼気や可憐の言葉が似合いそうな美少女が居た………裸の、もう一度言うが裸のだ。


「いっ!?誰ッ!?てか服着ろし!?」


「此度は我の勘違いであった、誠に申し訳ない」


 少女は流れるように正座をし、両手を地面につけて頭を下げる……土下座である。

 ……まず服着てからにしてくれない?今の状態だと少女を裸の状態で土下座させてるクズ野郎に俺がなっちゃうからさ、ね?


「謝罪は受ける、だから服を着てくれ…」


「か、感謝する」


 謝罪を受け、服を着るように言うと少女はそう返し、一瞬の内にワンピースを着ていた…初めからそうしろよ、後可愛いな。

 この少女、というか此奴が何者かは既に解っているが一応訊くか。


「ラーティア、でいいんだよな」


「如何にも、我はラーティアだ」


「お前…女だったのか?」


「うむ、当然であろう?」


 いや分かんねぇよ、竜も龍も雄雌全然見た目から判断出来ねぇよ。

 それにしても、今まで戦っていたのがこんな少女だとは罪悪感が……無ぇな、だってめっちゃ殺されたし。


「再度言うが、此度は済まなかった、我が知識不足だった故起きたことだ、申し訳ない」


 そう言いながら再度頭を下げてくるラーティア。

 でそれが良く分からんのよ、何で頭下げてくるの?


「我は知識の中でしか人も堕ちた者も知らぬが故、間違って攻撃してしまった、そのことの謝罪なのだ」


「あ~なるほど、そういうことね」


 俺を堕ちた者と判断してたのか、だから初手殺しにかかってきてたのね。

 まあ俺も知識しかないし、その知識すらまだ足りて無いしそういうこともあるよね。


「非は我にある故、情報の提供、そして一つお主からの要求を何でも受けよう」


「……分かった、って言わなきゃラーティア納得しないだろ?」


「ああ、その通りだ」


 もうどんな感じの奴か大体掴めた。

 じゃ気になること訊いて行くか。


「じゃあ先ず、此処は何処なんだ?」


「此処は、龍界にある我の巣だ、龍界とは人族達が普段過ごしている人界とは別の次元の世界だ。他にも神魔界や幽界などまだまだあるが、その全てを含めた世界の総称、いや世界群をオリジンという」


 へぇ~…ってそんなことユナさんもリュミス様も言って無かったよ!?こいつぁ~帰ってから色々と訊かないといけねぇなぁ。

 ドンドン訊いて行こう。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「粗方、知りたいことは知れたかな」


「では、もう一つの方はどうするのだ?」


「あ~………ああっ!あったね、もう一つ」


 そこそこ時間を掛けて、自己紹介もしてラーティアから情報を色々と貰った。

 知らない事ばっかで面白かった。

 そしてすっかり忘れていた、要求についてどうしたものかねぇ。


「さあ、レイの要求は何だ?」



『よかった』『続きが気になる』と思っていただいたり、

ブックマークや評価をしていただけると、励みになりますので!

宜しくお願いします。(*_ _)ペコリ

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