やりたいこと
トントントントン
「………………」
意識が戻り、目を開けると見慣れたという程の回数は見ていない自室の天井が視界に映る。
徐々に思考がまとまって行き、何があったか思い出してきた。
チッチッチッ ボッ
「………負けたなぁ」
けど、全然悪い気はしない。
ローズさんには言わなかったが俺何度も負けてるし、今回はちょっと前より進めてる感じがして良かった。
因みに誰に負けていたかと言えばリュミス様である、夢で俺を呼んでは訓練と称してボコボコにしてくる、最近エクレア様も偶に来て訓練に付き合ってくれるのだがエクレア様はリュミス様より酷い。
リュミス様の言い方的にあんまそういうことはしないらしく調節が下手で努力は伝わってくるのだが毎回一撃で俺は負けている、その後謝ってくる姿はとても可愛らしいから特に気にしてはいない。
そこらへんリュミス様はしっかり俺が成長できるように調節してくれてる感じで有難い、毎回ボコボコにしてくるが。
ジュ~ カカッ
「今、何時くらいだ?」
内ポケから時空計を取り出し時間を確認する、もう夕方か。
どうしようか………………目を、いや耳を逸らすのを止めよう。
ベットから起きてリビングの方に行く、やはりキッチンから音がする。
「誰かいるんですか?」
「おおっ!起きたかレイ、済まんが部屋に入らせてもらったのじゃ」
「別に良いですよ、で何してるんです?」
居たのは今朝の姿に戻ったローズさんだった、やっぱあの戦闘の時の姿と違い過ぎだよな、系統変わってるもん。
そして何かいい匂いがする、料理しているのだろうか?
「レイと妾の夕食を作っていたのじゃ」
「ん?集まって食べないんですか?」
「ああ、レイが来てからは毎回集まっていたから勘違いしとるのかえ」
「勘違い?」
「妾達が集まって食事をするのは基本的に週一回だけじゃよ。皆個々作業や任務があるからの、食べる時間がバラバラになるから皆自室で作って食べとるのじゃ、その為のキッチンだしの。この前時は特に急ぎのものも無かったし、レイを此処に慣らす為だったのじゃ。それにもう正式に極昌の冒険者達になったから部屋も与えられたから皆いつも通りに戻ったのじゃよ」
考えてみればそうか、毎回きっちり集まって食べれるわけないよな。
後、そういう理由でキッチン付いてたんだやっと疑問が解消したわ。
「じゃあ夕食は何ですか?ローズさん」
「勿論、妾の血がたっぷり入ったハンバーッ!?待つのじゃ!?お願いじゃからそんなに引かないで欲しいのじゃ!冗談じゃから!冗談じゃから本気で避けないで欲しいのじゃ!?」
「………ホントですかぁ?」
吸血鬼ということを考えれば強ち無くも無さそうだから思わず後退ってしまった。
いや、もしかしたらそういう性癖かもしれないじゃん、可能性がゼロと割り切るにはまだ早いと思うんだ。
仮にもし、そうでも嫌いにはならないがちょっと関係修復に時間が掛かりそう、俺的にはそうでない方がいい。
それに俺にもいくら美少女の物とはいえ血液の入った物を食べて喜ぶような性癖は無い。
「誓うても大丈夫じゃ!一切入っとらんから安心するのじゃ!…………確かに血を使って調理したが、多分入って無い……きっと…恐らく」
「まあ……良いですよ」
「ありがとうなのじゃ、ではもう出来とるから食べようぞ!」
「はい、じゃ準備手伝いますよ、流石に全部任せるには悪いんで」
棚から何故か二人分ある食器を取り出し準備する、何故元から二人分?
…バラバラに食べると言っても今の俺みたいに一部が集まることもあるからか。
「そういえば、元々黒竜の肉でパーティーをする予定だったのじゃけど、妾がレイを気絶させたせいで予定が狂ったから日を改めてしっかりと計画を立ててすることになったのじゃ。お詫びと言っては何じゃがこのハンバーグには黒竜の肉を使ってるのじゃ」
「そうですか、ありがとうございます」
「別にいいのじゃ、元はと言えば妾が考えずに戦闘したせいじゃからな…よし!盛り付け完了じゃ、レイ持って行ってくれ」
「分かりました」
美味しそう……しまった、早く運ぼう。
決して凄く丁寧な盛り付けに目を奪われていたわけではない、しかしローズさん、サラダ、スープ、ハンバーグにデザートまで作っている、時間かかっただろうな……
いや、待てよ?血を使って作ったって言ってたから平行作業が可能かもしれない、意外に時間はかかってないのか?…まあ、時間なんて関係ないか、折角ローズさんが作ってくれたんだし。
「はい、準備完了ですね……では」「うむ」
「いただきます」「いただきますなのじゃ」
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「片付け完了っと、じゃオセロしながらデザートも食べて話をしましょうか」
「分かったのじゃ」
ローズさんの作った、夕食は大変美味でした。
…何で毎回食事の途中は無いんだって?そりゃ、作者に自信が、っとと危ない危ない、何か嫌な予感がしたぜ、とまあそんなとこだから気にしないように。
「よし!レイこれが妾特製のジェラートじゃ!!」
「………マジで大丈夫ですよね、コレ?敢えてやってたりします?」
「うむ!全く持って問題無しじゃ、これは元の素材の色じゃからな」
机の上に出された、ジェラートは正に「血を入ってんだろ!!」って言いたくなる色をしている。
……大丈夫だ、ローズさんは自分の血液を他人に食べさせる特殊性癖なんて持って無い筈…多分…そもそもローズさんがふざけて俺の思考がそっち寄るようにしたのが悪いのだ、何故そんなこと気にしなければならねぇ。
絶対敢えてやっているに決まっている、この回りくどく弄ってくる感じ、直接的なユナさんとは別の方向で厄介だ。
「入っているのは血気苺と言うてな、色は正に血じゃが甘味と酸味が絶妙な中々出回らん超高級品じゃ。まあ、此処の栽培室で育てられているけどのぉ」
「何でもありですね」
「それは置いておいて、今回はかなりの自信作じゃ!食べてみよ!」
「うっ、分かりましたよ……」
……これは凄い、味的にはストロベリーよりかはブルーベリーに近い感じなのだが、最初にくどくない甘味が口の中に広がり、その後に優しめの酸味が来て後味がスッキリしており、いつまでも食べれそうだ、見た目はアレだが。
「美味しいですよ!ローズさん、ちょっと見直しました」
「それは良かった…が妾の評価もしかしてちょっと下がっておった?」
「ちょっとですよ、ちょっと、今直りましたから」
「ん~まあ言いかえ、ん?しまったスプーンを一つしか準備してなかったのじゃ、レイ、食べさせて欲しいのじゃ」
「え?…いや、まあいいですよ、はい、あ~ん」
「ん~!大成功なのじゃ!それにしてもレイ、慣れすぎではないか?」
「だって、ユナさんよく言いますし」
この手のことは『とても』よく言ってくる、嫌ではない、が自然と距離が近くなるので心臓に悪いから止めて欲しい。
…抱き着かれる方が密着するが、アレは大体の時向かい合って無いから大丈夫、後単純に恥ずかしい。
「確かにユナなら言いそうじゃ……さて今日の戦闘について話そうかえ」
「はい、で俺はどうでした?」
「まずまずってところじゃと思うぞ?けど妾には直接戦闘の強さは良く分からんのじゃ、潜伏からの一撃必殺が基本スタイルだしの。だが"覚醒真器無し"では結構いい方じゃ、と言っても妾は一割しか力出しとらんが」
あれで一割とか、化け物かよ、いやそうだったわ。
それと覚醒真器とは?これについては俺のはリュミス様から渡されたしそっちに訊いた方が良さそうだ。
「それと、レイの欠点も分かったの」
「欠点…ですか」
「それは…魔力の使い方じゃ、本当にダメダメじゃの、まだ五歳児の方が上手いかもしれん」
「そこまでですか!?」
マジ?そこまでっすか?……確かに魔力は魔法と黒白の銃形態以外では意識して使っていない。
スキルを使うと勝手に減ってるし、意識したこと無いな。
「まあ、元々魔力なんて使わない世界から来たのじゃから当然かもしれんが、ここまでとは妾も思わなんだ、だが魔法は使えるのじゃろう?」
「はい」
「それのせいでユナ達は魔力が扱えると思ったのじゃろう、だから基礎は何も教わって無い筈じゃ」
「そうですね」
「はぁ~これから妾がしっかり教えていくのじゃ、暫く特訓じゃぞ、レイ」
「ありがとうございます、ローズさん」
俺は確かに一般の人から見たら強いかもだけど、ローズさん達と比べたら雑魚もいいとこだろうし、とてもありがたい。
でも、起きてる間も訓練しなきゃなのか……別にいいか。
「ふぁ~すみません、ローズさん」
「ん?もうそんな時間か、寝るか?レイ」
「逆に何でそんな元気、ってそういうことですか、ローズさんにとってはこっからが本番みたいな感じですよね」
「まあの、というかもう妾には睡眠も食事も必要無いのじゃ、使徒とは生物の領域を超えた存在じゃ必要なのは未熟の証なのじゃ」
そうなのね、だから吸血鬼なのにバリバリ朝から活動してるんだ。
後そのことから考えると俺はしっかりと未熟って訳ですか、まあ焦る必要もないがずっとこのままってのもね、早く追いつきたいものだ。
「でも皆さんは取ってますよね?」
「必要無くてもしたいじゃろうが、妾達は唯神魔様達の使命を遂行する為の機械じゃないのじゃよ。必要無いからしないではなく、やりたいことはしていいのじゃ」
「なるほど……」
やりたいことをしていい…か、あんま考えたこと無かったかもな、やりたいこと。
この世界来てからはあいつらと使徒、世界のことで一杯一杯だったのかもな、だから思考を落ち着かせる為に無理やり休んだり、それこそ今みたいにオセロに逃げていたのかもしれない。
そんな考えじゃ、上手くいくことも行かないし、物事を真に楽しめているとは言えないか…昔みたいに。
異世界に来たという出来事は想像以上にデカいストレスになっていたんだろう、それのせいで変に焦っていたんだ。
もっと肩の力を抜いて行こう、先ずは。
「はい勝ち、じゃあ俺寝ます、ローズさん」
「ぬお~!勝ち逃げとは卑怯なのじゃ!もう一戦じゃ!」
「嫌ですよ、俺はもう寝たいんです、これが今俺がやりたいことなので」
「ふむ、仕方ないまた今度じゃ、ベットに行くかえ」
ちょっと急過ぎたかも。
オセロを仕舞い、ローズさんに言葉を掛けてベットへ向かう…ん?
「何で付いて来てるんですか?」
「寝るのじゃろ?」
「そうですけど…」
「ならベットに行くのは当然じゃろ」
「いや、俺のベットですけど?部屋に戻らないんですか?」
「いやレイと一緒に寝るしの」
えぇ~これユナさんと同じ感じだ、絶ッ対戻ってくれない奴だ。
何かとローズさんとユナさんは似たとこあるんだけど、そこは同じじゃなくて良いと思う。
仕方ないか。
「じゃさっさと寝ましょう」
「くくっ」
寝間着に着替えて、速やかにベットに入り明かりを消す。
今日は何か疲れたからもう、意識がぁ…っ!?
「音もなく抱き着いて来ないで下さい、心臓に悪いです、せめて音立てて下さい」
「音を立てたらいいのかえ?」フゥー
「だ、からっ耳はっ、駄目です!」
「いいではないか~」
何なの!?抱き着いて耳を弄るのはセットなのか!?デフォルトなのか!?
やっぱ帰しとくべきだったぁ、然も吸血鬼なだけあってユナさんと違い、終わる気配が無いのだが?
めっちゃ生き生きしてる。
「寝かせぬぞ~妾は根に持つタイプじゃからなぁ~理由があろうとも勝ち逃げは許さぬ」
「そこまで持ちますかねぇ!って、あれ?身体の動きが悪いのですが?」
「当然料理に仕込ませてもろうたぞ、簡単に人からの物を食べるからぞ?」
だから仕込みの感じも似てんだよ!さりげない感じがそっくり。
後、疑いのある奴ならともかく、完全な仲間の物まで警戒しなきゃなの?俺毎回貰った物に分析使って疑うのやだよ?
「今宵は存分に玩具になるがいいわ」
「………」
仕方ない、もう手遅れだ、付き合おう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「もう、朝ですかぁ~」
頭が回んねぇ、寝不足以外の何物でもないな。
「《疲労死壊》おっけ、スッキリした」
スキルって便利、けどこれがあるからって、休まなくなったら俺は人として何か失う気がするからそこら辺は気を付けよう。
というか、深夜を過ぎてもローズさんが俺で遊ぶのが悪いのだ、体感では二時間くらいしか寝て無いし、多分実際そのくらいだと思う、元気すぎ。
「いい寝顔なこって、昨日は作ってもらったし、朝は俺が作るとしますか」
今日からやること沢山だし、張り切って行きますか!
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