…なるほど
「妾達はレイと同じ使徒なのじゃ」
「……………」
昨日の時点で予測は出来ていたが、やっぱりか。
ん~じゃあ俺とユナさんの出会いは仕組まれたものだった?
「先に言っておくと私とレイの遭遇は偶然だよ、元々別の依頼で行動してたからね」
「そうですか、まあ俺のあのミスまで予測や仕組まれていたわけありませんしね」
「どういうことだい?」
まだ皆さんには言って無かったっけ?ああ、面倒そうだったから言うの止めたんだわ。
これを期に言うか。
「俺はこの世界に一人で来てないんですよ」
「な、るほどっす」
「俺達は元々三人でよくわからん森に目が覚めたら居ました、三人で状況の確認をしてから俺は敵の対策の為にスキルを扱えるように練習をしたんですけど、ちょっとミスがありまして俺は豪雪地帯レスロに転移してしまいそこでユナさんに会った感じですね」
「じゃあ他の二人は何処なんですか?」
「分かりませんね、けどあいつらなら死んでることは無い筈ですよ、リュミス様の話から生きてることは確定してますしね、場所教えてくれませんけど」
(教えたらつまらないじゃないか、それにそっちの方がレイも好きでしょ?)
よく解っていらっしゃる。
「ところでレイ、お主あまり動揺しておらんようじゃが予測出来ていたのかえ?」
「ええ、まあ昨日までその考えはありませんでしたけどね」
「どういうことじゃ?」
「昨日ハクソンさんが俺とリュミス様の関係を知っているようなこと洩らしてましたから、そこから予測していました」
「なるほど、それでですか」
本当にあれまでは頭の中にその考えはゼロだったんだけど、考えれば考えるほど確証が出てきちゃって大体今日のことは予測出来ていた。
そして今日俺の予測は正しく皆さんは使徒だったと。
まあ、だからと言って何か変わるかというと多分あんま変わんないと思う。
「分かっていたならいい、じゃあ使徒の役割は知ってる?」
「いえ、それは知りません、リュミス様色んなこと教えてくれますけど、そこら辺はまだですね」
「ん、そこから話そうか」
「お願いします」
使徒の役割とは何なんだろ?やっぱある意味では駒なのかな。
「簡単に言えば使徒は世界を安定させるのが役目っすね」
「安定?」
「悪意や害の無い世界って言うのは進歩しないらしいっす。々ゆっくりと衰退し崩壊へと進んで無くなっちゃうらしくて、それを防ぐため敢えて王魔様達が悪意などをバラ撒いて進歩するようにしてるっすね」
「ふむふむ」
「けど完璧に統制の取れた悪意などは対処が簡単になったりしてそれはそれで進歩しないらしく、調節が難しいみたいっす。なのである程度規模がランダムにして悪意や害を撒き、さらに大きなものは調整して出すみたいっす」
戦争とかが無いと現代の技術まで進歩しなかったとかは何となく聞いたことがあるけど、世界規模でもそうなのか。
安定…若干先の展開が読めたな。
後、めっちゃユナさんが話す雰囲気だったのにネフィラさんが話すんですね。
「そして使徒は大き過ぎて世界への悪影響が進歩を上回る可能性がある場合に神魔の代わり対処することが役割っす」
「にゃるほど………なるほど」
「他には神魔様達が欲しいものとかを集めて渡したりとかするっすね」
流してくれてとても助かる。
欲しいもの……お菓子とかかね?
「まだもう一つ私達の役目はある」
「まだあるんすか」
「それは世界外から侵攻してくる堕ちた者を倒すこと、まあこれは私達だけじゃなくて天王神魔も他の神や悪魔もするけどね」
「あ~それもあったっすね」
「妾達の役割の一つじゃ、忘れるでないわ、確かに最近現れておらんがの」
「けど油断は禁物だ、力を蓄えてると考えるのが妥当だろう」
「あの、堕ちた者とは?」
その話全然リュミス様から聞いて無いんですけど?多分結構重要なことですよね?
(ちょっとタイミングを図っていただけだよ?ホントだよ?)
忘れてたんですね、解ります。
「話の前に、レイ君は世界というものが神魔様達含め僕達を創っているのかそれとも僕達が世界というものを創っているのか、どっちだと思う?これは堕ちた者と関わりがあることなんだ」
つまりは世界があるから俺達が居るのか、俺達がいるから世界なのかって話か、俺の感覚だが基本的に神が世界を創ってると思ってる人ばかりだと思うけどな、そういう話多いし俺もそう思ってる。
けどこの訊き方はどっちか分かんないなぁ、どっちに誘おうとしてるのか判断できない。
ん~ここは…
「分からない、ですかね。どちらの可能性もありますし、そんなもの確証が無いのに決めれる訳が無い」
唯思ってること言おう。
「…そう、当たり!そんなもの分からないんだよ」
「神魔様達でも分かんないって言ってたっすから、尚更うちらに分かるわけないっからね」
「で、それが堕ちた者どう関係するんですか?」
ダグラスさん凄い笑顔だなぁ~
「堕ちた者とはこの問い対して世界というものが僕達を創っていると考える者達だ、一体どんな存在が始まりかは知らないがその者達は同じ思想の者を集め堕落させ世界という理を破壊して真の自由を手に入れるとかいう目標の許、数多の世界に侵攻を続けている」
うわっ、如何にもヤバそうな集団ですねぇ~面倒そう。
「堕落ってなんです?」
「堕落は理から外れること、存在の再構成みたいなもの、新しい力だったり不老だったりを手に入れることが出来るけど代わりに自身という存在が壊れる。自分が何者であったか把握できなくなって基本的には狂うことが多い、けどそれを越えて理性を保てた者を堕ちた者という」
「まあ、どの堕ちた者も大概異常で分かり合うことは出来ないわねぇ、必要な感覚が堕落によって抜け落ちてしまったんでしょうね」
「けど、どの堕ちた者もその洗脳でもされたかのような世界を破壊するという意思は変わりません」
何かヤバい奴等ってことは理解できた、もっと詳しいことはリュミス様に訊くとしよう。
流石に規模が変わるからな、そっちの方が面白そうだからとかいう理由で相手に後れを取るわけにはいかねぇからな。
「オッケーです、じゃあ今日この後何します?」
「話題の切り替えが唐突じゃなぁ…」
「でももう、昨日の話の部分は終わりましたよね?」
「まあそうじゃ、では今日はこの後レイにこの災厄の箱の設備について説明するのじゃ、皆はそれぞれ行動してよいぞ」
「はいっす」「了解した」「ん」「分かりました」「いいわぁ」「分かったよ」
返事バラッバラだな。
全く揃ってない返事を返すとローズさん以外は移動していった。
「所でレイ、まだ皆が誰の使徒かとハクソンとダグラスとユナはまだ本名はも教えておらんだろ?」
「そうですね」
「もう行ってしまって面倒だから、妾の方から全て伝えよう」
おお、ありがたい、ついにユナさんのラストネームが明らかに。
「順に言っていくかの
傲慢王魔ヴァイス・ルシファー様の使徒ダグラス・ルシファー・パライバル
武天神ライズ・インドラ様の使徒ハクソン・インドラ・アゲート
憤怒王魔バイロ・サタン様の使徒シュティレ・サタン・ヘリオドール
強欲王魔オルカ・マモン様の使徒ネフィラ・マモン・ユークレース
魔法天神マジハ・オーディン様の使徒ユーティリナ・オーディン・ルクシリア
技巧天神トラム・ロキ様の使徒カルー・ロキ・トリフェーン
して妾が創造天神アルカ・ヴィシュヌ様の使徒ローズ・ヴィシュヌ・アズライトじゃ、まあミドルネームは王族と使徒にしかのうて、普段は使わぬが一応じゃ」
ん~この間リュミス様に教えてもらったけど、ステータスにしっかりミドルネーム入ってたわ、全然気づかんかった、まあ試練終んないと正式じゃなかったみたいだから別に良かったらしいけど。
つまり今の俺の名前はレイナイト・タナトス・カラーレスとなっている、だから何だって話だけどな。
そんなことよりユナさんのラストネームはルクシリアか、つまりは高貴な血筋ってこと?後で訊こう、流石にそこまでローズさんに訊くのは違う気がするからな。
後さ、天神のラストネーム、神話結構混ざってるぽいな、王魔は七つの大罪の悪魔に揃ってるっぽいのに。
「それじゃ、何処から案内してくれるんですか?」
「その前にレイが此処で行った部屋を教えてくれんかのう?」
「はい、確かこの広間、そこのキッチンていうか調理室、風呂場、訓練場、自室とユナさんの部屋くらいですかね」
「作業系統の部屋にはまだ行っておらぬということか、ではそちらから行くのじゃ」
「はい」
歩いているローズさんの後ろに付いて行く、気付いたのだが今日のローズさん何時ものファンタジーくノ一みたいな服じゃないな。
したはゆったりとしたズボン確かガウチョだったっけ、で上は黒のシースルーで中に紫系統の肌着を着てる、これは何時もと違って良いね、あの服色々と際どいから。
「レイ、ここは治療室、名前のまま怪我の治療とかをする部屋じゃ、主に使うのは妾かカルーくらいじゃな」
「ほ~手術室みたいですね」
ローズさんの開けた扉から中を覗いてみたが、所々元の世界に無かった物もあるが基本的にはドラマで見る感じの手術室だった。
でも回復魔法あるのに必要なのかな、コレ?
「回復魔法で治せるものにも限度があるのじゃ。例えば技量の足りない者では体内部まで魔法を伝えることができなかったり、傷ではなく病の範囲ならば回復魔法では意味が無い。それに回復魔法は強制的に治すのみで腕に剣などが刺さったままでもそのまま治してしまったり、体が曲がった状態のまま掛ければそれが本来の形となってしまう。まあそこら辺は技量やイメージによって変わるが回復魔法とはあまり単純なものでは無いのじゃ」
「なるほど、ありがとうございます」
「別にいいのじゃ、ユナから習ったのは支援と攻撃系だけだと思ったからの、伝えた方が良いとおもっただけじゃよ、では次の部屋に行くぞえ」
「はい」
もっと詳しいことはカルーさんに訊くとしよう、あの人回復の専門家だし。
自分から訊くの、大事。
「次はここじゃ」
「いや何で室内に作ったんですかコレ?」
「この栽培室で育てられているものはどれも入手困難、栽培困難の貴重ばかりでな、庭では色々と危ないかと思い内部に育てるようにこの部屋は造られたのじゃ」
「いやこの此処の警備阿保みたいに厳重じゃないですか、侵入者対策の罠の数が五桁を超えるとかどんな要塞ですか」
これはユナさんに聞いたのだが此処には五桁以上の数、あらゆる方面に侵入・防犯対策がされておりその一つ一つがSランクでも身動きを取れ無くしたり、一撃で殺すことが出来るほど強力らしい、正に屋敷の形をした要塞である。
「元々そこまで多くなかったらしいが、極昌の冒険者達が代替わりするごとに増えて行って今のようになったようじゃぞ、というかここまで増やしたのは妾達じゃしな、妾達の前の代には五千くらいしかなかったからの」
「いや、増やし過ぎでは?」
「楽しかったからついのぉ」
「………」
楽しかったからて…考えるの止めよう。
気にするのを止めて栽培室を見回す、この部屋この屋敷の端の方にあって他の部屋より大きい。
さっきの手術室が一クラスくらいだが、此処は三クラス分くらいある、まあ植物を育てるんだから場所は沢山必要だし納得か。
「具体的に何あるんですか?」
「知らん、此処を管理しとるのはユナとネフィラだからのぉ」
「それで良いんですか…」
「良いのじゃ、何言っても出てくるからのぉ、多分無い物の方が少ないわ」
「これも後で訊こ…」
自分から訊くの、大事。
普通に気になるしね。
「次行きましょう」
「次は錬金室か、多分ダグラスとネフィラがいる筈じゃ」
「ダグラスさんとネフィラさんは錬金をするんですか?」
「ダグラスはネフィラの手伝いじゃよ」
「ん?」
お二人には何か関係があるのかな?興味があるとかでなく、手伝う理由がそこに在る気がするだけだ。
まあ、訊けばわかるけど。
「失礼しまっ「待つのっ」すっ!?」バリッ
扉を開けた瞬間、隙間から青い矢が飛び出してきた。
それを当たるギリギリで回避する、矢は屋敷の壁に当たると霧散した、やっぱ特殊な素材で出来てんだな。
壁を見ていると錬金室の扉が開き、ネフィラさんが現れた。
「ん?レイっすか、しっかりノックするっすよ?間違えて撃っちゃうかもしれないっすから」
「……ん、まあ、はい…」
撃った後に言わない頂きたいのですがぁ?
「レイに錬金室を見せたいからの、失礼するぞ」
「いいですよ、どうぞ」
あ、ダグラスさんもしっかり居た。
言われた通り部屋に入る、お~
「錬金室というものの基準が分かりませんけど凄い方なんですか?」
「ああ、と言っても右にある陣と左にある机が特殊なこと以外はそんなに変わらないと思うけどね」
広さは手術室と同じ、四方の壁際に色々な鉱石や金属の入った棚が並んでいて所々に取り出した物を置く用であろう机があった。
そして多分この部屋が錬金室たる理由のである物が二つを確認する。
右にある、ていうか描かれている如何にもな魔法陣っぽいやつ、左にある恐らく銀?で作られているであろう装飾などが全く施されていない机。
どんな風に使うんだろ。
「そもそも錬金術って何ですか?今一解ってないんですけど」
「金属に限らず様々な物質、生物の肉体や魂も対象としてそれらをより完全なものに錬成する術、のことだよ」
「ん~過程は想像できませんけど、何をするものなのかは分かりました」
「ちょっとだけ見せてあげてるっす、まだ他の部屋もあるっぽいっすし素早くするっす」
「準備は丁度出来てるしね」
気になっていたので有難い、どこぞの鋼の人みたいに出来るんだろうか?流石にそんなこと無いか………規格外のうちなら出来そうな気もするな。
「この机で対象となる物を魔力で包む、まあこの作業は術の成功率を上げる為だからやらなくても良いけどね」
「じゃあこの机のが特殊ってどういうことですか?」
「これ、何で出来てると思うっすか?レイ」
「銀だと思いますけど…」
「これが違うのじゃよ、ミスリルで出来とるのじゃ」
「……うちが言いたかったっす」
ミスリル…ファンタジー金属来ました!ん~でも見た目じゃ銀と判別でき無くね?
よく見れば違うのかもしれんし、分析系統のスキルで判るか。
「見た目じゃ判らないけど魔力を少し流すと、ホラ」
「お~青緑っぽい感じの色で光ってますね~」
「ミスリルの特徴は強度と魔力伝導率が両方とも高いとこっすね、値段も張るっす」
「そこら辺も後で確認しときますか」
「で、これで魔力で包むのは完了だね、魔力を浸透させた方が更に成功率は上がるんだけどそれだと出来るものが別物になるから今回はやらないよ、はいネフィラ」
「じゃあ、この話しながら魔力で包んだミスリルのインゴットをこっちの陣の置くっす」
いつの間に……
青緑色に発効するミスリルのインゴットを部屋の右側にある陣の中心に置いた。
こっちは何処が特殊なんだろ?唯のデカい陣にしか見えないけどな。
「この錬金陣が他と変わっている処はその陣の重ね具合、大きさだね、大きい程成功率や魔力の調節がしやすくなるよ」
「普通のとこは五重、良いと八重、だけどこれは十五重っす」
「先行き過ぎでしょ」
「これはユナとカルーさん共同で改造したのじゃ、EXSを使えばもっと出来るが形として残ると面倒だと抑えたらしいの~」
「これで抑えてんすか……」
まあ、気にしないようにしよ。
ん!始めるっぽいな、ワクワク。
「ここからは流す魔力の属性、量、濃度とその他諸々によって完成する物が変わるよ、失敗もあるけどね」
「失敗するとどうなるんです?」
「爆発するのじゃ」
「へぇ~そういうもんなんすか」
ネフィラさんが錬金陣の前にしゃがみ、陣に触れるとバチッと音が鳴り。
インゴットが赤くなって青い電っ!?
「『死ね』っ!!………………失敗したんですか?」
「……レイ、気付いておるのじゃろう?」
「…いや~何のことだ、サッパリですね」
「目が泳いでるよ、レイ君」
ヨクワカリマセン………やっべぇ。
急に電気的なの飛んできたから思わず《死》使っちまった。
多分指定が甘かったせいで錬金術に使われてたさっきのミスリルまで殺したな。
「…レイ三割くらい魔力持ってかれたんすけど?」
「ん~申し訳ないとしか言いようがありませんね、寧ろ腕を持っていかれ無かったことを喜ぶべきかと思います」
「へぇ~レイにはちょっとお仕置きが必要みたいっすね」
「ッ!?すいませんでしたっ!!!今後は無いように気を付けますっ!!!」
これは不味い、心臓を掴まれているかのような感覚だ。
こういう時はしっかりと誠意を籠めて謝るのが一番だよ、誤魔化しちゃ駄目。
「まあ、良いっすよこれくらいなら無くなっても問題無いっすし」
「僕も先に伝えておくべきだったよ、ごめんねレイ君」
「いや、俺が悪かったです」
「ほぼ反射みたいなものだったしのう、仕方ない錬金術はまた今度見せてもらうがいいのじゃ、次に行くぞえ」
「はい、すみませんでした、ダグラスさん、ネフィラさん、また後で」
「次は気を付けるっすよ~」
「また夕食の時にね」
お二人に再度謝罪をし、ローズさんに付いて行く。
うん、次からしっかり気を付けよう。
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