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二つ名と呼び出し



モグモグ


「ん~美味しいですねぇ~」


「喜んでもらえている様で何よりだ」


 俺は今厚さ2㎝くらいあるふっかふかのパンケーキを食べていた。

 バターと蜂蜜だけがかかったシンプルなパンケーキだ。

 美味ぃ~シンプルなのが又いい。

 こういう雰囲気で食べるのが丁度いいですねぇ。


「帰ったらローズさんに作ってあげますかね」


 ローズさんはこの前の一週間で「何か作って欲しいのじゃ」とそこそこの回数言ってきた。

 その度にお菓子やら夜食やらを作ってあげたのだ。

 ちょっと面倒なので断ったりしたのだが「頼むぅ」と喋り方はあれだが見た目は美少女なので断り切れずに作った所、それは美味しそうに食べてくれるのでなんだかんだ毎回作ってしまった。

 甘い物はあまり作っていなかったので今度作る時はパンケーキにすることにする。

 

「ベリーナさんはよく来るんですか?ここ」


「そうだな、私はここを中心としているだけで他の都市や迷宮にも向かうが帰ってきたら必ず来るぞ」


「ふむふむ」


 確かにこれはまた来たら食べたいな。

 ん~何か話のネタは無いものか?

 ……気になることを訊くか。


「今回の大氾濫(スタンピード)のことって既に他国へと伝わってるんですか?」


「ああ、ギルド支部同士で通信できる魔道具があり、それを使い他国へと情報を回すのだ」


「そんなものあるんですか、じゃ国同士で簡単に情報交換も可能ってことですか?」


「基本的にはそうだ、だが知られると混乱が巻き起こる可能性があるものは月に一度ロードライトの極総王会義堂で行われる総王会で王同士が直接情報を交換するらしいな」


「ん~月に一度ですか、それだと場所によってはずっと国とロードライトを行き来することになりません?」


「本来ならそうなるが、何でも各国の王家に一つ転移の魔道具があるらしくそれで行き来しているから問題は無いらしいぞ」


 ふ~んそんなものがねぇ。

 転移の魔道具、そいつが各国に一つずつで全部で六つか。

 俺は確かに普通に転移を使うが本来転移はこんな簡単に使えるものじゃない、時空計があり得ない程の補助をしてくれているお陰で扱うことが出来ている。

 転移はスキルでも魔法でも何十年何百年の修行や訓練を経てようやく使えるもので、適性や才能が無ければスタートラインにすら立てなく努力では補うことが不可能ってユナさんに聞いた。

 そして魔道具製作は更に知識を深めた上で超繊細な魔力操作がらしい。

 つまり転移の魔道具なんて常人には到底制作不可能な物を六個も作っているってことは製作者はよっぽどの化け物、又は生物の領域を超えているに違いない。

 会ってみたいな。


「世界は広いですね」


「ふっ、そうだな私達が見ているのはほんの一部さ」


 まあ、まだこの世界に来て二週間も経ってないで何言ってんだって話だけどな。

 そういえば、ちょっとリュミス様に聞いた話についても訊いてみよう。


「ベリーナさん、高ランクの冒険者には二つ名が付くことがあるらしいですけどベリーナさんにはあるんですか?」


「ん?ああ、私にもあるぞ、私の二つ名は『嵐雷の乙女(ストーム・メイデン)』だ」


「嵐雷の乙女……」


 確かにあの武器と戦い方なら納得だな、めっちゃピッタリだわ。


「二つ名というならレイ殿にもあるぞ」


「……ハアッ!?いや可笑しい!!俺はまだ冒険者として活動したのはここが初めてだ!なのに何であんだよ!?」


「まあまあ、少し落ち着いてはどうだ?」


「これっ……すみません、ちょっと取り乱しました」


「いいさ」


 いやでも可笑しくない?二つ名がつく程活動した気無いんだけど。


(いや、見えるとこで派手にやってたよ?)


 え?そんなタイミング…タイ…ミング……


「まさか、昨日の戦いで?」


「その通りだ、昨日の大氾濫(スタンピード)は実際の所発生した午前中に終結という記録的な速度で殲滅された、その原因であるレイ殿の話は半日で王都中に広がり出来上がったのさ」


「えぇ~」


 半日でねぇ。

 いや、別に嫌じゃ無いのだが何かこうモヤっとするというか。


「で、俺のはどんなのなんですか?」


「レイ殿のは『黒の断頭台(セイブル・ギロチン)』というものだ」


「なるほど~ギロチンかぁ~」


「あの攻撃と見た目にピッタリだな、レイ殿」


「……そっすね」


 ん~否定できない、でもギロチンわさ聞いた人にヤバい奴だと思われないか?

 いやもう広がってるらしいから修正不可なんだけどな。

 後思ったのはナユタ達にバレたら絶対に揶揄われる、くぅ~変えてぇ~でも出来ねぇ~。


「はぁ~くっそぉ~首ばっか狙わなきゃよかったわ」


「まあ、そう気落ちするな、私は良いと思うぞかっこよくて」


「ありがとございまぁ~」


 切り替えてパンケーキでも食べとこ。

 ああ~優しい甘さが沁みるなぁ。


「あ、そういえばベリーナさん」


「ん?何だ?」


「俺、明日には神盟友好都市ロードライトに戻ります、この一週間色々ありがとうございました」


「なに、私はそれ程多くのことをしてはいないさ」


「まあ、一応ですよ(笑)」


「そこは否定してくれないのか」


 口では言わないがベリーナさんが居ないと色々と面倒なことになってたかもしれないし、しっかり感謝している。

 情報とかくれたり、こうして美味しいお店教えてくれたりもね。


「昨日の戦いは凄く助かりましたよ、一人だったら苦労しました」


「一人では出来ないと言わない所が流石レイ殿だな」


「まあ、そうですから」


 一応切り札は準備していた、が使用するは不確定要素が多すぎて不安だったからな。

 本当に助かった。


「それにしても、昨日の今日で結構人居ますよね、これが普通なんですか?」


「ああ、他の都市でも見たことがあるが何処も翌日に活発に活動しだすのさ、国の信頼と信用が可能にしているんだろうな」


「じゃあ、あの騎士達もその一つってことですか?」


「そっん?騎士は今外壁の警戒の為に基本的には内部にあまり居ない筈だが?」


「でも何か一直線で来てません?」


 パンケーキを食べながら本通りを見ていると昨日見た鎧を着た集団がこちらへ向かって来ていた。

 途轍もない厄介事の予感がするな。

 ……ん?あの集団の後ろに騎士より少し軽装の男が居た。

 アイツ強いな、それにまるで関係ないように見せているが奴もあの騎士達の連れ、いや親玉かな。

 ちょっと観察している間にもう騎士達はこの店へ着いた。


「済まない、失礼する」


 そう言い、恐らくこの集団の代表っぽい騎士の女が来た、こいつら昨日のゴミ騎士より洗練されてんな平均的に強い、それに男女が混合してるし全部で十人くらいか。


「貴殿が黒の断頭台、レイナイト・カラーレス殿か?」


「だったら何です?」


「貴殿を王が呼ばれている、同行して頂く」


「断ったら?」


「済まないが返答は訊いていない、既に決まっていることだ」


 なるほど、そういうタイプか。

 昨日居ないことからこういうのは応じないと予測できないのだろうか。

 ま、実力行使で来るならこっちもそう返すがな。


「《音捕食(エッセントーン)》,《次元襲歩(ディメンスクリール)》,ナックル、麻痺(パラライズ)


「なっ!?何処にっ!?」


「後ろだ、馬鹿共」ガッ!


 音を喰らい、気配を消してから騎士共の後ろに転移し一番近かった男女の騎士を黒白(ノワール・ブラン)で殴りつける。

 あばら骨が折れるくらいの力に抑えておく、まあ麻痺の命令(コード)があるから本来触れるだけでいいんだけどね。

 そのまま流れるように他の騎士が剣を抜く前に殴り行動を不能にする。


「不意打ちとは卑怯だな」


「はぁ~やっぱ馬鹿だな、戦場では卑怯も糞もねぇんだよ。負けた奴にものを言う権利は無い」


「そうか…だが私は他の騎士と――」


ガッ ドンッ


「戦闘中に無警戒で相手に話す奴はさっきの騎士達よりも雑魚だな」


 暢気に喋っていた女の顔面を掴み床へと叩きつける。

 まだ生きているだろう、調節したし。

 そして女の頭を踏みつけながら、他の騎士にも伝わるように言う。


「俺と話がしたいならグラント王自ら来させろ、尤も対応するかは別だがな」


 これで良いか、騎士は片付けたし、今見てるさっきの男にも言っておくか。


「後そこの男、隠したって無駄だ何かあんなら直接来い」


「………バレていたか、ならばそうしよう」


「あんたはこいつらと同じ奴らか?」


「確かにある意味では同じと言っても良いが、俺の役目はこいつらを連れて帰ることだ、貴殿と戦うつもりは無い」


「同じってことは、騎士ではあんのか、けど言われた命令が違うと」


「ああ、この騎士達も俺も王から命令で来ているがこの者達は最近新しく王創騎士団の精鋭となったのだが色々と天狗になっていたのだ」


「まあ、態度から解ったけどな」


「そこで王は強者をぶつけて圧倒的実力差で負けさせることにしたのだ、そしてそこにタイミング良く表れた貴殿に充てることにしたのだ」


「………」


 要は王の計画に巻き込まれたということだな。

 全くやめて欲しいものだ。


「もちろんもしもの危険と回収用に俺が来ていたし、貴殿には怪我をさせないようにと王から厳命された為本当に危険な場合は仲裁に入る予定だった」


「なるほどねぇ、で俺はグラント王に会わなきゃ駄目なのか?」


「いや、王も昨日の貴殿の行動とベリーナ殿の話から来てもらうことは難しいだろうと判断した。結果貴殿の活動場所であるロードライトのギルド総本部経由で此度の大氾濫の報酬金を贈らせて頂くことにした、戻ってから確認してくれ」


「ほう、そいつはありがたい、王にも感謝伝えといてくれ」


「了解した、では此度は済まなかった、そして感謝する」


「別に気にすんな」


 男が騎士達を縄で繋ぎ引っ張っていった、ああやって持って帰るんだ。

 ……あっヤベッ店の床に穴開けちった。

 はぁ~修理費会計の時出しとこ。


「全く、困ったものです、食べ終わりましたし今日はもう帰りましょう、ベリーナさん」


「…そうだな、やるだろうとは思っていたがまさか本当にやるとはな」


「何の事ですか?」


「基本は騎士団にあのような態度をとる者はあまり居ないというだけだ」


「そういことで、ま、誰だろうと俺はそのまま返すだけですけどね」


「いや、手を出される前に殴っていたと思うのだが?」


「結局遅いか早いかだけですよ、だからいい」


「ふむ、いいか、会計に行こう」


「はい」


 店内へと歩いていくベリーナさんに付いて行く。

 ん~と白金貨でいいか。


「会計を頼む」


「畏まりました」


「これで全てな筈だ確認を頼む」


「はい……はい丁度ですね」


「あの、すみません、こちらを」


「こっこの白金貨は!?」


「あっすみません、さっき床に穴開けちゃってその修理費ですね」


「これは多いですよ?」


「迷惑料とかも込みなんでいいです、後細かくするの面倒なので、じゃ、行きましょうベリーナさん」


「ああ、そうだな」


「ありがとうございます、またのお越しをお待ちしております」


 店を出る。

 面倒事は起きたがパンケーキはとても美味しかったからまたアルカディアに来た時は寄ろう。

 

「ちょっと気になることが出来たので、今日はもう止めにしてもいいですか?」


「そうか、では、気を付けるんだぞ」


「分かってますよ、そっちこそ気を付けて」


 そう言い残し俺は風波へと戻る為、足を進めた。



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