VS呪屍王 前
「目立つ恰好しやがって、腹立つな」
「そう言うな、想像異常に化け物だぞ」
「ああ、解ってるって、だからベリーナ。周りの奴らの殲滅は任せたぞ、一体も近付けんじゃねえ」
「了解だ、今回はその方が良さそうだ」
「後ベリーナも近付きすぎんなよ?勝手に巻き込まれても責任は取んねぇかんな」
「分かった、だが出来るだけのサポートはしよう」
「あんがと、じゃ、行くぞ!」
言葉ともに呪屍王との距離を詰める。
取り敢えず真正面から斬りつける。
「ハッ!チッ傷なしとかふざけてんだろ!」
『ふざけてなどおらぬよ、貴様の力が足りなかっただけのことだ』
「うっせぇ!……え?…え?お前喋れんの?」
『如何にも、ハッキリとした意識が我には存在する』
「へぇ~なるほど、まっ、だからといって何か変わることは無ぇな」
『如何にも、我らは唯殺し合うのみよ』
「そうだ!大太刀、結合、《暴食浸透》,《死・武装集束》,戦壊無刃流用、極撃限定発動」
驚きこそすれど、やることは何一つ変わらない。
負ける気は一切ない。
最初から飛ばしていくぜ!
「《歴然たる終幕》ッ!」
『ほう、中々だ、しかし』
「はあっ!?馬鹿げてんな、クソがよ」
『そこまでだ、だが初撃と比べたら雲泥の差だったぞ』
「チッ、うぜぇ」
歴然たる終幕は呪屍王の強めの一撃に簡単に防がれた。
ヤバ過ぎる、来るのが遅すぎたな、然も現在進行形でも強化され続けてる。
けど、諦めるには早すぎる、まだ勝機はある。
「全方位から隙間なく貫け!」
『数で来るか、この程度いくら集まっても同じだ』
「それはどうかねぇ」
『何?』
武器主で武器に命令を出し、攻撃する。
唯暴食を纏わせた程度じゃ傷すらつけられないことは既に解っている。
だから、この数の武器がある時しか使えない無茶な攻撃をする。
「《極撃・限壊充填》,《死・武装集束》ッ!これでいけんだろ」
『これは、しまっ!?ぐっ!』
先ほどまでとは違う、吸い込まれるような黒に染まった武器が崩壊しながら、呪屍王に突撃し爆発を起こす。
限壊充填は極撃で武器が崩壊するまで力を籠めることで威力を引き出すものだ。
普段、黒白を使ってるから忘れがちだが、極撃は力を籠めすぎると体や武器自体が崩壊し始めてしまう。
その崩壊する瞬間が最も力が高まり、その武器の最高の威力を引き出す。
当然武器は壊れるけどな、けどこの大量の武器がある状態なら壊れるのを心配せず使える。
それにしても、頭が痛ぇ、この数に《死》を使うのはやっぱ無理があったか。
止めて奴を見よう。
「攻撃止め、黒纏以外解除、っはぁ!きっつコレ、頭がガンガンする」
少し落ち着き、警戒しながら近付く。
「流石に無傷は無いだろうが、どうっ!?そんな簡単なわけねぇか」
『よく避けた、そして先程の攻撃かなり危なかったぞ?』
「とか言いながら、そんな傷が増えた気がしねぇけどな」
『我は貴様を侮っていたようだ、このグラムの力を使わせられるとは思ってもいなかった』
「グラムねぇ……厄介な能力がありそうだな」
グラムは確か北欧神話の剣だったか?意味は怒りだった筈。
元は色々あった筈だけど、オーディンが木に差したとか何とか。
どうだったにせよ、唯の剣じゃないのは確かだ。
面倒くせぇ、気にすることが増えた。
『そろそろ私の方からも行かせてもらおう』
「速ッ!けど、受け流す!」
『流石だ、が、まだ終わりではない』
「ぐっ、この馬鹿力がっ!」
グラムの一撃を上手く受け流したが、直ぐに二撃目が来た。
早すぎる、あの逸らし方なら距離を取る時間くらいあると思ったんだがな。
そして一撃が重すぎる、ん?何かヒビが入って、まさかっ!
「《次元襲歩》ッ!あっぶな!」
後方へと転移した瞬間、俺が先程まで居た空間が爆ぜた。
あのヒビ、武器じゃなくて空間に入っていた。
戦壊無刃の空間破壊みたいな感じで、つまりはグラムの力は破壊系統ってことになる。
「クソ厄介だ」
自分でも言うのは何だが破壊系の能力はウザすぎる。
効果範囲が予測できない上に一撃一撃全てが致命傷になる可能性があるからだ。
警戒していると土煙の奥から斬撃が飛んでくる。
「これなら、がっ!?」
『油断のし過ぎだ」
斬撃を回避したと思ったら、突如後ろに現れた呪屍王に体をぶった斬られた。
「あがぁ―――――
『ん?可笑しいな、確実に両断したと思ったのだが?』
綺麗に両断されたわ、クソがッ!
それが当然のように死んだ判定になって代償で元に戻っただけだわ!
痛すぎる、体を強引に捻じ斬られた痛みがこれか、もうこれ以上動きたくない。
けど、そんなことは言ってらんねぇ、だから。
「『死ね』…荒治療だがいけるな」
『ほう、立ち上がるか』
「負けらんないんでねぇ!」
『どういう原理かは解らないが死ぬまで攻撃すれば、死ぬだろう』
「脳筋スタイルかよ」
《死》で痛みを殺し体を起こす。
俺の死の損失には上限がある、けどもう戻れねぇくらい溜まってるからそこは気にしなくていい。
問題は痛みの方、今は耐えれたが俺が耐え切れなくなって意識を失ったら、この戦い確実に負ける。
それだけは絶対に避ける。
『集え、呪いよ』
「キモッ!!」
『貴様はこれを避け切れるか?』
「チッ、数が多い、杖!」
呪屍王が死肉の塊のような気持ち悪い球体を空中に無数に出現させた。
それがかなりの勢いで迫ってくる、追尾機能付きかよ!
極撃で回避しながら、黒白に魔力を流す。
前も使ったけど、この状況ならこれが一番だろ。
「火災旋風、はいオッケ、ハンマー!」
キモイ球体は炎の竜巻に飲み込まれて消えていった。
次は何をするかだが、近接ではなく遠距離で攻める。
なら何故ハンマーかだって?こうすんだよ!
「《死滅の球体》ッ!スマッシュ!」
『何だ?この球は?グォッ!』
「…成功だな、これで攻めるか」
死滅の球体は普通に結構な動かせる、けどそれは俺の周囲での話。
近くなら特に問題ないが、遠くだと力を保てないのか破裂しちまう。
けどその破裂する瞬間は馬鹿げた威力を出す、だから一気に飛ばしぶつけてダメージを与える。
何か壊れたりする感じのは全体的に威力が高まるみたいだ。
『グギャアーーーーーー!!!』
「いやさっきと雰囲気が全然違うな、それと右腕を吹き飛ばせたか」
『貴様ァ!!呪い殺しテやるゥ!!』
「うわ、治った、それにそっちの方が本当の感じなのな」
『逃がすっモノカ、全員ミナゴロシダァ!!』
「魔物感が爆発しとる、ま、いい、一発で終わりじゃねぇぞ」
死滅の球体を黒白でぶん殴って飛ばし、補充をしてまた飛ばす。
そうして呪屍王へと連続で死滅の球体をぶつけ続ける。
断末魔がデカすぎる、耳栓欲しい。
ん?声が聞こえなくなった、死んだか?
「これで終わりだと嬉しいがっ!?」
『マダダァ、マダ終ッテワナラナイィ!!』グラッ
「おいっ!マズッ、大剣!『武器主』!っと危なかった」
煙から姿を現した呪屍王が地面にグラムを突き刺した瞬間に地面が振動し、辺り一帯が崩壊し始めた。
即座に黒白を大剣に変え、武器主で浮かせて巻き込まれないように空中へと退避する。
ヤッバいな、巻き込まれてたら確死だったな。
すると突如として強風が吹き、土煙を飛ばす。
「雑なクレーターみたいだなっと、回避回避」
視界が晴れたことで呪屍王がグラムで斬撃を連続放ってくる。
数多いな、ま、この距離なら時間あるから回避簡単だけど。
『集イシ呪イヨ、侵蝕シ拘束セヨ!』
「多いっ、上に速い!」
呪屍王が何かを唱えるとクレーターから、何処かで見たことことある触手が出て来た。
というかあれ、奈落穴に引きずり込んでくる奴じゃない?
それが物凄い勢いで俺に迫ってくる。
「取り敢えず、逃げるか」
『逃ガサヌ!!』
「はぁっ!?まだ増えんのかよ!」
これ以上増えたら徐々に道を塞がれていっちまう…迎撃するか。
腰から戦壊無刃を引き抜き構える、固定の命令は既に準備した。
空中だが、やるっきゃねぇ!
「飛撃・五連・空間破壊」
身体だけを後ろに向け、戦壊無刃を振るう。
放った五つの斬撃は多くの触手を空間と共に破壊した。
しかし、量が多過ぎて最早、焼け石に水だ。
どうする?この状況は本気でマズすぎる。
すると突然、追いかけて来ていた触手達がバラッバラになり、落ちていく。
「何が起こった?」
「言ったではないか、出来るだけのサポートはすると」
「…ベリーナか、つまりはさっきの」
「私だな、流石にあの量は対応しきれないと判断したのでな、迷惑だったか?」
「いや、助かった」
マジでさっきはヤバかった。
来てくれなかったら俺はあのまま飲み込まれ、何度も死んでいただろう。
最初っから頼めばよかったわ。
「では、ここからは私も協力しよう、あちらはもう他のSランクが対応しているのでな」
「他にもSランクいたのか、確認しとくべきだったわ」
「まあ、それは今いい、ではどう攻める?軽く見ていた限り厄介な能力ばかりだったが」
「ああ、どれも一撃が重すぎて被害を抑えるのにしっかり対応しなくちゃいけねぇから攻撃の後に攻め切ることが出来ねぇ。つまりは単純に手数が足りん」
「その手数を私が補えばいいと、そういうことだな?」
「その通り、ベリーナには先に削ってもらいたい。殺し切るのは俺がやる」
この順じゃないと多分あいつを殺せない、直感的に普通に攻撃するだけじゃ殺せないのが解るんだ。
多分、唯の攻撃じゃ呪いによる復活とか強化があるはずだ、配下に効果があるなら奴自身にも効果がある可能性があるからな。
「順番には意味があるのか?」
「ある、理由はベリーナの剣じゃあの鎧を叩き斬れないから」
「まあ、確かに私の剣では無理か、他にもあるのだろうけど今は訊かないことにするよ」
「じゃ、やんぞ、このままっ!留まってると今みたいにっ!攻撃来るからな」
飛んでくる球体を回避しながら、ベリーナにそう言い残し俺は移動を開始する。
さて、どうする。
やっぱ意識外から天王技で決めるしかないか。
魔力が今半分くらいなんだよな、これでもさっきバラバラの触手を捕食しておいたおかげでそこそこ回復した方だ。
でもこれだけあれば,《次元襲歩》も《時間加速》も使える。
けどタイミングは気を付けるか、失敗すると次無いかもだし。
それでは、さっさと勝つとするか!
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