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後か先かの話だからなぁ?



(今回は前情報無しだとレイでもきついと思うよ、ユナちゃん達は結界で助けに来れないしね)


 別に結界くらい何とかしそうだが?

 まあ、今はいいか、で超越個体とかいう明らかに強そうな奴は一体どんなのなんですか?


(超越個体っていうのは言わば王位個体の特異個体、多くの戦闘と進化を重ねた王位個体がさらなる経験を経て次元を超えた力を得た個体の事をいう)


 簡単に言えば、なまら強いということですね?


(そういうこと、そして今回の大氾濫の原因になった個体の名前は呪屍王(カースデット・キング)っていうよ)


 名前あるんですね。


(超越個体になると自動的に付くようになってるのさ)


 そういう感じか、で何か能力あるんでしょう?無能力で強くなるには限界がありますし、恐らく張ってある結界がその一つですね?


(正解、呪屍王の能力は全部で三つ、その一つが『冥呪領域(カース・テリトリ)』結界を張りその中を領域として生物の出入りを制限、同時に領域内の全ての魔物を支配下に置く)


 行動の制限と配下を増やすのか、これは既に対策のしようが無いな。


(二つ目は『死の越えて(オーバーデット)』支配下の魔物の常時強化、そして配下が死んだ時に確率で強化と復活をするようにする能力だね)


 これも倒さなきゃ駄目だから防ぎようがないし、殺したと思って油断していると攻撃されるのが厄介だな。


(最後が『呪屍(カースデット)』超越個体には必ず自身の名前を冠した能力があるけど、呪屍王の場合はこれがそうだね、内容は配下死亡時に自身を強化、支配下のものに強力な呪いを付与出来るようになる)


 呪いってどんなのですか?


(傷を治せなくしたり、力を暴走させるのだったり、体の爆弾化だったり、ぶっちゃけ何でもありだね)


 一番厄介だ、支配下のものだけしか出来ないみたいだが、配下の武器全てに呪いを付けられたり、黒竜などを俺達のところで暴走させらりしたら最悪だ。

 それに爆弾化、つまりは配下に特攻させることができる、然もそれでも『死の越えて』が発動する可能性があるし、呪屍王自体も強化される。

 呪いは受けてみるまでどんな効果があるか分からないから、対応が難しい。

 『呪屍』がヤバすぎる、他の二つだけならまだ簡単なんだけどな。


(まあ、呪いも《(モルス)》で殺せるし集中してさっさと殺すのがいいね)


 でしょうね、時間が経てば経つほど不利になる可能性がある。


「レイ殿、そろそろ着くぞ」


「ん?ああ、そうですかあの人の溜まってるとこですね」


 俺はベリーナさんと共に大氾濫を迎え撃つという場所に一時間ほど歩いて来た。

 そこには簡易的な治療場のようなテントや何か本部っぽいテントを中心に騎士や冒険者がかなりの数、集まっていた。


「最前線拠点ってとこですか、よくここまで準備出来ましたね」


「王が直接動いているらしいからな、それは早いだろう」


「王が直接?大丈夫なんですか最前線に来て、死んだら困りますよ?」


 正気の沙汰じゃない、まあ、出なくて負けたら結局死ぬのだが。


「いや、心配要らない、今代の王は強さで有名だからな、それに玉座に座って待っていられるような人では無いのだよ」


「それでも勝ったのに死んでしまったらこの国どうするんです?」


「それも心配ないと王は言っている、王子が優秀だから己など居なくても国は進むとな」


「大胆な人ですねぇ~」


 仮に本当でも王が言う言葉ではないな。

 けど、そういう奴は嫌いじゃない、良い王様みたいだな。


「レイ殿、あちらの遠くに魔物の大群が見えるぞ」


「もうあそこですか、開戦の時は近いですね」


 正直面倒だが、ユナさん達極昌の冒険者達(クォーツァイズ)が来れないなら俺が対応しなければ、この国滅びそうだし、頑張りますか。

 後で報奨金とかも出るらしいから、それでスイーツをたんまり食べよう。


(なるほどねぇ、じゃあ今回のご褒美に僕の方でもエクレアを準備しておこうか?)


 いいんですか!?出来るならお願いします!


(いいよ、何気にしっかりご褒美出して無かったからね)


 マジですかぁ!ちょっと本気で頑張りますね!

 

(現金だなぁ、けど頑張ってくれるならいいや、油断しないようにね)


 現金で結構です、報酬無しで面倒なことなんてしたくないですし。

 行動の報酬が有るか無いかでモチベが変わるのは誰しも同じはず。


「緊迫してるというか、全体的に空気がピリピリしてますね」


「皆こんな状況になったことなど無いだろうしな、新人の者などもいるだろうしな、逆にレイ殿が落ち着き過ぎなのだ、前にも経験したことがあるのだろうか?」


「この状況は初めてですね、けど死にかける様な体験は何度もしてます、それに焦っても事態は好転しませんし、無駄なんですよ」


 主に神様と戦った時とか。


「慣れているというか、達観してるというか、けど問題無いようで良かった」


「そういうベリーナさんも特に緊張してる風に見えませんけど?」


「私は前にもこの様な状況には遭ったことがあるからな、伊達にSランクをやっていないよ」


 流石だな、完全な自然体だ。

 まあ、俺はリュミス様から情報を貰ってるのもあるから落ち着けるけど。

 無かったら混乱していたに違いない。

 ……もしもの話なんてするだけ無駄だな。


「あそこに居るお方がこの国の王、グラント・アルカ・ウィリムライド様だ」


「あの人ですか、威厳溢れてますねぇ」


 ベリーナさんが指をさした方には椅子に座り指示を出す、金髪短髪で白銀の鎧を着た覇気を感じさせる男が居た。


「あの人、歳ってどれくらいなんですか?」


「グラント様は今年で50になるはずだ」


「へぇ~」


 見えねぇー!高くて30代後半だと思ったんだけど!

 凄いな、そしてあの人強いな。

 あの人の指揮なら、きっと騎士団は、まあまあ使い物になるだろうな。


「あの大群がここに到着するまで後どれくらいですか?」


「一時間ほどだな、休憩や武器の手入れをしても時間が余るだろう」


「なるほど、休憩しましょうか」


「私もそう言おうと思っていたところだ」


 ベリーナさんと共に人の居ないタープテントまでやってきた。

 

「水要ります?」


「持っているが、ここは頂いておこう」


「ふぅ~ところで今日天気良いですけど、その鎧って熱くないんですか?」


「ああ、この鎧は迷宮から出たもので環境に適応してくれるんだ」


「なるほど、そういうのもあるんですね」


「レイ殿こそ大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ、俺のも同じような物なので」


 全然熱くないんだよなこれ、動きも全く阻害しないし、流石は神様が作ったものだよ。

 

「ベリーナさんはその長剣以外に武器は無いんですか?」


「いや、あるよ、他はストレージの中に入れて置いてこれしか武器が無い様に見せているんだ」


「ん?意味があるんですか?」


「あるさ、そもそもストレージリングやマジックボックスを持っている者というのは限られるからな、私達は当然のように使っているが値は張るし、迷宮でも滅多に出ない、だから剣だけを持っていたら大抵それしか得物が無いと思われる」


「戦闘中はその勘違いを狙い、攻めると」


「そういうことだ、この長剣もよく使うが私本来の得物ではないからな」


「本来のはどんなの何です?」


「それは、戦いの中で教えるさ」


「ここでそう返してきますか~」


 ま、いいか、後で見せてくれるみたいだし。


「レイ殿は手入れなどしなくていいのか?」


「俺のは必要ないので、しませんよ」


「そうか、まあ私も教えてないし戦場で見せ合いと行こうか」


「そうしますか」


 こんな感じで外で休むのも久しぶりだな。

 シンラ達とは結構いろんなとこに行ってたけど、こんな草原は来たこと無かったし、新鮮だ。

 そしてこの戦場なら奇襲も受けにくいし、太陽が綺麗に上ってるから黒竜の影移動も防げるし、結構いい状況だな。

 後はどれだけ騎士団や冒険者共が使えるかどうかで被害が変わるな。


グォオオォーーーーーー!!


「チッ、何処からっ!」


「レイ殿ッ!急ぐぞ!」


「言われなくても分かってんだよ!」


 あれは黒竜の鳴き声だ。

 流石に索敵を切ってるのは油断し過ぎだったか!


 テントを出て、鳴き声の方に向かう。

 何やってやがんだあいつ等ッ!

 黒竜が騎士達の前に降りて攻撃を始めた。


「急いで隊列を組み応戦しろっ!王に近づける出ない!」


「無理です!竜に対して隊列は行動の制限をするだけです!」


「ならば、早く攻撃せよ!口を開く暇があるなら動け!」


 馬鹿なのかあいつら、使えないな。

 黒白(ノワール・ブラン)を長剣に変え、極撃で黒竜との間を一気に詰める。


「貴様っ!我らの邪魔をするな!」


「黙れゴミがっ!《黒薙(くろなぎ)()離断(りだん)》ッ!」


 俺が飛ばした斬撃が黒竜の首に精確に当たり、嘘かのように綺麗に黒竜の首と体が切り離された。

 影移動無しであの倒し方に拘らなかったらこんな簡単に倒せんだな。


「こんな雑魚に何を手間取ってやがる」


「いや、雑魚ではないと私は思うが?」


「あ、来たのかベリーナ、済まん先に倒しちまったわ」


「ん?まあ、いいが」


「これは幸先が不安だぜ、こんな奴等戦場で使いもんになんのか?」


「ん~見たところ若い兵ばかりだ、恐らく新部隊の者達だろう本部隊の方達はこんなのと比較にならないくらい強いから大丈夫だと思うぞ?」


 こいつ等新人なのか、ならあのゴミみたいな戦いも納得だ。

 本隊は違うらしいから少し期待させてもらうか。


「貴様っ!我らの邪魔をし勝手に行動するな!我らだけで倒せたものを!」


「アレでか?竜を前にまともな連携も取れないくせにか?寝言は寝てから言えよ、雑魚が」


「我ら王創騎士団を愚弄する気か!今すぐその首叩き切ってくれるわ!」


 はぁ~底抜けの馬鹿だ、他の騎士も呆れてるし。

 さっさと潰すか。


「幾らでも侮辱してやるよ。後、俺の首を切るだと?お前のような雑魚には到底不可能だよ」


「何をっ!」


「人を殺す気があるなら殺される気だってあんだろうなぁ?お前のような奴はどっちみちこの後死ぬだろうから俺が今殺してやるよ。後か先かの話だから、なぁ?」


「ひっやめっ!」ガキッ!


 俺がゴミの首を黒白で切ろうとしたが横から剣によって止められた。

 

「レイ殿、やめた方が良い、こんなゴミでも一応は騎士団なのだ、後々面倒になると思うぞ」


「チッ、そうかよ、命拾いしたな。行くぞベリーナ」


「分かった、行こう」


 俺は震えるゴミを脳内から消し去る為、先程のテントに向かい歩き出した。

 少し頭を冷やそう。


「すみません、ベリーナさん、手間を掛けさせました」


「別にいいさ、誰しもああいう時はあるものさ」


「ありがとうございます」


 無駄な迷惑を掛けてしまった、後で何か返そう。

 あ~あの黒竜回収しとけば良かったな、ユナさん用に無傷の黒竜は持っているが、竜種自体は売れば金になるからな。


「ところで、その白黒の剣がレイ殿の得物なのか?」


「そうですね、ナイフの方も使いますけど基本はこっちです、別に剣だけじゃない無いですけど」


「剣だけじゃないとは?」


「こういうことですね」


「…何と、凄いな、形が変わっているのか?」


「そうです」


 手に持つ黒白を形態を連続で変化させながらベリーナさんに見せる。


「見たことが無い武器だな、今更気になったのだがレイ殿のジョブは何なのだ?」


武器職(ウェポナー)ですね、俺以外に今は存在しないらしいですけど」


「……なるほど、確かにその武器なら納得か」


 ん?もうそろ時間か、さっきので予定が狂ったな。


「ベリーナさんそろそろ到着時間なんで行きますよ」


「もうそんな時間か、では行こうか」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 馬鹿でかい草原に騎士と冒険者が並び、集まっている。

 視線の先には大量の魔物達が向かってきている。

 

「皆の物、此度の戦いに協力してくれて、誠に感謝する」


 威厳溢れた声でグラント王はそう言う。


「今長く話したところで仕方ないだろう、だから我から言うのはこれのみ」


 そこで王は言葉を止め、息を吸い。


「勝利して、必ずや皆、生き残れ!!!」


うおぉおおーーーーー!!!!!


 周りの奴らが魔物へと向かって行く。

 その中、俺は黒白を杖に変えて、自身の限界まで魔力を流していた。

 これで良しっと、まだ誰も敵と戦ってないな。

 盛大に決めますか。


「《破災の豪雨(ニブラ・スコール)》」



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