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【未完作】盤上遊戯愛好家の異世界言行録  作者: 白亜黒糖
第4章 首狩りと表裏の神
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グーズファミリー



「此処が、カジノ・グージスト……やかましいな」


 目の前に在るのは、よく海外ドラマとかで出て来そうなビカビカのネオンで彩られた馬鹿デカいカジノ。

 眺めているだけで目が悪くなりそうな程光っている。

 馬鹿だ、けどインパクトはある。

 遠目に内部を見た感じは、外とは段違いに上品、正直普通に子連れの貴族が来ていてもおかしくない。

 店員は、男が執事服、女は最近見る頻度が格段に増えたバニーガールの服である。

 異世界はバニーガール好きなようです、はい。

 というか、元の世界でもバニーガールとかそうそう居なくない?俺が見たことが無いだけで意外と普通だったりするのだろうか?

 ま、いいか。


「今日はゲームをしに来てる訳では無いので、気配を消して潜入することにしよう……利用は後日で」


 俺自身、賭け事のような遊戯は大好きである、だから後日確実に利用させてもらう。

 儲けは特に考えない、こういうのは如何に楽しむかが重要なんだよ、金は正直本気出せば幾らでも手に入るしな。


「《隠伏隠密(ハイドアンドシーク)》……さて、行くか」


 気配を完全に殺し、道を歩く。

 カジノの目の前に着き、ガードマンのような大柄の男たちの横を素通りして内部に入る。

 いい雰囲気だ……貴族が多めか?

 客の恰好を見たところ、貴族が多いと分かった、意外にも男と女の割合は半々くらいだ。

 ……いや、女の方は貴族じゃあない?


「…………」


 人にぶつからないように、壁際に移動してから再度客を注視する。

 ふ~む、やっぱりそうだな。

 俺はそれほど多く貴族を見たことがある訳では無い、だが店内に居る女たちは何となく所作や仕草が貴族とは違う。

 女側の全員が貴族じゃないわけじゃ無い、本物も居るがそれは一握りだ。

 逆に男はほぼ全員貴族だな。

 地下街は、表で出来ないことをする場所、故に貴族も多い。

 てことは、そいつら愛人や妾を狙ってるってとこか?

 まあ唯の推測だが、当たらずとも遠からずってとこだろう……ベティアがサラッと言っていたが、そういうこともよくあるらしいしな。


「思惑入り混じる場所、犯罪にも暗躍にも丁度良さそうだな」


 観察はここまで、さっさとネテル・グーズ・ラウリスに会いに行くとしますか。


<そこはしっかり覚えてるんですね>


 いや、屑ファミリーとか、寝てる屑とかネタだし、ただ関連付けて覚える為にやってることだから。

 普通に全部記憶してるぞ、俺を舐めてもらっては困るぜ?


<あ~はい、そうですね>


 何でそう、そっけなくなる?俺少し傷付いたぞ?

 俺の心はガラスなんだぞ、直ぐに砕けてしまうんだぜ?


<本当にそうな人は、自分で言いませんよ、お兄さん>


 まあ、そうだよな。

 俺の心はガラスでも直ぐに再生するから問題無し!


<…………>


 あ、はい、進めます。

 アリスからの無言の圧から逃げた俺は、従業員が一番多く出入りしていた両開き戸の扉を開けて通る。

 こんな堂々と不法侵――ゲフンゲフン、潜入しているのに気付かれないなんて、本当に権能様様だぜ。


<一瞬不法侵――「ああ、ネテル何処かなぁ!!」――はいはい、分かりましたよ。潜入ですね>


 分かればいいんだよ。

 ふざけはここまで、本格的に行動しよう。

 取り敢えず、上に向かう且つ、人の少ない方に向おう、大体偉い奴はそんな感じのとこに居ると思う(偏見)。


「裏側は屋敷みたいだな……窓からの光がネオンでなければいい雰囲気なんだがな」


 枝分かれしているように、横に行く道や扉が多い廊下を歩き続ける。

 階段……あったわ。

 無いなーと思うと、直ぐあった、上に行くか。

 適当にふらふら歩いていたわけではない、恐らく一階にはネテルは居ない。

 と、いうのも歩く廊下の壁などから聞こえる音を言語に直してレンに表示してもらっている。

 解析は出来ないが記録は出来るみたいでね。

 表示されている内容からして、全てが従業員のもの。

 序でにネテルが上の階に居るかも?という会話もあったのだ。

 大体の会話は業務的なものか、愚痴だったが……主に女性従業員の。

 まあ、あの格好ならそういう類の迷惑行為を受けても可笑しくないし、ゲスめいた視線を向けられるのだろう。

 だがそんなもの、此処で働いている時点で理解できている筈だ、それで上に不満を持つのは少し如何かとも思う。

 その場所で何をしているか理解しないまま、その場所で働く奴はいないだろ?そういうことだよ。

 しかし、人という者は理解していても不満を漏らすものだよなぁ、かく言う俺も普通に愚痴は漏らすしな。


<そういうことに日々晒されるということが、精神の疲労に繋がっているんだと思いますよ?>


 だからといって、急に仕事を辞める訳にもいかない、ままならないモノだよなぁ、元王女のアリスさん。


<そうですよね、神の使徒のお兄さん>


「…………」


<…………>


 俺達が、この手のことに関してどうのこうの言うのは止めた方が良いのかもしれない。


<そうですねお兄さん、私達割と人生勝ち組ですよ>


 そうか?アリス、国落とされて、家族皆殺されたじゃん。


<そういうお兄さんだって――――――――(『情報隠蔽』)じゃないですか>


 ……この話は止めよう、気分が沈む。


<そうですね……>


 さて気を取り直して――ん?……此処、ネテル居るくね?

 

「…………うん、居るな」


 中には複数人居る、会話の内容はカジノの運営について。

 ネテル様と呼ばれている人物がいる、そもそもこの部屋、会議室だし絶対に居る。


「さて、脅し……情報提供してもらおうか《空間跳躍(ワープ)》」


 扉を開ける訳にはいかない為、転移で中に入る。

 会議室内部に居るのは、六人、中央奥に座る身長高めでひょろっとした壮年の男が恐らくネテルだろう。

 手前右に三人の男、左に二人の女、年齢はごちゃ混ぜだな。

 さっさと情報を吐いてくれると嬉しいね。

 フードを深く被り、一応顔を隠す為に遊びで作っておいた深淵の白少女の仮面をつける。


「隠蔽解除……やぁやぁ、アンタがネテルでいいのか?」


「……君は何者かね?」


 意外と落ち着いているな、本人は。


「俺は……うるせぇな、黙ってろ《音捕食》,風鳴(かざなり)の鎖、これでいい」


 女男共が騒いで五月蠅いので、そいつらの声を喰らい、風魔法で拘束しておく。

 名前、どうしよう…考えて無かった、そのまま名乗るのは良くないよな……適当で良いか。


「名前は……そうだな、ブラックとでも名乗っておくか」


「そうか、では君、ブラックは何をしに私の前に現れたのかね?」


「難しいことじゃないぜ、ただ情報提供をして欲しいだけだ」


 本当のことです。


「そうか、ならばいいだろう。何が聞きたいのかね?」


 意外とすんなり聞いてくれるのな。


「此処グーズファミリーは首狩りと関係があるか?」


「成程……因みにだが、答えなかった場合はどうなる」


「そういうのは先に聞くもんじゃないか?まあいいけど、答えは簡単、こうなる」


 黒白を拳銃に変えて、一番近くに居た男の額に向け、引き金を引く。

 バンッと音がすると共に魔力弾が射出され、男の額を精確に打ち抜き、貫通する。

 男は倒れ伏し、床に血が広がる。


「まあ正直アンタを殺してそこから記憶を読み取っても良いんだが、それだと少し手間がかかるんでね。生かしておいて聞いてるのは温情と面倒だからだ。今この場においてアンタの命は銅貨よりも価値が低いことを理解しておいてくれ」


「……分かった、改めて私が持っている全ての情報を話そう」


「理解が早くて助かるよ」


 全く、本当に助かるぜ、もっと面倒になるかと思ってたのに。


<お兄さん、凄い普通に人殺しますね>


 効率的だからな、後で生き返らせればいいし。

 これが手間が省けるから良いんだよ、倫理や道徳など知ったことか。

 命の価値なんて、所詮硬貨で換算できる程度にしかないのだから。


「さて、じゃあ先ず、首狩りと関係があるか教えてくれるか?ネテル」



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