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君、街の人全員に一回は話しかけるタイプ?

二話が大変遅くなってしまいました。

ブックマーク登録したり、覚えててくれた方にはすみません……!

依頼達成の打ち上げ翌日。僕はパーティメンバーのマーガレットと一緒に、リンド城下の街を歩いていた。


「おう、マーガレットの嬢ちゃん! こないだはうちの婆さんの腰診てくれてありがとうな。これ、大したもんじゃねえけど持ってってくれよ!」


「まぁ、こんなに沢山のお野菜、ありがとうございます。私ひとりじゃ食べきれませんから、「ひだまりの家」のみんなと分けて食べましょうか?」


「ああ、是非そうしてくれよ。レインの嬢ちゃんも食べてみてくれよ、今年の葉物は出来が良いんだぜ」


「ええ、ありがとうございます」


いきなり八百屋のおじさんから大量の野菜を渡される。日曜学校に通う子供だったら持ちきれないくらいだろうか。


僕はマーガレットの方に、半分渡して、という意味で手を伸ばした。

マーガレットはにこりと笑って首を横に振る。


たしかに、僕もマーガレットも後衛職とは言え、一応は現役の冒険者だ。一人でも持って歩くくらい、日が暮れるまでだって余裕だろう。


だけど僕は手を伸ばしたままにして、マーガレットに「ほら」と声をかけた。


せっかくの休日をパーティの仲間と過ごすのだし、おじさんのあの言い方では一応ついでっぽいが僕にもくれたものらしいし。


なによりも、僕は本当は男だってこと。そしてそれを隠しているってことが、僕が手を引っ込める訳にはいかない一番の理由だ。


たとえ今ブラウスのような型の女物の服を着て、薄く化粧までしていても。

おじさんに嬢ちゃんと呼ばれたように、マーガレットも含めたこの街にいる誰もが僕を女の子と信じて疑っていないとしても。


本当は荷物なんて全部持ってみせるべきだと思いながらも、今さら自分の性別を明らかにすることはできない僕には、せめて半分持つことは自分の罪悪感的に譲れないギリギリのラインなのだ。


マーガレットは苦笑し、僕の目をしっかりと見て、


「では、お願いしますね。ありがとうございます、レインさん」


と実に丁寧なお礼を述べて、マーガレットは一礼までする。四つ渡された野菜の袋のうち二つを渡してきた。


寝食を共にし命を預けるパーティメンバーにも、こうして礼儀を忘れないのは彼女の美徳だ。


もっとも今の僕には、それは罪悪感を上乗せするだけだったりするけど……。


「じゃあせっかくだし、このままひだまりの家まで行っちゃおうか」


「ええ、そうしましょう。今からみんなで料理すれば、お昼にちょうどいいかもしれません」


そうして僕らは予定より少し早く目的地に向かうことにした。


「ひだまりの家」とは、マーガレットが所属する教会が運営する、身寄りのない子供たちを育てる施設だ。


もとは名前もなく「孤児院」と呼ばれていたところに、三年くらい前に見習い修道女として勤めていたマーガレットが名前をつけたらしい。


マーガレットと一緒に初めて訪れた数ヶ月前に、施設の代表をしている神父さんが聞かせてくれた話だ。

なんでもマーガレットが、「子供たちが「孤児院の子」と呼ばれるのは悲しい」と突然名前を考えたらしい。そして街の人たちに会うたびに話して回って定着させたんだとか。


僕がそんなことを道すがら思い出している間にも、街の人は次々と話しかけてくる。マーガレットに。


「マーガレットさん、おかげさまでうちの子元気になったわ」


「まあ、それは良かったですね。ひだまりの家の子たちも喜びます」


「メグちゃん、今度うちに来てくれないかい? うちのが咳してひどくてねえ、いつも悪いんだけど……」


「まあ、大変ですね。それなら、今日の夕方にお邪魔しますよ」


「ま、マーガレットさん! 魚の美味しい素敵なお店を見つけたので、今度一緒に行きませんか!」


「まあ、本当ですか? それならレインさんも一緒に行きましょう。お魚お好きですもんね」


「え? う、うん……」


マーガレットは四人のうちでただ一人このリンドで育ったし、日頃からその回復魔法と奉仕の精神で多くの人を助けている。街の人たちからの人気は一番だ。


最後のお兄さんは単に慕っているというより、決死のデートの誘いに見えたけど……あえなく撃沈に終わった。僕のせいかな? 違うよね?


あのお兄さんだけでなく、恋愛的な意味での人気も、マーガレットは圧倒的だ。清楚で優しくて、でも頼りになる、おまけに顔も可愛い。納得の一位と言えるだろう。うん、僕も惚れていたかもしれないね。シャルルにどんどん恋していくのを一番近くで見ていなければ……。


ちなみに残りのパーティメンバーの女子とされている、僕魔導士レインと剣士のリザでどちらがモテるかは……お互いのために言わないでおこう。


その、リザは「私より弱い男に興味ない」感出まくりで、冒険者以外からは、ね……。


それはさておき。野菜に加えて買った焼き菓子も持った僕らは、目的地のひだまりの家の近くまで来たのだが。


「なんか、騒がしくない?」


「そうですね、やたら人が走って来るような……」


何かただならぬ空気を感じて、僕とマーガレットは段々と早足になる。理由がわかるまでにそう時間はかからなかった。


「あれ、フランツさんじゃない?」


ひだまりの家の代表、フランツ神父が外まで出てきていたのだ。かなり慌てた様子で誰かと話している。その後ろには子供たちまでいる。


「そうですね。何かあったのか、聞いてみましょうか」


ところが、僕らが聞くよりも早く、僕らに気づいたフランツさんが声をかけてきた。


「ああ、マーガレット、レインさん! 今来てくれて本当に良かった……! 子供が二人、消えてしまって……!」


どうやら、魔導士と僧侶二人きりでの緊急依頼が始まるようだった。

新生活が始まりなかなか書く時間がなくて、かなり遅くなってしまいました。すみません。

生活リズムが出来てきたので次話はもっと早く出せると思います。

待っててくれた方がいたら感謝しかないです、今一話から読んだという方もよければ評価やコメント、ブックマーク登録いただけると励みになります!

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