21話 『惨事②』
前回の続きです。
ちょっと短めになっています。予めご了承ください。
「私、踊りとかよくわからないのですが……」
「頼むよ! ミアちゃんしかいないんだ。こんな偶然、普通ないって」
ミアは辺りを見回し、その場にいた全員の反応を伺う。みんな黙ってミアを期待の眼差しで見つめている。
圧迫感のある雰囲気に、ミアは俯き加減で戸惑っていたが、すぐに戻って自信ありげな表情に変わる。
「そ、そう言うことでしたら。私、頑張ります!」
「さっすがミアちゃん! 話が分かるぅ」
ぱっと立ち上がり、ラフスは振り返って老人に視線を移す。
「なあ、リアムさん。大丈夫だろ?」
彼はうーむと唸り声をあげ、目を瞑った。どうすべきかを決めかねているようだ。しかし、やがてため息をついて目を開けた。
「わしだけではどうとも。取り計らっても良いが……ここは一つ、ルナに決めてもらうとするかの」
老人は意地を張って座り込んでいるルナの方をみた。判断を委ねられ、一瞬言葉に詰まっているようだったが、重たく暗い口調で話し始める。
「不本意。とっても不本意。だけど、こんな状況だから仕方ない……わかりました。了解します。でも条件がある」
真剣な物言いをするルナは、ぴしゃりと人差し指でミアを指した。
「私がこの子に踊りを教える。やるからには本気でやってもらう。兄様に下手な踊りは見せられないから」
「は、はい!」
強張った声で返事をするミア。その様子を見て、ルナは目の前でずっとおんぶのポーズをしていたフロックの背中を叩く。
「兄様。そうとなれば、早速この子に練習させなければ。舞の何たるかを徹底的に教え込みます」
「でも、治療しないと!」
「そんなのは後です! 私をもっと広い場所まで連れて行ってください。そこで練習しましょう。あなたも付いてきて」
「はい!」
強引にことを進めるルナに、フロックはしばし躊躇う。しかし彼女の鬼気迫る顔と言い草に押し負け、ついには渋々と顔を歪めながら了承した。
おんぶされたルナとミア、そしてフロックの三人は中央広間を去っていく。
それを見届け、残された者たちも各々のタイミングで散っていった。
「いやー、何とかなりそうで良かったぜ。なあ悠人……ってもうこんな時間じゃねえか」
今まで無口だった悠人の肩を叩くラフス。彼は中央広間の端にある時計を見つめ、昼休み終了間近であることを知って驚きの声を上げた。
正直、昼飯も食べ損なったし、何がよかったのかは悠人には理解できなかったが、無口ついでにそのことを聞くことはしなかった。そして解散していくメンバーの流れに乗って、木陰に置きっぱなしにしていたものを荷物置き場に戻し、昼休憩後の集合に備える。
「そういえば、あいつ」
ミアは確か、バイトの途中に来たと言っていた気がした。しかし振り返ってももう彼らの姿はどこにもなかったので、気のせいと言うことにしたのだった。




