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お伽噺の後日談  作者: かたつむり3号
第三章 昨日の敵は今日も敵、昨日の友も今日は敵。
22/33

07


 ゴポッ、と鼻から口から水が流れ込む。痛い。もうびっくりするくらい痛い。鼻の奥がキーンとするし、目は焼けるよう。飲んだ水が臓腑を焼いて、魔力器官がギリギリと軋む。指先から体の芯まで、全身くまなく隅々まで激痛が巡って泣くほど痛い。


 ――ダンテ、


 脳に響いた声に背筋が凍る。ええ、何やだ怖い怖い!


 ――ダンテ、私たちの希望。


 ひくっ、と口端が引きつって、頭が芯まで冷えた。途端に呼吸ができるようになる。


「もっと穏便にお誘いしてくれない? ビビッて吐くかと思ったんだけど」


 くすくす、と笑い声が複数重なる。

 湖の乙女。水を司り、女神を筆頭に神々とも交流のある珍しいタイプの精霊種。理想郷にいるはずの乙女たちが、遠出して俺に会いに来ていた。


「久し振りだな、ヴィヴィアン、ニミュエ、エレイン、ニニアン、ニマーヌ、ニニュー、二ヴィアン……ニムエはいねえのか?」

『彼女は留守番よ』

『じゃんけん弱いのよね、あの子』

『いっつも最初にパーを出すの、あの子だけ気づいてないのよ』


 ふふふふふ、と闇深い笑声が響いた。不死を宿す神々の秘宝、黄金色の林檎が生る樹を守っている彼女たちは、理想郷を空にはできない。


『久しぶりね、ダンテ。私たちの勇者』

『鞘が戻ったのね、嬉しいわ』

『聖女の件は残念でした』


 水が揺らめいて女の形に変化する。それぞれが手を伸ばし、俺の体を撫でまわす。触れられたところが焼けるように熱くて、清めてくれているのだとわかった。

 精霊種は、神ともドラゴンとも人間とも魔族とも違う。彼らは世界の一部であり、世界は彼らの一部である。精霊種は世界そのものであり、彼らの司る力はそのまま、世界の力である。瘴気もまた、世界に存在する一部。乙女たちは俺の体内を循環している瘴気を体外へ流し、聖水で浄化してくれている。


『かなり瘴気を吸いましたね』

『痛いでしょ、ダンテ』

「わかってんならさ、もう陸に上げてくれよ」

『ダメよ! ちゃんと清めておかないと、これからもっと痛むでしょ!』

『もう! 無茶ばっかりするんだから!』


 俺の魔力器官は、異常だ。普通の魔力器官と同じように魔素を生成し、しかし普通では有り得ない瘴気の吸収をする。そういう風に、変質した。魔法と同じように放出できるようになったのは、俺がそうしようと思って練習して身に着けた。

 魔族を住まわせている俺の森でも、当然、魔族領内でも、俺の魔力器官は停滞する瘴気を片っ端から吸い上げていた。魔王城ともなれば瘴気は別格の濃度になる。髪の毛一本、隅々まで満ち満ちていた瘴気はもう森へ供給するにも限界で、俺の体を突き破ってあふれ出んばかりだ。そんな状態の俺が聖水に浸かり、ましてや湖の乙女に清められている。正直、血管がブチ切れそうなくらい痛い。

 土地に停滞している瘴気を祓うならともかく、体内を循環している瘴気を祓うというのは激痛が伴う。魔族にとって、瘴気の浄化は死だ。俺は今、死を経験している。死ねないけど、死ぬほど痛い。


『あなたは痛くても痛いと言わないから。たまにこうやって、うんと痛くしてあげるのです』

『いつか痛みすら忘れちゃいそうで、私たちとっても心配だわ』


 痛みを忘れるって……。そこまで鈍い奴だと思われてるのか、俺。喉の奥から乾いた笑いがこぼれる。


『あなたが会いに来てくれないから』

『鞘が戻ったこともあって、私たちから会いに来たのよ』

『私たちが丹精込めて練り上げた魔法の傑作なんだから』

『瘴気なんてあっという間に浄化しちゃうわ』

『あっという間だから、きっとものすごく痛いわ』

『あなたはうっかりでも死ねないのですから、気をつけないとね』

『女神の祝福がなければ、私たちもここまで出しゃばったりしないんだけど』


 エレインの言葉にムッとして、ヴィヴィアンが深々と溜め息を吐き出した。

 女神ユースレアティストが授ける祝福。惜しみなく注がれるそれは、剣と鞘の所有権を俺に移しても、しつこく纏わりついて離れなかった。どんなに拒絶しても拭えない。理屈もなく、仕組みも知らない。

 私の勇者に幸多からんことを。そんな言葉で祝福したくせに、俺の幸福の象徴だったカモミールを助ける手伝いはしてくれなかった。呪いにも似た執念を感じる。


「こんなことになるのなら、あの時――」

『やめなよ、ダンテ』

『そういうの、気が滅入るよ』


 痛みが引いた。瘴気が抜けたのだろう。


『はい、お終い』

『痛みがひどくなったら私たちを呼ぶのよ』

『私たちの希望のためなら、どこへでも出向くわ』

「希望じゃねえよ」


 とっさに、自分でも予期せず、反抗してしまった。


「俺の根源はもう腐り落ちてる。お前たちが愛してくれた希望はもう、俺のどこにもないだろう?」


 魂の根源。そいつの魂の在り方。生まれた時、魂の底に植えてある種だという。芽を出すも根を張るも枯れるも、その人しだい。芽を出したからどうというのか、花を咲かせたら何だというのか。ぶっちゃけ何一つさっぱりまるでわからん。

 根源なんて最も深い契約を結んだり相手を縛ったり、そういう時に効果を発揮する便利なものだなあ、くらいの認識しかしてない。そもそも他者の根源をどうこうするなんて神々でも難儀するらしいが、俺はできるのだから知るか。大事な奴らが欠片も損なわれないように、嫌いな奴をがんじがらめにするために。根源の価値はそれだけだ。

 俺の根源が『希望』だとかそんなこと、どうでもいい。たとえそれが本当なら笑ってしまう。希望なんてものを抱いた記憶はもう思い出せないほど過去の出来事だ。


『ふ、ふふ……あはは!』


 笑声が弾けた。乙女たちの飛沫のような笑い声が湖を揺らす。


『根源はきっかけに過ぎないのよ、バカね』


 笑い過ぎて震える声で、静かに静かに乙女たちが言う。


『前にも言わなかったかしら? 私たち湖の乙女は、あなたに惚れ込んでいるのです』

『好きになった女の子を救いたい、その一心で』

『理想郷まで訪ねてきてしまうおバカさん』


 ツン、と鼻を弾かれた。


『素敵な根源を持つ勇者さんは』

『素敵な在り方をした男の子だった』

『まるでお伽噺に出てくる主人公のよう』

『私たちは勇者様のように、騎士様のように、王子様のように、大切な女の子を守らんと頑張る子が大好きなの』


 参ってしまった。反論したいのに、文句を言ってやりたいのに。

 カモミールのために頑張っていた俺、という、俺が否定し辛い部分を褒められてしまった。


『まあ!』

『照れてる!』

『ダンテったら可愛い~』


 ほんのり顔が熱い自覚はあったが、指摘されるとこそばゆい。


「もう戻るぞ! ありがとうな!」


 照れ隠しで水を掻く。しかしやっぱり体は浮上せず、乙女たちに腕を引かれてしまった。


『私たちはあなたの幸せを願っていますよ』


 ヴィヴィアンの手が頬を撫でる。


『ちゃんと笑えるようになったら、また遊びにいらっしゃい』

「……ああ、そうだな。そうするよ」

『カモミールちゃんのお話が聞ける日を、いつまでも待っていますからね』


 それは、いつか交わした約束。生きるも死ぬも、自分のことは全部どうでもよかったあの頃。魔王を倒したその後の、未来の話をしたのは、思えばあれが初めてだった。


「ああ、必ず行くよ」


 乙女たちはカモミールのことも愛してくれた。魔王の件でぴりぴりしていた頃、女神に悪評ばかりを吹き込まれていたにも関わらず俺の話を聞いてくれて。信じてくれて。女神に無断で、鞘を俺に譲ってくれた。魔王討伐のため何年も何十年も何百年も、女神との約束に基づいて幾度も勇者に授けてきた鞘を、約束を反故にしてまで譲ってくれた。


「ありがとう」


 自然と持ち上がった俺の口角に満足したのか、乙女たちは、いってらっしゃい、と水面へ押し上げてくれた。

 うっかりまた息を吸わないよう気をつけて、一気に浮上する。飛び出す勢いで顔を出して、何かと強かにぶつかった。


「~~っっつぅ……」


 火花が散ったかと思った。くらくらする頭で、ぶつかった何かを探す。


「……」


 ユリウスが額を押さえて悶絶していた。


「お、おい……ユリウス? 生きてるか?」

「だ、……ダンテ貴様ぁ! 浮いてくるならもっと早く浮いてこいバカ! 死んだかと思っただろうが!」

「何、心配した?」


 くわっ、と目を剥いたユリウスがすさまじい気迫で俺の胸倉をつかみ、湖から引きずり上げた。


「私の住居で貴様が死んだら、私がみんなに殺されるだろうが!?」

「自分の心配かよ!」

「貴様の心配なんぞ誰がするか!」


 言い切りやがった。


「どうするんだ私が微塵切りにされたら! こう、生きたまま肩とか頬とかの肉をこう、薄切りにされるかもしれないんだぞ! そのあとは魔獣たちに肉を踏みしめられ、こねた肉でハンバーグとか作られて、しかし食されることはなく廃棄されるんだ……」


 ガタガタと全身で震えて、震え過ぎて輪郭がブレているが、真っ青になっていることだけはわかった。


「生々しい想像をするな。現実になりそうで俺まで震える」


 こっちはただでさえ、湖に沈んで体が冷えてるのに。風邪でも引いたらどうしてくれる。


「湖底で何をしていたんだ貴様」


 じっとり睨まれる。気になるらしい。乙女たちのことを話すと面倒くさそうだから、黙っておくことにする。


「ん~……デート」

「……ここには魚なんていないだろう?」

「何で魚限定なんだよ!」

「お前がデートして許されるのは魚類か、あとはその辺の岩とかそのくらいだろう!? 少なくとも言語で意思疎通ができる相手とデートなんてしたらお前、手足くらいは落とされるんじゃないか」

「うっ……確かに」


 何が、確かに、だ。白々しい。

 手足を切り落とすほど怒り狂って嫉妬してくれる奴は、もういないんだよ。

 ユリウスだって知っている。女神の元に行かなかったことも、知っている。それでも、当たり前のようにそんなことを言う。言ってくれる。

 ユリウスにとって、誰かに優しくするのは当然で。誰かが大事にしていることを、自分も大事にするなんて意識もせずにできることで。だからきっと、俺がムキになるほど悔しがってるこの感情も、あいつは無意識で引きずり出してしまったに違いない。


「説教はもう腹いっぱいなんだよ」


 ぷいっとそっぽを向く。


「お前が最年少なんだ当然だろ。末っ子というのは上から色々と言われるものだ。諦めろ」

「……兄貴面するならもっと可愛がれよ、末っ子を」

「断る。お前はみんなに甘やかされて、みんなに好かれているから恨めしい」

「清々しいほどに僻むのなお前……」


 みんなに嫌われている事実は、こいつなりにちゃんと傷になっているらしい。というか全力で引きずっている。


「本当お前ってば、聖騎士様っていう飾りとして置いとく分にはいいんだけど、喋ると台無しだよな」

「やめろ! それはアンジェリカに半笑いで言われたんだ!」

「謝罪に慣れてないから、下手くそなうえに絶妙にイラッとさせるし」

「やめろ! 鼻を削り取られて悶絶しているところに、バルトから冷静に説教されたんだ顔を踏まれながら!」


 ……人の嫁さんを出会い頭に斬り殺そうとした謝罪で、何をどうしたらそんな事態に発展すんだよ。あの頃はまだ、二人は夫婦じゃなかったけど。不思議でならないよ。その不器用さはもう、女神に嫌がらせでもされてるんじゃないだろうか。

 頭を抱えて、青褪めて、がくがく震えて。可哀想なくらい怯えているが、どうせ自業自得なんだろうとわかるし、俺はユリウスよりみんなの味方をしたいから慰めてやらない。


「バカだなお前」


 途端にユリウスは爆ぜた。


「ダンテ!? 嫌いな相手だったら何を言ってもいいわけじゃないんだぞ!? 知らないのか!? 嫌いな相手に嫌いって言い続けていると、好きだった相手にも嫌われるんだぞ!?」

「お前のことじゃん」

「……そうだよ」


 かと思えば背に吹雪を背負って嘆きだした。


「誠意だけで罷り通らない現実は辛いが、私が自分で招いたことだ。許してもらえなくても、反省は続けるさ」


 生き辛いだろう、と。昔、幾度となく思ったことを、また思う。何でもかんでも生真面目に受け止め抱えて、手を抜いたりサボることが下手くそな奴だ。ほとんどは父親の厳しさの影響だが、本来の気質もある。選んだ生き方でもあるから、どうこう言ったりはしない。


「しかしな、攻撃されない程度には許されたい。お前の使い魔なんて、名前を呼んだら啄んできた。死ぬかと思った」

「どおりで、ここにきてから姿を見ないと思ったら」


 ユリウスを嫌がって、遥か上空にいるらしい。何かあれば降りてくるだろうし、飛んでるってことは平和にやってるということだ。何も言うまい。


「もう少し落ち着いたら、もう一度、謝罪行脚に出る」


 謝罪行脚って何だ。こういうところはバカだな。


「ま、俺と仲直りしましたって言えば、多少はみんなの態度も軟化すんだろ」

「え!?」


 ……何だろう。何か変なことを言っただろうか。


「お前が私に協力的な態度をとるなんて、どうした?」

「派手に喧嘩したって言って回った方がいいか?」

「待て! それはやめろ! ……ください」


 必死か。いや、必死にもなるか。こいつの場合、俺の一言が死に直結しかねない。


「んじゃ、俺そろそろ帰るわ」


 ユリウスに聞きたかったのは、意見を聞きたかったのは女神のことだけ。魔王軍のことはやっぱり知らなかったし、魔王のことも結局わからなかった。


「引き続き調べてみよう。何かわかれば連絡する。だから、その……」

「みんなにはそこはかとなく良い感じに言っといてやるよ」

「た、頼む……」


 じゃあな、と挨拶は雑に手を挙げて済ませ、背を向ける。

 転移魔法は練らず、ちょっと歩く。しばらく歩いてユリウスの姿が見えなくなった頃、セツが降りて肩に止まった。


「ぎゃぎゃ! ご機嫌だなダンテ!」

「……お前、ユリウスと仲良くしてやれよ。ほんのちょっとだけ」

「俺様、あいつ嫌いなんだぜ」


 きっぱりした口調だった。


「お前も似たようなもんだったろ」


 セツは八咫烏。いわゆる聖獣と呼ばれる存在で、神の使いだ。使いだった。


「俺様はもっと紳士的だったんだぜ! カモミールとも、すぐ仲良くなったんだぜ!」

「ちょっと嘘吐くのやめろ。お前も大概だったよ」


 女神が寄越したカモミールの代わり、それがセツだった。

 セツは神聖属性魔法が扱える。そして、瘴気の浄化もできる。聖獣とはそういうものだ。


 なぜ、どうして。セツのような存在がいるのなら、聖女でなくてもよかったはずだ。カモミールの寿命を縮めてまで。強引に力を押し込まなくても、最初からセツを遣わして、カモミールと二人体制でよかっただろう。カモミール一人に背負わせる必要なんてなかったはずだ。怒り狂う俺を、セツは何度も啄んだ。


 カモミールを役立たずだと罵倒して、俺を勇者失格だと見下して。斬っても千切っても分裂するばかりで殺せないセツは、日が昇っても日が沈んでも文句ばかり言っていた。


「で、でも……ちゃんとごめんなさいしたんだぜ。カモミールも、許してくれたし……」


 険悪な空気の中、怒鳴り合いながら旅を続けた。でも、それでも、どうしても嫌いになれなかった。

 セツは、優しかった。

 カモミールが体調を崩せば狼狽えて、くしゃみをすれば身を寄せ眠った。嫌うことをやめないのに、嫌い尽くすことには失敗していた。そんなことを幾度か繰り返して、ある日セツはカモミールに謝った。女神の正義だけが全てでないと、自分で気づいた。旅の中で、俺たちを見てきて、世界はもう少し複雑なんだと知った。


「お前、意地悪すんのが下手くそなんだよ。良いことだけどな」


 ユリウスは気づけなかった。

 嫌うと決めたらもう、俺たちが瞬きしても咳をしても文句を言った。優しさの一欠片だって向けてやるものかと。徹底していた。

 セツにはそんなことできなかった。食事をすれば美味いという声を呑み込めなかったし、愉快であれば笑い声をあげることを止められなかった。素直で、優しい。聖獣らしい善良さでうっかり優しくするから、俺たちも優しさを返した。


「不器用さがうまく作用したな」

「ぎゃっぎゃっぎゃ! 俺様は可愛いしな!」

「それ初耳なんだけど……」


 俺たちとすっかり打ち解けた頃にやってきたユリウスを見て、セツはわんわん泣いた。己の態度を客観的に見たことで、いかにひどいことをしたか痛感したらしい。あんな風にはなりたくない、カモミールが好きだとあんまり泣くから、契約した。

 魂を改変して、女神と繋がっていた根源の縛りを解放した。聖獣の魂を魔族のそれへ堕として、聖なる天上の使いから地上の、俺の使いへ。


「それで? ユリウスに優しくしてやろうなんて、どうしたんだよダンテ」

「べっつに~……気まぐれだよ、気まぐれ」

「嘘にしたって無理があるんだぜ。ダンテ、俺様ってば超すごいからわかっちゃうんだぜ。当ててやろうか? ぎゃっぎゃっぎゃ! 人間扱いされたのが嬉しかったんだろ、ダンテ」

「……」


 俺は俺だと、みんな言う。人間をやめたからこそ得られた結果がある、と。そんなことは俺だってちゃんとわかってる。


『嘘だろダンテ、お前それは人間が言っていい言葉じゃないだろう!? 思っても黙っとけ嫌われるぞ!』


 それでも、人間のままでいたかったと思ってしまうから。ユリウスが迷わず俺を人間と言い切ったことが、悔しいけれど、泣き出したいほど嬉しかった。


「俺様は変えてほしいと願った側だから、ダンテの変わりたくなかったって気持ちはわかんないんだぜ」

「変わりたくなかったっていうか……」


 共通項が減ることを惜しんだ、という方が正しい。


「ダンテはそればっかりだな。つまんねえぞ」

「そう言うなよ」

「そんなだから、バルトからも説教されるんだぜきっと」


 予想はしていた。


「……そういうことなら俺にもっと優しくして?」

「しかたねえな~。ユリウスとちょっとだけ仲良くしてやるんだぜ」

「そうじゃねえよ」

「バルトがさっきの場所で待ってるぜ。ガキんちょたちは狼が連れて帰った。銀狼の群れは話を聞いて、解散させた」

「そういうことでもねえよ」


 説教されてもしかたないと思ってやがるな、こいつ。

 そりゃあ確かに、いつまでもグダグダと覚悟を決めあぐねる俺が悪い。でも、……言い訳しようとしてる時点で、やっぱり俺が悪い。


「わかったわかった。説教されてくるよ」


 一人で抱え込むにはもう、俺の両腕はいっぱいだ。

 

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