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お伽噺の後日談  作者: かたつむり3号
第三章 昨日の敵は今日も敵、昨日の友も今日は敵。
19/33

04


 アンジェリカが選んだのは、俺の部屋だった。行ったり来たりだな。

 中に入り、扉を閉めたアンジェリカは、なぜか扉の前に棚を引きずって鍵の代わりとした。


「……何がしたいんだ、お前」

「ふふふ、私が知らないとでも思ってるのか? 君、必ずみんなと個別で旧交を温めているそうじゃないか」

「必ずって……狙ってねえよ偶然だよ」


 少なくとも、二人きりでおしゃべりしようぜ、なんて誘いをかけたことはない。


「ズルいじゃないか、私だってダンテと二人で語り合いたい」

「聞けよ話を……説教はどうしたよ」

「するさ。でもその前に、私とも仲良くしたまえ。知ってるぞ。私という者がありながらカモミールのところへ遊びに行くなんて、とんだ浮気者だな君は」

「人聞きの悪い言い回しを積極的に採用するのやめろ」


 セツは聞いてるんだぞ。フェルに告げ口されたら俺の評判に瑕がつくだろうが。

 アンジェリカはどこまでも俺の話を聞くつもりはないようで、さっさとベッドに腰を下ろし、俺にも座るよう催促している。セツはもう全てを諦めたのか、抱きしめられるままうんともすんとも言わない。


「さて、か子は元気かな?」

「……元気だよ」


 出会い頭はセツの話、二人きりになった途端か子の話。ブレないなあ、こいつ。そんなところも懐かしい、と諦め、隣にどっかり腰を下ろす。


「相変わらず泣き虫で、散歩のたびに森を焼いてるよ」

「いいなあ~愛らしいなあ~。毛皮に顔を埋めたい」

「焼け死ぬぞ」


 か子の毛皮は炎そのものだ。耐性がない奴は近寄るだけで焼肉になる。


「涙もねえ~……泣いている姿があんなにも美しい獣はいないよ。なあダンテ、か子の涙もやっぱりしょっぱいのかい?」

「舐めようとか考えるなよ。爛れるぞ」


 涙と言ってもあれは熱湯だ。


「ああ、ズルい! ダンテだけズルいぞ! 私だってか子と戯れたいんだ!」

「強くなれ」

「強度の問題じゃないだろう!? 知ってるぞ! か子の熱を封じる魔法具を持ってるんだろう? なあダンテ、私にくれないか?」

「……口を滑らせたバカはどいつだ」

「カッシュ」

「~~っっっっだああ責められねえ!」


 あの野生児に、なぜ駄目だったのか、を理解させるには最短で二週間はかかる。泣き寝入りした方がずっと楽だ。


「ふふふ、さあ出せ。私にか子を愛させろ」

「……あいつ、首輪は嫌がるんだよ」

「そうか。嫌ならしかたないな。まったく、か子をいじめるような魔法具を作るなんて、悪い子だな。そんなんだからダサンテなんて言われるんだぞ、ダサンテ」


 手の平くるっくるじゃねえか。そのままねじ切れちまえ。

 アンジェリカの腕の中からセツを取り上げる。思いがけず、抵抗はなかった。二つ、三つ千切って窓の外へ放り出す。気晴らしに朝日を浴びてくるといい。


「あとで姫ちゃんにも挨拶させてくれ」

「ああ、ほどほどにな」

「私は君らと違って大人だから、女性との接し方も心得ているとも」


 大人。確かにアンジェリカは大人だ。自分が人間の枠を踏み抜いたことをいつまでも気にしてうじうじしている、ガキみたいな俺とは大違い。性別にも種族にも頓着しない、他者との違いにあまり興味がない。生きとし生けるものはみな総じて美しく、誰であれまずは愛そうとする。昔から変わらず、カッコいい。憧れてしまう。


「なあ、アンジェリカ。魔王軍が動いてるらしいって話、知ってるか?」


 ダメ元の問いだった。俺の中で魔王軍の存在はもう、いない、と確定しつつある。


「魔王軍? 解体しただろう。ギャビンは何て?」

「知らねえってさ」

「じゃあ、それは誰かの与太話だろう。彼が知らない魔王軍など有り得ない」

「だよな~……」


 与太話。出まかせでじじいを(そそのか)し、俺に悪夢を思い出させた。つまらない話で王を誑かし、俺の悪夢を再燃させた。デタラメな話の出どころは、考えるまでもない。


「こらこら、怖い顔になってるぞ」

「おっ、……と、こりゃ失礼」


 眉間に指を押し付けられ、かなり強めに揉み解される。


「今夜は我がサーカス団の自慢のショーを見せてやろう。フェル君とわくわくしながら待つといいよ、ダンテ」

「そ、そりゃあ楽しみだ」


 さっきみたいな事故はねえだろうな、と喉まで出かかった疑問は呑み込んだ。


「カモミールの分までしっかり楽しむといい。君は二人分……三人分かな。人生を謳歌する義務がある」


 眉間に置いた指はそのままに、アンジェリカが声を落とす。


「十年だ。辛気臭い顔をするには十分な時間だったろう?」

「それは、」

「私たちも、君を思って時々、寂しさで胸を冷やすには飽きるほどの時間だった。もういい加減、楽しいことばっかりな日々を過ごしていいはずだよ」


 名前を呼ぶアンジェリカの声が震えた。眉尻を下げた顔は泣き出す前の子どもみたいで、俺はかける言葉を失う。


「悪夢ばかりが夢じゃない。奇々怪々で、愉快で、素敵な夢だって見られるはずなんだ。君は自分が人間でなくなったことを嘆くが、ダンテはダンテだ。出会った頃から、君は一度だって変わったことはないんだよ」


 説教というにはあまりに弱々しい。


「好きな女の子が死んで悲しむ君は、私たちと何ら変わらない。ただの男の子だ。あの時、私が君にそれを伝えられていたら、ダンテを独りぼっちにはしなかったかもしれないのに」


 行かないで。今、独りになるのは駄目だ。そう言って泣いたアンジェリカを俺は振り切った。

 行くよ。セツや姫ちゃんを連れて行くから、一人じゃない。そうじゃない。アンジェリカが言いたいことは、そんなことじゃない。わかっていたけど、気づいていないフリをした。


「ううん、アンジェリカ。あの時の俺は、誰がどんな言葉をかけてくれても行ったよ。ありがとう、ごめんな」

「……何だ、行ってしまったのか君は。ひどい奴だ」


 湿っぽい空気を振り払うように、アンジェリカは無理して笑って見せた。下がった眉はそのままだったが、俺も真似して笑う。


「ああ、ごめん。俺はひどいことばっかりしてるな」


 優しくされても、罵倒されても。大事な奴らを傷つけても、大好きな連中を困らせても。


『ダンテ君の心は私がもらっていく』


 その言葉に従ってカモミールに心を全部、丸ごとやった後の俺は考えを改めなかった。


「ダンテ、君……結局どうしたかったんだい?」


 アンジェリカの反対を振り切って、バルトの悲痛な表情から目を逸らして。どれだけ制止されても頷かなかった。カモミールを残して、しかし置いて行かれるはずのカモミールは何も言わず。違和感ばかりをみんなに植えつけて、一つも説明しないくせに決意だけは貫いた。

 たった一人で国へ帰還し、王も女神も、世界中を脅し欺いて森に引きこもった。フェルを抱えて、連れて行ったのは契約で縛った魔族だけ。

 拗ねて、いじけて、自分勝手に逃げ出した。みんなの言う通り、あれは俺の我儘で、俺が意地を張っただけ。


「一緒に死んでくれ、って言ってほしかったんだよ」


 死を恐れたことは一度もなくて。カモミールのことは大好きで。生きたいのか死にたいのか、そんなことすら俺はもうわからなくなっていて。だったらもう、一緒に連れて行ってもらおうと思った。俺が生きても死んでも、カモミールはいなくなる。だったらせめて、最期を共有したかった。


「フラれたけどな」


 俺の言葉を聞いたアンジェリカはぽかん、と口を開けて目を瞬いて、そしてげらげら笑いだした。さっきまでの湿っぽさを忘れるほどの衝撃だったらしい。


「あっはっは! 君は本当に面白い男だな! そしてバカだ! 大馬鹿くそ野郎だ!」


 罵倒が悪化した。


「もしカモミールが君を連れて行くと言ったとして、君がそれを受け入れたとして。私たちが絶対にそんなことさせなかったよ。そんな簡単なこともいまだわかっていないなんて、君は本当に、芯からダメダメだな」


 目端に涙を浮かべるほど笑っていながら、言葉はしっかり辛辣だった。


「カモミールも罪なことをしてくれた。あの子だけのダンテではないのに」

「でも俺は――」

「君が心を丸ごと渡すなんてバカなことをしたのは知ってる。それを責める仲間はいないよ。あの時の君たちはもう、そうでもしないと壊れていたろうから。でも、でもねダンテ、それが全てでは駄目だ」

「でも……」

「頑固だな、君は。では聞くが、君の主張にどれほどの意味がある? 心はやったと君はごねるが目に見えないんだ、誰が証明できる? カモミールにあげたからもうありません、なんて言ったところで、何の意味がある?」


 見えないから、言葉にして、カモミールは特別なんだと証明したい。俺にできる言い訳はそんなもので、一蹴されるとわかるから口を噤む。子どもの駄々だってもう少し理屈をこねそうなものだ。


「シャーラとの再会に安堵して、バルトとエレーナとの再会にはしゃいで、カモミールを見舞って寂しんで、ギャビンとの再会で苛立って、私との再会で苦笑した。その感情は、君の心以外の一体どこから湧いたんだ? 全てをつくり込んだものだと、そんなことは言わせないよダンテ」


 駄目だ、と言い聞かせるようにゆっくり言われた。


「何度も言う。何度でも言う。私たちはみんなダンテが好きだ、大好きだ。でも君は、私たちが愛してやまないダンテを大事にしてくれない。私たちはね、ダンテ、君のそういうところばかりは、本気で腹を立てているんだよ」


 後回しにして、見て見ぬフリして、粗末にして、頑丈だからと手入れもせず放置して、面倒くさいと放棄して。そのくせ、危険や死地には率先して飛び込んできた。


「シャーラもバルトも言わないだけだ。悪夢のような日々をそれでも頑張って生きていた君に、二人は言えない。カモミールはもういない。だからダンテ、私が言うよ。君に怒ってる。自分を大事にしなさい、ダンテ」


 ちゃんとしなさい、と。

 それこそ子どもでも叱るように、アンジェリカは俺を叱った。


「セツもか子もディーナも姫ちゃんも、言えないだけでどうせ怒ってるから。彼女たちの分も言うよ」


 わかったね、と念を押されるも、俺はまた言い訳しそうになって言葉を喉の奥で潰す。渋面で押し黙る俺の様子で察したのか、強めに鼻を弾かれた。


「私の説教で懲りてくれないのは慣れてるよ。だから私の番が終わったら、カッシュに怒ってもらいなさい」


 懲りない。愚かな俺は学ばない。駄目だと言われたことを、繰り返すバカ。

 何度も叱られた。

 君がちょっとぶっ倒れていたって、私たちはびくともしないと何度言ったらわかるんだ、と。頼る、任せる、信じる。覚えなさい、と叱られた回数はもう覚えていない。見捨てず、諦めず、反芻しては裏切られ。それでもそばにいてくれたアンジェリカのおかげで、俺は肩の力を抜くことができた。一人じゃないと、思い出せた。


「フェル君の盾となり守り導くと決めた君の十年は、きっと彼のために捧げてしまったんだろう。でも今、君は森の外にいて、外には私たちがいる。頼る、任せる、信じる。今ならできるだろう? 思い出しなさい」


 鼻の奥がツンとして、とっさに目を覆い隠す。

 ずっと独りで生きていたら、誰かに頼ることを忘れた。何度も裏切られたせいで、誰かに何かを任せることに臆病になった。自分だけを頼りに何もかも抱え込んでいたら、疑心ばかりが募って、暗がりには鬼がいるのだと思い込むようになった。

 そうではない、と教えてくれたのはみんなだけど、そうじゃない、と最初に俺を叱ったのはアンジェリカだった。


「あっはっは! 思い出せたのならもう大丈夫だな。私たちは君のためなら地の果てにだって駆けつける。安心して、気を抜いてくれていい。大好きだよ、ダンテ」


 優しい、優しいその声に、俺は頷くだけで精一杯で。俺も大好きだよアンジェリカ、と。震える喉ではほとんど声にならなかったけれど、それでもアンジェリカは笑って頭を撫でてくれた。



 朝食を食べに行こう、と仕切り直すように声を張ったアンジェリカに促され、扉を開けるとそこにはフェルがいた。


「うわあっ!? ……え、お前……何してんの?」

「遅い」


 見ればシチューの入った器を抱えていた。待ち遠しくて、待ちきれなくなったらしい。


「ごめんごめん、待っててくれたんだな。ありがとう」

「おや、フェル君。ダンテを迎えに来たのかい?」


 俺の背後からひょっこり顔を覗かせたアンジェリカが笑う。フェルはしばらくその顔を眺めて、結局ぷいっとそっぽを向いてしまった。


「ふむ……嫌われてしまったかな?」

「人見知りしてんだよ」


 嫌いだと決めつけないでほしい。俺が願ったから、嫌う前に踏み止まってくれたんだ。


「さ、腹減ったし早く行こうぜ」

「ダンテ、お説教、怖かった?」

「めっちゃ怖かった。おじさん泣いちゃったよ」


 ひぇ、と変な声を出したフェルを見て、アンジェリカがムッとする。


「まるで私が弱い者いじめしたみたいな口振りじゃないか。君が悪いんだぞ、ダンテ」


 振り返ったフェルが器を引っくり返しそうになったので慌てて受け止め、ついでに体を抱き上げる。


「わかってるよ、反省してます」

「心にもないことを言ってる時の口調だな!」


 きゃっきゃと笑い合う俺たちの顔を交互に見ながら、どうしてかフェルは頬を膨らませた。俺を追い抜いて一足先にダイニングへ駆け込んだアンジェリカの背に、不満そうな声をかけた。


「ダンテ、弱くない」


 咥内の肉を噛み千切って笑いを散らす。

 どうやらアンジェリカの『弱い者いじめ』の部分がお気に召さなかったらしい。


「ダンテ、笑った」

「わ、笑ってない……」

「笑った!」

「はい笑いましたすんません!」


 ダイニングへ入る。

 まず視界に飛び込んできたのは、サラダを食っている姫ちゃんに抱き着いて撫でまわしているアンジェリカだった。姫ちゃんは気にも留めていない様子で黙々とサラダを食っている。大人だとか女性の扱いは心得ているとか、嘘ばっかじゃん。もうちょっとマシな嘘を吐けせめて。子どもたちドン引きしてんぞ。エレーナが引き剥がそうと奮闘しているが、魔獣愛が爆発したアンジェリカはビクともしない。バルトだけだ。こんな状況でもケロッとしてんのは。


「あれ? クロエはどうした?」

「姫ちゃん見たらぶっ倒れた。今は部屋で二度寝中だ」

「……そ、そうか」


 何も言うまい。森への出入りは頻繁だったが、住人たちに会わせたことはなかった。


「ほら、朝から説教された情けない大人代表。早く座れ、シチューなくなるぞ」

「嫁さん助けてやれよ」


 示された椅子に座る。空いている席がないのでフェルは俺の膝の上だ。


「ああ? 興奮したアンジェリカをどうこうしようとしてるエレーナの方が間違ってんのに、助けるわけねえだろ。それより飯を食え」

「……いただきます」


 バルトの言うことは正しい。あれは、放置が最も適した対処法だ。どうせ気が済むまで止まらない。


「ダンテはそっち。フェルはこっち」


 預かった器をフェルに返すも、俺の方に押し返してきた。……わかってんぞ。俺を待ってる間にシチューが冷えたから押し付けて、自分はあったかい方を食う気なんだこいつは。魔力を練ってあっためて食う。


「なあ、フェル」

「何?」

「こっちの器さ、ブロッコリー多くない?」

「……」


 まず肉が入ってない。じゃがいももない。にんじんもない。玉ねぎとコーンは除去しきれなかったのかわずかに残っているが、それにしたってブロッコリーが多い。というかブロッコリーしか入ってない。作為的なものを感じる。


「ダンテ、サラダもある。葉っぱ食べて」

「お前のサラダは彩り豊かだね~。俺のは緑しかねえな~」

「食べて!」


 フォークで刺したレタスを口に突っ込まれた。勢い余って上顎まで刺してるけど、フェルは気づかなかったのか自分の器に残ってるトマトを愛おしそうに頬張っている。


「何ダンテ、お前もしかして太った? フェル坊に食事制限してもらってんの?」

「そっちの方がまだ納得できる」


 フェルはやたらと俺に野菜を食わせようとする。普通に食ってるのに。トマトはかなり強引に奪っていくが、レタスやホウレン草なんかは積極的に食わせようと常に画策している。別にフェルが嫌ってる食材を押し付けてるわけでもない。こいつは何でも食うし、食い物なら何でも好きだ。


「おいフェル坊、俺にも手伝わせろよ。何を企んでんだ?」

「やめろやめろ! お前が手を貸すなんてろくなことにならねえだろうが!」

「そのために手伝うんだろうがよ――いってぇ!?」


 フェルの頭を撫でまわそうと無遠慮に伸ばされた手を押さえるべく俺も手を伸ばすが、間に合わなかった。あとわずか、というところで、フェルの牙がバルトの指に食い込んだ。


「フェル、フェルこら! ペッしろばっちぃ!」

「バッカお前ダンテてめぇ! 手はちゃんと洗ったぞ! エレーナに叱られるようなこと言うなバカ! ていうか痛い痛いフェル坊!」


 姫ちゃんを離さないアンジェリカ。アンジェリカを離さないエレーナ。バルトの指を噛んで離さないフェル。引き離そうとなぜか俺の顔に手を置くバルト。二人を引き剥がそうと声を張る俺。もう食事の風景ではなかった。


「もう! パパたちうるさい!!」


 声は六つ重なった。


「アンジェリカさん、姫ちゃんさんから離れてご飯を食べて!」


 長男エットが得意の風魔法で強制的にアンジェリカの気を逸らす。強風に髪を乱され、アンジェリカはハッとしたようだ。


「ママ! もう諦めてご飯を食べて!」


 次男トヴァが得意の水魔法で文字通りエレーナに冷や水を浴びせる。


「姫ちゃんさんも少しは抵抗して場を収めて!」


 次女フィーラが得意の土魔法を腕に纏わせ、巨大化させた手を振って姫ちゃんの気を引く。


「パパ! ダンテさんを困らせないで! お行儀悪い! フェルちゃんをいじめちゃダメなの!」

「俺だけ説教の項目が多くない!? ――ぎゃっ!」


 三女フェムが得意の火魔法でバルトの顔を焼いた。……容赦ねえ。


「フェル君もパパの手を噛んじゃダメ!」


 三男セクスは魔法適正がないので、物理的にフェルを殴った。


「ダンテさんが来てからみんなはしゃいでるの。子どもみたい」


 長女トレが得意の回復魔法でバルトの焼けた顔を癒す。


「みんなお行儀よくご飯が食べられないならお昼ご飯抜きだからね!」


 これまた綺麗に六重で叱られた。


「はい、ごめんなさい」


 こちらも六つ、謝罪はぴったり重なった。は、恥ずかしい。フェルは殴られたこともあってか、耳まで真っ赤になっている。

 その後はみんなどことなく気まずさを感じながら、目も合わせられず、黙々と食事を終えた。途中、起き出してきたクロエに『え、何……気持ち悪っ』と普通に悪口を言われたが、誰も文句を言えなかった。

 

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