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ひめみこ  作者: 転々
第九章 連休
79/202

家電量販店

 家電量販店に来て十分足らず。既に私は『今日』を選んでここに来たことを後悔し始めていた。


 家電量販店というのは、全国何処でも同様のサービスを受けられるのがウリの一つだが、言い換えれば、どの都道府県でも、系列が違っても、品揃えに大きな違いがないということ。都と道のは行ったこと無いけど、多分。

 ここでも近いエリアに、ショッピングモール、シネコン、ファミレス、ホームセンター、本・CD・DVD、等々……。多分、フルマラソンを走りきらなくても、似たようなエリアが国道かバイバス沿いに現れる。


 商品力で差別化できない以上、集客力を上げるためにイベントが行われる。GWともなると、子どもや孫のためなら財布の紐を緩める人をアテに、小さなお友達向けのイベントが行われる。将を射んと欲すれば……、というわけだ。

 このショッピングモールにも特設ステージが設けられ、GW中はいろいろやるらしい。




 演目が、愛と勇気だけが友達のヒーローなら良かったのだけど、今日に限って、一部大きなお友達にも人気のヒロイン達のショー。大きなお友達は二次元を無理矢理三次元にしたのには興味が無いと思ってたけど、販促グッズにはそれなりに魅力があるようで……。


 そこに私が行く。このコスプレ紛いの衣装で。服は変身後の衣装に、……ちょっと似てるかも。髪型も違うし胸の戦闘力も――悔しいかな――違うのに、注目されてしまう。


「あ! ミネルバ! おねーちゃん、ミネルバでしょ? 後輩が心配なんでしょ?」


 周と同じぐらいの女の子が私を指さす。


「ごめんねぇ。お姉ちゃんはミネルバちゃんじゃないよ。

 でも、シルフィのお姉ちゃんは、あそこで今から悪ものをやっつけてくれるんだよ」


 ……これで、四回目だ。オールスターズから去年のメンバー来ることになってるから、私をミネルバだと思うらしい。ルックス的には今シーズンのシルフィの方が近いと思うのだが、着ている服が似てるんだよね。中には「髪を切ったの?」という子まで。幸い、胸のサイズに触れる子はいないけど……。




「お母さん。早く電器屋に行こうよ」


「もうちょっとで始まるんだから、ちょっと見ていきましょ。そのうち円も見るようになるんだから、今のうちに予習しとかないと」


 この番組、毎年メンバー替わるんですけど。

 それに、既に円は視てるんですけど。エンディングのダンスだけだけど。


 すごく居づらい。あ、スタッフさんまでこっちをチラ見している。絶対、コスプレのイタい子だと思われてるよ。




「みんなー! こーん、にーち、()ー!」


 司会のお姉さん――結構可愛い――が、場を盛り上げる。

 見るときのお約束に始まり、戦隊を呼ぶ練習、ピンチになったときに応援する練習……。周囲りの子ども達は真剣だ。周や円を連れてきたら喜んだんだろうな。


 程なく、子ども達の揃った呼び声で戦隊がステージの上に集まる。衣装はそのまんまだけど、顔はフルフェイスのヅラ付きお面。ブーツのヒールが役者ごとに違うのは、身長差を吸収するためだろうか、意外と芸が細かい。

 でも、絵と現実では頭身が違うし、ずんぐりして見える。役者さん達の体格は普通なんだろうけど、お面とズラのせいで頭はでかくなるし、そもそも絵の方が細すぎるんだ。

 女の子はこうやって小学校に上がる前から、あの細さがカワイイ、格好いいと、痩せ願望をすり込まれるのだろうか。普通の男性の目には、あんなのよりもっと肉がついてた方が、魅力的に映るはず。


 ミュージカル風に歌とダンスが始まると、子ども達は大喜び。意外とダンスにキレがある。あのお面、と言うよりかぶり物をしてこれだけ踊れるんだ……。

 感心しながら見ていると、周囲りでは大きなお友達も見てないふりをしながら見ている。視線の先は主にミニスカートとブーツの間の部分。中はドロワーズみたいなのとタイツだけど、それでも視線を誘導されるのが男の(さが)というもの。




「へーぇ。『ミネルバ』ちゃんか……」


「何? お母さん」


 いつの間にか手に入れてきたパンフレットと私を見比べている。


「あなた、髪伸ばしたら、ノーメイクで出られるんじゃない? 歌えるし、踊れるし」


「胸の大きさが違います」


「大丈夫。髪が伸びる頃には、そっちも成長してるでしょ。成長してなくても誤魔化す方法はあるけど」


「伸ばしませんから。そもそも、ステージに立つつもりもありませんから。第一、神子は『元』も含めてショービジネスNGです」


「惜しいなぁ。あなたならスタイルも良いし、踊れるし」




 舞台が佳境に入る前に私たちは家電量販店に入った。ちょっと惜しいが、渚は「大体分かったからいい」らしい。


 まずはタブレット売り場を見る。


「お母さんは何に使うつもり?」


「何って……、何ができるの?」


「何に使うつもりだったの? まさか、目的もなく買うつもりだったの?」




 一応の目的は有ったが、電話をスマホに換えれば済む程度。でも、セキュリティ的なことを考えると、タブレットは別に持った方が良さそうな気がする。

 私もスマホには詳しくないけど、機能が多いほど信用できない。というより、こっちが知らないところで勝手にネット接続するのが気に食わない。……てのは、時代遅れな考え方だろうか。


 渚の要望なら2in1のウィンドウズタブレットが無難だけど、これはでかいのしかない。


「こっちだったらうちや職場のPCと同じ。

 こっちのはOSが違ってて、私も触ったことがないから、トラブルがあってもすぐに解決とはいかない。

 PCに触ったことがない人でも使える、ってのがウリだけど」


「……」


 渚はかなり迷っている。電話機能がないなら、PCの類は壊すつもりで触れば良いんだけどね。最悪でも初期化、再インストールという方法があるし。


「とりあえず、デモ機を触ってみたら?」


 結局、ウィンドウズじゃない方のタブレットに恐る恐る触り始めた。だが、触りながらどうでも良いことをいちいち訊いてくる。やれやれ、女ってのはどうして……、と思いながら、今の自分もそっちのポジションだということを思い出した。

 結局、性差じゃなくて個人差なんだろう。それとも、『私』としての経験や知識がそう思わせるだろうか?




 おっかなびっくりでも自分で触れるようになったようなので、私はオーディオ売り場に行く。買う物はHDDレコーダとその他諸々。

 この分野は詳しくない。デジタル家電は値段と性能がほぼ相関するだろうということにして、高級機のワンランク下ぐらいから選ぶことにする。実際のとこ、BDは無くても良いかな。再生だけならプレステでも十分だ。

 あ、ちょっと高級そうなワイヤレスヘッドホン。少し試してみる。


 おおおお! すごい!


 デモの映像に合わせて、飛行機の爆音が左前方から右後方に抜ける。ヘッドホンをしげしげと見るが、見た目は普通だ。どうやって前後方向の定位を再現してるんだろう?


 迷ったあげく、そのワイヤレスヘッドホンも買うことにした。お買い上げカードをポケットに入れる。うーん。散財。

 更に音声用の光ケーブルを二本取り、HDMIケーブルを選ぶ。五十センチじゃ短いかな?




「よっ、ねぇねぇ、君、一人?」


 振り向くと、大学生ぐらいだろうか? いかにもチャラい感じの男がチャラいことをアピールしてくる。

 コレってナンパなんだろうな。この姿になって半年以上。ようやくテンプレの展開だ。別に望んでないけど。

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