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ひめみこ  作者: 転々
第八章 合宿
67/202

女子会?

「ごめんね、由美香ちゃん」


「いいよ、気にしないで」


 結局、食事はガ○ダムネタで由美香ちゃんを置いてきぼりにしたまま終わってしまった。


「ところで、その『ガ○ダム』って何?」


 え? そこから?


「四十年ぐらい前のロボットアニメだよ。スーパーロボットからリアルロボットへの転換期の名作で……」


 一応、通り一遍の説明をする。イマイチ伝わらない。私の説明が下手なのだろう。


「ロボットアニメの全てがここにあるのです」


 紬ちゃんは抽象的な説明をする。


「一応、劇場版三部作のDVD持ってるから、視てみる?」


「劇場版から視るのは邪道なのです。やはり本放送版を視ないと」


 紬ちゃんは持論を展開するが、今まで興味を持ったことが無い人にそれはキツイだろう。ここはダイジェスト版で視るのが無難だ。


「そんなにみんなが夢中になるなら、視てみようかなぁ」


「視るのです!」


「ガ○ダムもいいけどさ、そろそろレポートをまとめようよー」


 詩帆ちゃんの一言で現実に引き戻される。さすが優等生!




 まず、気付いたポイントを挙げて行く。と言っても、組立工場を見学したぐらいで中学生が気付くのは、せいぜい3Sとか5Sって呼ばれる内容が限度だ。確かに小綺麗な工場だったけど……。


「昌ちゃんは、他にない?」


 言ったものかな? まぁいいか、言っちゃえ。


「掲示板に、事故事例とか改善事例とかが貼ってあったよね」


 あれは事故が起こったときに、ただ当事者の問題にするのではなく、『何故』を繰り返すことで事故の要因自体を減らしていく活動だ。そして失敗を共有して、それをどう改善していくか、その思考の過程を言葉にすることで、作業や物事全般に対する考え方自体を訓練することに繋がっている。失敗も財産であり、隠すことなくノウハウの源にするという姿勢がそこにあるのだ。


 他にも標準作業指示書とか、口頭での指示を禁ずる文言とか。

 技術は『見て盗め』なんて時代もあったけど、作業一つ一つを言葉にすることで、技術を人から組織の財産にしている。

 しばしば、マニュアル化を馬鹿にする人が居るけど、これは作業品質を得る、最も確実で手っ取り早い方法なのだ。

 こういう取り組みができるのも、レベルが高い技術者がいればこそだ。


「昌ちゃん凄い! 何でそんなこと分かるの?」


 詩帆ちゃんが目を輝かせる。由美香ちゃんと紬ちゃんもウンウンと頷いている。

 そりゃ『私』はFA機器や治工具の設計をしてたし。

 FA機器や治工具はそれ自体の設計もさることながら、工程設計が重要だ。『私』のその辺の知識はそこそこある。けど、それは言えないし。


「マンガの受け売りだよ。最近はIT系や製造業なんかを扱った理系マンガもあるし」


「へぇー。じゃぁ、そのセンでまとめちゃおうよ。こんなレポート出せるの、ウチの班だけだよ!」


 うーん。中学生レベルじゃなかった。空っぽの工作室や、元は改善場だった場所の話はできないな。




 箇条書きにした項目を分類していると、ドアをノックする音。返事をすると藤井先生だった。点呼らしい。

 先生はノートを一瞥して頷く。


「この部屋は真面目にレポート作ってるわね。でも、あと三十分ほどで消灯よ。明日もあるから早く寝なさい」


「「「「はーい!」」」」




「ふぅ。行っちゃったね」


「行ったですね」


「では!」


 詩帆ちゃんがスタスタと冷蔵庫の方に行く。ヤバい。その中には!


「じゃーん」


「詩帆ちゃんそれ拙いよ」


 詩帆ちゃんが持った缶を見て由美香ちゃんが言う。その缶は明らかにアルコール入りの飲料で……、しかも私が買ったものじゃない。


「おや? ここにもう二本ありますね。容疑者は……」


「昌クンとか、昌クンとか、昌クンですね!」


「……はい」


 私が入れたときには無かったぞ。詩帆ちゃんはいつの間に買ってきたんだろう。




「ところで、そんなのどこで買ってきたのよ? 私たちが泊まるフロアは自販機停まってたし、他のフロアへの階段は先生がガードしてたでしょ?」


 由美香ちゃんが当然の質問をする。


「食事中に、トイレに行くフリして。

 同じフロアのトイレは混んでるからって、一階降りて、そこからエレベーターで一般客の居るフロア。

 ところで、昌クンはどこで?」


「ゲーム機と卓球台のあるコーナーの自販機は動いてたから、お風呂の荷物に紛れ込ませて。さすがに脱いだ服の下とかまで調べないでしょ」


「おぉう! そこは盲点だった!」


「とりあえず、ぐーっといこう、です!」


「ちゃんと缶は洗ってあるからね」




 疲れました……。

 女子会は、中二でもやっぱり恋バナなんですね。

 ボロが出ないかを意識するあまり、気持ちよく酔えないし。


 この班のメンバーは、あまりそういう気配は無いものと思っていたけど、紬ちゃんが既に初チューを済ませているのには、正直びっくりした。最近の中学生は早い。


 逆に私はとっくにその先のステップまで済ませているものと思われていたみたい。いやまぁ『私』には子どももいるけど、それは昌になる前のこと。それに最近まで療養中だった『設定』なんだけど。

 確かに、男性心理の分析はいくつかの部分では的確だと思うけどね。出自が出自なだけに。




「恋の相談はね、男性にはしない方がいいと思うよ。特に相手と上手くいっていないときは」


「どうして? 客観的な意見を聞けそうだけど」


「相手との関係に隙間があるとき、そこに入り込もうとする男が多いってこと。

 とくに、わざわざ恋人の不満や愚痴を聞く男は要注意!

 普通の男は、女から男の悪口を聞きたくないし、逆にそういう女は自分のことも他でどう言ってるか分からないって考えちゃうよ。


 ボクに言わせれば、相手の悪口をわざわざ聞くのは、下心有りって考えてもいいよ。

 愚痴を聞けば、何を不満に思っていて、何を求めているかが判る。相手の欠点と自分の長所を比べさせることも出来るし、何より踏んじゃいけない地雷も判るでしょ」


「「「へぇー」」」


「確実に言えるのは、今のオトコの欠点と、別のオトコを比べてるうちは、いい恋なんて絶対出来ないってこと」


「それは、昌ちゃんの実体験?」


「違うよっ! 第一、ボクは男性と付き合ったことなんか無いし。今のも、沙耶香さんの受け売りだよ」


 ゴメンナサイ沙耶香さん。勝手に名前を使いました。

 ホントは実体験です。初めての彼女はそれで取られました。

 でもあのときの彼女は、由貴ちゃんは今どうしてるんだろ。高二のときだから、もう二十年ほど経つんだよな……。




 会もお開きとなってから一人考えてしまう。


 自分は本当に恋など出来るのだろうか。

 恋はともかく、遺伝子を遺すことと、そのための交配は避けられない。今はそのことを考えるのを避けているけど……。ソレに私の心は耐えられるだろうか。あるいは繰り返せば、慣れや諦めの境地に立つのか。

 でも、好きでするのと諦めでするのは全く違う。どうせ避けられないなら、好きで出来るようになりたいな……。

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