表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひめみこ  作者: 転々
第八章 合宿
65/202

浴場

 宿に着いた。ちょっと古めの温泉旅館だ。新館はまだホテルって感じだけど、本館はいかにも古めかしい。ホテルとしての体裁も整っているが、どっちかというと観光旅館というか……、まぁ昭和な感じだ。


 部屋に入ると案外広い。

 三人の班は二人部屋に簡易ベッドを入れるが、私たちの班は四人。四人部屋が割り当てられている。

 時刻は五時過ぎ。夕食まではたっぷり時間がある。


「どーする? 一時間ちょっとじゃお風呂に入るには微妙だけど。私は食事の前に入っちゃいたい方だから」


 由美香ちゃんが訊く。


「ボクも入ろうかな。やっぱり夕食は小綺麗にしてから食べたいし。レポートは夕食の後でゆっくりまとめようよ」


「昌クンが入るなら紬も行くです」


「だったら、私も行こうかな」


 結局、部屋の全員が風呂だ。


「じゃぁボクは部屋で待ってるから」


「「「えっ?」」」


「ボクは部屋のシャワーを浴びるよ。貴重品もあるし、留守番は任せて」


「貴重品は金庫に入れるです。みんなで大浴場に行くです!」


「いいよぉ。ボクは部屋で待ってるから」


「そんなこと言わずに、一緒に行こうよ」


 由美香ちゃんまで……。


「昌クン、本当に生えてるですか?」


「生えてない! 生えてないからっ」


 生えてないけど、生えてないから行けない。それに、混浴なんてハードル高過ぎだよ。




 ……脱衣所なう。

 結局、大浴場に連行されました。


 壁の向こうは静かだ。何だかんだ言って、男子の方が肌を晒すことに抵抗があるもんだ。特に成長に個人差が出る時期だけに。

 でも古い旅館の大浴場って、なんで覗けと言わんばかりに壁の上の方を切ってるんだろう。と、思考は一時現実逃避に入る。


 うー、どうしよう。幸い他の班の子達はまだのようだけど、タオルで隠すにしても限界はある。慎重に行けば大丈夫かな?


「自分で脱げないですか?」


 みんなもまだ脱いでないでしょうが。脱いだら脱いだで目のやり場に困るけど。

 免疫がついてきたとはいえ、毎日顔を会わせる相手はまた趣が違う。って、何考えてるんだろ。


「ぬっ、脱げるよ」


「では、脱ぐのです」


 とりあえず、ブラウスを脱ぐ。


「昌クンのちっぱい、可愛いです」


「う、うるさいっ。これでも少し大きくなったんだから。もうすぐBなんだからっ!」


「堂々とするですよ」


 う、最近の中学生は発育がいい。恵まれし者の余裕か、ゆさゆささせる。全く目のトク、もとい、目のドクだ。


 私は由美香ちゃんの影に隠れた。貧乳同盟結成。


「どうせボク達は平たい胸族ですよーだ」


「こら! そこで『達』をつけるな! 私はAじゃない!」


 由美香ちゃん、見捨てないで。


「Aとは違うのだよ、Aとは! です」


 うー。ザク扱いされた。

 あれ? 紬ちゃんって、ガ○ダムの再放送見てるのか。見かけによらないな。よし、ここはガ○ダムネタで返すのが礼儀だろう。


「胸なんて飾りです。エロい人には判らんのです」


 瞬間、壁の向こうから吹き出す声とともに「静かにしろ、バレるだろ!」の声。まさか覗いてるのか?


 ダッシュで壁に向かい軽くジャンプ。懸垂の要領で顔を出す。


「うわぁ!」


 男性側は八人、覗いてはいなかったが聞き耳を立てていたようだ。


「くぉらっ! 覗かないでよっ!」


 自分のことを棚に上げて怒鳴る。


「覗いてないっ! 聞いてただけ! 覗いてない!」


 男子は全員下着を着けたままだ。三人ぐらい前屈みになっているが見なかったことにしよう。


「昌クン、凄い! 男子並みのジャンプ力です! やっぱり本当に生えてるですか?」


 紬ちゃん。もうそのネタ引っ張らないでよ。男子も聞いてるし。


「おーい、だったら『小畑君』はこっちだろー」


 向こうも悪のりしている。


「は、生えてないからっ!」


 私は床に飛び降りた。


 どうする?

 今から撤退? それはムリだろう。

 無難な選択はタオルで隠す。多分隠しきれないだろう。紬ちゃんがタオルを引っ張るに違いない。そこで不毛地帯を見られたら……。

 やはり、現実的な方法で行こう。


「あのさ、脱ぐから。脱ぐからその前にちょっと言っておくことがあるんだけど……、ちょっとこっちに来てくれないかな」


 皆、怪訝そうな表情で集まる。


「えーっと、まず、恥ずかしいから内緒にしておいて欲しいのと、それを知っても、その、周囲りにばれるような反応しないで欲しいんだけど、いいかな?」


「よく分かんないけど、いいよ」


「内緒ね、分かった」


「まさか本当に……」




 私は深呼吸してから言う。


「ボク、実は、」


「「「実は?」」」


「生えてないんだ」


 みんな溜息をついて脱力する。


「それはナイショにするようなこと?」


「それは分かってます」


「さすがにそこまでは期待してないです」




「いや、だから、生えてないのはソレじゃなくて……、ココの毛が」


「なーんだ」


「そんなことですか……」


「期待して損したです」


 あれ? ここは驚くとこじゃないの?

 中二だよ。ボーボーとは行かなくても、そこそこ生え揃ってる年代だよ。


「まぁ、本人が恥ずかしいって言うなら、ばれないように私らで周囲りを固めとく?」


「そ、それは……、助かります」


「とりあえず、お風呂にしよ」


 私も手早く脱ぐとタオルで前を隠しつつお風呂に入る。

 紬ちゃんが桶いっぱいのお湯をかけてきた。


「本当に生えてないです!」


 え? となって下を見ると、濡れたタオルが片側に寄ってる。


「ちょっ、ちょっと、紬ちゃん!」


「壁の向こうの人達の疑惑をといておいたです」


「あ、ありがと、って、やり方ってもんがあるでしょうが」


「本当に生えていないか確認したかったのです

 顔を赤くする昌クンはカワイイです」


 ち、ちょっと! 近いって! 当たってるし!

 神子の沐浴でかなり免疫は付いてるけど、それでもこれは困る。女子ってこんなにスキンシップ取るものなの? 男子とは違う。いや、男同士だったら軽くトラウマになりそうだけど。




 軽く身体を流し、湯船に浸かってしばらく、脱衣所に人の気配。シルエットから、五人ぐらいだろうか。早めに上がろう。

 洗い場に行き、手早く身体を洗う。沙耶香さんが見たら叱られそうだけど、タオルでこすり洗い。最後にシャワーを浴び、不毛地帯をタオルで隠しつつ、脱衣所へ急ぐ。

 タオルに加えてバスタオルも併用して身体を拭く。ショーツを着けて一安心だ。


 旅館では浴衣でなく体育の服装を使うことになっている。今日はやや暑いので、寝るまでジャージは必要ない。でも、Tシャツから下着が透けるのはアレな感じなので、ノースリーブを着る。あ、さっき男子を厳重注意したとき、ブラをモロに見られてたんじゃないだろうか?


 と、下着姿の詩帆ちゃんが近づいてきた。その胸の戦闘力は反則です。ちょっとドキドキしていると、突然私の左腕を捕った。え? 何?


「いいなぁ。処理しなくてもいいなんて」


 どうやら、脇毛のことを言っているようだ。そうだ、女の子は身だしなみとして、そういうことも必須だ。首から下がハゲというのは、これから夏に向けて、女子力がイマイチな私は正直助かる。


 見ると由美香ちゃんもこっちを見てる。

 そうか、バスケは袖がないし、脇を晒す動作が多いスポーツだ。切実に気を使うところかも。彼女自身はそんなこと口にしないが。




 ふぅ、何とか風呂イベントをクリアした。




 後日、私に無毛疑惑が出たが、程なく下の毛も白いという話になっていた。

「もともと薄い上に肌が白いから、濡れると保護色のようになって生えてないように見える」という類の言説が流布し、話の信憑性を増していた。


 不毛地帯がバレるよりはマシだけど……、マシだけど。

 それを聞いたほぼ全員が、私のすっぽんぽんを想像したと思うと恥ずかしい。


 でも女の子って、自分ことでもないのに、こんな赤裸々なこと平気で言うものなのか? 私の中の女の子像が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ