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ひめみこ  作者: 転々
第七章 中学校編入
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おかしいな?

 検診を終えて戻ると、更衣室はかなり混んでいた。と言っても、着替え中の人は居ない。何か雑談をしているだけだ。

 よくもまぁ飽きもせず、どうでもいい話をする、と思うのは『昌幸』の記憶だ。沙耶香さんにも言われたが、雑談が最大の課題だ。


 自分としてはかなりの速さで下着を着け、ブラウスに手を伸ばした。つもりだったが、由美香ちゃんは既に完了。私は経験値が少ない様です。

 そう言えば、家で着替えるときは時間を気にしたことは無かった。ちょっと練習が要るかも知れない。


 着替えを終えて出ると、昨日メール交換をした――確か安川さん――とすれ違った。声をかけたけど、気付かなかったのか更衣室に入ってしまった。

 さすがに着替え中に声をかける勇気はない。私は教室に戻ることにした。




 教室には男子の大半が戻っていたが、女子は私と由美香ちゃんが最初だった。上半身の下着一枚でこれだけ違うか。


 由美香ちゃんと他愛もない話をしていたが、共通の話題が乏しい。

 彼女は体育会系だし私は文化系。なにより女子歴が違う。

 海外で半ば隔離された入院生活という『設定』は、こういうとき助かる。


「昌ちゃんは、どんな番組見てるの?」


「小さい子がいるから、そういう番組ばかりだよ。

 朝はテレビ体操を一緒にしてから、0655までの流れかな」


「テレビ体操なんて、健康的!」


「『弟』は、体操のお姉さんが大好きなんだ。

 お子様のくせに『推し』がいるなんて、生意気でしょ!

 で、0655は癒しと人生の励みをくれるんだよ!」


「私も視てみようかな」


「0655はお勧めだよっ!」




 ひとしきり話していると、藤井先生が来た。男子は全員揃っているのに、女子はようやく半分に届こうかというところ。

 これからクラスの委員決めだけど、始められない。


 席に着いているが、川崎さんは私の後だし、先生が来ているのに振り向いておしゃべりというわけにも行かない。隣はまだ帰ってきていないし。うーん。

 委員会活動か……。なるべくヌルいのがいいな。間違っても体育委員とかは避けなきゃいけない。園芸委員とかも、早くから水を上げたりしないといけないからNGだ。


 委員会活動は必ずしもやらなくていいが、せずに済む確率は低い。それぐらいなら、予めヌルいのを選んだ方が良い。図書委員とかが無難かな。そうだ。海外で入院中は、本を読むぐらいしか無かったから本が好きって言えばなれるかも。


 でも、今の中学生ってどんな本を読んでいるんだろう。『前世』の『私』が中学生だった頃はSFか推理もの一辺倒だった。

 結構、背伸びして読んでたな。印象に残ってるのは『地球の長い午後』。たしかなんとか言う賞をもらってたはずだ。

 映像では『超時空惑星カターン』の回もよかったなぁ。結局、笛で一曲吹けるようになった他は、語り部としての記憶が残るだけだけど、余韻を残す、泣ける話だったなぁ。


 女の子は理解してくれないんだよね、こういう浪漫。結局女の子にとってロマンチックってのは、恋愛とそれに伴う雰囲気だけなのかな。

 でも今の私の脳は女性のそれだし、それを感じることが出来なくなってるのだろうか? 確かにDVDをもう一度視ても、そのときの感動を思い出すことは出来るけど、もう感じることは出来ない。

 そう思うと、この身体になって得たものってあるのだろうか? 魚屋さんでオマケしてもらうぐらいしか、御利益(りやく)が無い。喪ったものばかり多く感じる。


 由美香ちゃんと話しても、共通して見ているテレビ番組すら無い。

 子どもの世話に忙しくてドラマなんて視るヒマがないし――あっても視ないか――、昨日なんか子ども達を寝かしつけてたら、そのまま私まで寝てしまった。

 何だかんだ言っても、久しぶりの学校で疲れてたみたいだ。


 一応、最近のドラマも視た方がいいのかな? HDDプレーヤは、幼児向け番組で一杯だ。もう一台買うか……。あ、今は車を使えないから、気軽に家電量販店に行けない。渚に言うと「無駄遣いするな」って怒られそうだから、ここは沙耶香さんに頼もう。

 去年のうちに通販しとけばよかった。


 私は文庫本を取り出して読み始めた。題名と表紙の絵柄は、女子中学生が読んでいても不自然ではない。けど、中身はSF。中学生で知っている人はいないと思うけど……。


 気がつくといつの間にか全員揃っていた。『ふわふわの泉』に浸かりすぎてたようだ。


 クラス会長は時間がかかったが、それ以後はすんなり決まった。体育委員はどうやら運動部顧問が一本釣りをかけていたようだ。

 私は、予定通り図書委員に滑り込んだ。男女とも希望者が一人しかいなかったからだが、私が「桂君、よろしく」と言ったとき、一部の男子生徒の視線が凄かった。私が先に決めてたら、どうなってたんだろ?




 そして給食時間。『前世』の頃は机を寄せたりしてたように思うけど、まだ机を寄せて食べる感じじゃないのか、それぞれの席で食べている。

 多分週明けぐらいからそうなるのかな?


 久々に食べる給食は、懐かしさも手伝ってか美味しかった。ちょっとお代わりしようかと思ったけど、女子中学生としてそれはアレな感じなので、様子を伺うことにした。

 実際、お代わりしているのは男子だけだったので、私の判断は正解だった。私にもイメージってのがあるのだ。


 昼休みも、昨日の六人には声をかけそびれた。さっさと食べてどっか行っちゃうし。


 結局、その日は声をかけるタイミングを逃したまま、帰ることになった。

 まぁいい。川崎さんとはいいお友達になれそうだし。友達が出来るか心配だったけど、案ずるより産むが易しってやつだな。




 翌日、教室へ入ると、何故か周りがよそよそしい。

 こちらから声をかけるのは躊躇われるし、かといって待っていても声をかけてもらえない。うーんどうしようか?

 それとも私はぼっちなのか? 三日目にしてぼっち? そんな要素は無かったと思うのに。


 TSものの主人公って、普通はモテモテになるはずなのに。いや、なにが普通か分からないけどさ。


 おかしいな?

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