ミネルバちゃんって?
後で知ったことだが、ショッピングセンターからウィッグを置いていった旨、連絡があったらしい。加えて、そのときの私の様子も。
母さんと買い物になんて行ったことは無かったはずなのに連絡先が分かるなんて、私は自分で思っている以上に『有名人』なの? と思いきや、母名義のカードでポイントを貯めていたところから繋がっただけだった。パートさんは顔が広い。
母さんは、通夜での私の様子も沙耶香さんから聞き及んでいた。渚にも今日のことには触れないよう伝えてくれていたらしい。
風呂に入ることで落ち着きを取り戻した私だが、嘘から出た真か、本当に始まった。しかも、前回までよりやや重い。寒くなってきたからだろうか。否、この痛みにはきっと心理的なものも含まれているに違いない。
その夜、寝付けなかった私は『ミネルバちゃん』が気になって、ネットで調べてしまった。
女の子が言ってた『ミネルバちゃん』というのは、どうやらアニメの登場人物だ。魔女っ子ものと戦隊ものを足したような内容で、物語は終盤にさしかかっている。
登場人物には古今の神の名があてられているのだが、その中に髪の白い『ミネルバ』というキャラクターが登場する。
でも、私との共通項と言えば目と髪の色だけで、アニメの方はロングヘアの隠れ巨乳だ。設定では中二、私より一年上だけど、私があと一年であそこまで育つとは思えない。別に、羨ましくなんかないですけどね。
その番組の登場人物は、メンバー全員が少女であることを除けば、昔の戦隊ものを踏襲している。最近は女の子もバトルものを視るのだ。円ももう少し大きくなったら、変身アイテムを欲しがるのだろうか……。
内容は特に奇をてらったものではない。前世が王女様の守護者だった少女達が、現世の王女と仲間を捜しつつ悪い奴らをやっつけるというもの。ちょっと違うのが、守護者だと思っていた主人公自身が、実は王女様だったというところ。
ピンク色の少女
物語の主人公。熱血、直情型、即断即決、正義感が強い。戦隊ものの『赤』そのもの。当然、小さなお友達の中では一番人気だ。
夢のお告げで守護者の生まれ変わりであると告げられ、王女様らしき存在からぬいぐるみを託される。
目を覚ますと人語を解するぬいぐるみがおり、その助けで戦士として覚醒、ともに戦う戦士と護るべき王女の生まれ変わりを捜し始める、というのが物語の始まり。
序盤は肉弾戦で、最後は飛び道具の必殺技。なぜ最初から飛び道具を使わない、というツッコミが出そうなところまで、戦隊ものやヒーローもののテンプレを踏襲している。
能力的には攻撃重視。タイマン勝負での火力は作中最強。当然、強敵との戦いでは一番オイシイところを持って行く、主人公らしい主人公だ。
物語の終盤で、実は彼女こそが護るべき王女の生まれ変わりだったと判明する。この辺も主人公。
青色の少女
二話目から登場。
主人公とは対照的に、理知的で一歩引いた視点を持つ。いかにも戦隊ものの『青』のキャラクター。
常にクールだが、ここ一番でボケることもある。この辺がツボなのか、大きなお友達の間で人気急上昇。そのおかげで中の人も仕事が増えたらしい。
多数相手の殲滅力は最強。ザコ相手なら無双するけど強敵に対しては噛ませになりがち。
何気に、ダメージを受けたときのリアクションには、作画と中の人の愛がこもっている。このあたりも、大きなお友達のハートをわしづかみにしているポイントだ。
黄色の少女
四話目から登場。子ども成分要員。一応、主人公の一学年下で中一という設定だが、見た目に相当無理がある。
防御や士気高揚など、チームの下支えをする能力が高い。
謎かけに対する「何じゃらホイ」とかは、主要視聴者のお父さんウケを狙っているようだが、それの本放送を視ていたのはもっと上の世代なので明らかに外している。私でさえ再放送でしか見てないのに……。
カレーが好きだが、甘口どころか幼児用しか食べられない。この辺も含めて、一部の層からの支持は厚い。
赤色の少女
五話目から登場。他の三人と画風が違って、大人の雰囲気を醸す。主人公より一学年上だが、その胸部の戦闘力は中三ではちょっと有り得ない。と言うより、女児向けアニメ史上最大級と言った方が良い。
癒しの力や護りの力を持つが、それ以上に目立つのはボケ。
そのおっとり、のんびりとした口調で、戦闘中であろうとお構いなくボケる。その容姿とのギャップが大きなお友達のハートをがっちりキャッチ。青い子と人気を二分する。
肝心なところではボケずに美味しいところを回収するので、あの天然っぽい雰囲気自体が擬態であるとの噂あり。
薄紫色の少女
明示的ではないが、王女の態で一話から主人公の夢の中に登場。
総合的な戦闘力は――王女様モードの主人公を除けば――最強。物語中盤で主人公たち四人を相手に無双する。そのときの性格は冷淡そのもの。
そんだけ強い王女なら、護りは要らないんでね? という意見があったからかは分からないが、実は王女の影を勤めていたことが判明。
作画的には最高に愛がこもっているのに、脚本家の愛が足りず、個人エピソードもほとんど無い。
序盤ではまだしも寡黙でミステリアスな雰囲気だったが、物語終盤にさしかかり王女の影であることが語られて以後、見せ場も少なくなり、影が薄くなった。ボケたりクールになったり、隠れ巨乳だったりと一貫性の無いテコ入れで、肉付けが迷走した不遇のキャラクター。
WIKIや紹介記事、ブログなどを読むとこんな感じだった。
脚本家が『ミネルバ』を動かし難かったのは、欠点が無さ過ぎたからだろう。欠点だらけの自分とは大違いだ。
迷走か……。まさに自分の今の心がそんな感じだ。男の弱さはそのままに女の弱さまで追加され、『昌幸』だったときの強さを喪ったのに『昌』としての強さは見つからない。
テコ入れで性格を改変出来たり巨乳になれたりなんて、アニメのキャラクターは羨ましい。




