表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひめみこ  作者: 転々
第十七章 中学校最後の半年
144/202

高校受験に向けて

 文化祭も終わり、ここからは目立った行事は無い。精々が二学期末の球技大会ぐらいか。三年生は高校受験に向けた動きになる。


 教室では放課後に課題が配られるようになった。

 それをこなしてから下校するのだけど、自習室として教室が開放される。実際は、帰って無為に時間を過ごすぐらいなら、勉強の空気がある空間に身を置いて、受験勉強をしなさいということだ。


 上位層はともかく、苦手科目を抱える生徒にとっては、分からないところを気軽に訊ける環境というのも大きい。

 が、現実には、それが必要な生徒ほど、さっさと下校するけど。




 私は先生から「なるべく四時ごろまでは残って欲しい」と言われている。教室内に勉強の雰囲気を作ることと、特に先生には質問に行きづらい生徒のケアだ。この辺、先生は私を高く買っている。

 まぁ、精神年齢は……。最近は肉体に引き寄せられていると自覚しているが、それでも十分に高いだろう。勉強については、理系科目は大学入試レベルでも問題ない。

 別に言われなくても、ある程度は残るつもりだったけどね。買い物と夕食の下ごしらえがタイトな動きになるけど。


 二組では詩帆ちゃんも同様の役回りだし、四組の松田君もそうだ。由美香ちゃんが詩帆ちゃんに積極的についていくことで、二組はクラスの雰囲気がいち早く受験勉強に傾いた。四組では松田君が男子に対して睨みを効かせているらしい。


 一組はと言うと、ぼちぼちかな? やってはいるけど、紬ちゃんの地頭が良すぎて、他の子が劣等感を持ちがち。




 今週は神子の集まりが無い週末。

 久々にいつものメンバーが集まったけど、今ひとつ勉強という雰囲気にならない。放課後にも顔をあわせているからか、新鮮味が無いのだ。


「文化祭で、昌クンのダンス、すごかったのです」


「だよねー。私は部活引退したら、身体が(なま)っちゃって。

 それに、食事の量を注意しないと、前のつもりで食べてたら太りそう。昌ちゃんって、普段なにかしてるの?」


 身体計測のときと同じ流れだ。


「コレかなぁ。やってみる? 筋トレだったらこっちの輪っかで、健康維持とカロリー消費ならボクササイズだよ」




 みんなが試すのはボクササイズの有酸素運動だ。

 アンプを切って、テレビのスピーカから音を出す。アンプを通すとダイレクトモードでもコンマ一秒近く遅延するから、音ゲーには不向きなのだ。


 由美香ちゃんは初めてにもかかわらず、かなり上手い。さすがスポーツ女子。

 紬ちゃんもソツ無くこなす。やはり神子とは認められていなくとも『血の発現』を経ているからだろう。本人の好みや優先順位の問題だけど、運動部だったら活躍していたに違いない。

 恵里奈ちゃんは初めから興味なし。詩帆ちゃんも今回は見送り。詩帆ちゃんが見送った理由は想像できる。本人の名誉のために言うと、別に上手く出来なさそうとかじゃない。

 この点については、分かる人だけ分かって下さい。


「昌クンも、お手本見せてなのです」


 とりあえず、ステップが無い速めの一曲を選ぶ。得点自体よりも、私の手が速いことにみんな驚く。これも、物理的に速いという意味。間違える人はいないと思うけど、念のため。


 中間試験がすぐ先に見えているのに、なんだか、勉強という雰囲気にならないまま、その日の勉強会を終えた。

 ま、たまにはこういうこともあるよね。




 中間試験では、私たちの順位はほとんど変化しなかったけど……、その意味が違う。

 部活引退組で新たに一桁に入った生徒はいないが、二十位以内に入った生徒はいる。これが三十五位以内ぐらいまで下がると、かなり入れ替わっている。


 恵里奈ちゃんも、客観的には力を付けてきているけど、同レベル帯に、短期間でより力を付けてきた生徒がいるということだ。

 一方の由美香ちゃんは、引退組が力を付けているペースに遅れていないということ。


 現状のペースで学習しても、恵里奈ちゃんは公立の第一グループに届かない可能性が高い。むしろ、ズルズルと順位が落ちていくだろう。

 一方の由美香ちゃんは、第一グループは初めから無いものとしているが、第二グループなら現状維持か少し落ちるぐらいでも合格ラインをクリアできる。

 この状況、恵里奈ちゃんはどこまで理解しているだろうか?




 保護者懇談は、今回は必要な生徒のみが対象だった。

 私と紬ちゃんはこの調子で頑張りましょうなので、今回はナシ。


 でも、恵里奈ちゃんは長かった。やはり、例年の合格ラインを微妙に下回るところにいるから、その辺の説明なのだろう。

 実際のところ、恵里奈ちゃんの場合は私学の結果が出てから、勝負に出るか安全策を採るかを決めることになるだろう。でも、学校にはそういったことの説明を事前に行う責任がある。

 と言うより、採りうる選択肢と、その条件を予め明らかにしておかないと、後で文句を言われるかも知れないから、それを事前にという意味もあるだろう。


 本当は、恵里奈ちゃんは、苦手分野を潰す学習から、取りこぼしを減らすものに変えていかないといけないけど……、この辺は私たちじゃ強く言えない。




 十一月の末には、また実力試験。

 これと期末の結果が、年末の三者面談、要するに私学の受験校決定の資料となる。みんなそれに向けて頑張っているけど、私は来週の中日(なかび)にディズニーだ。いいのかな?


 今回ばかりは明らかにズル休みになるので、お母さんに欠席の連絡をしてもらう。『家庭のやんごとない事情』で火・水・木の三日間休むのだ。私は、成績も素行も問題無いから、これが遊興目的の家族旅行とは誰も思わないだろうけど。




 ディズニーは、楽しかった。いろいろ思い出すと恥ずかしいこともあったけど、総合的には楽しかった。(あまね)(つぶら)も帰るのを嫌がった上、新幹線の中では「また、連れてって欲しい」を連発していた。

 でも、不思議だったのは、明らかに中高生が多いこと。平日なのに、私のようにズル休みだろうか?

 そしてやはり、円とお揃いのドレスは目立った。円はいかにもコスプレですって感じの安っぽいのを着ていたけど、私はガチのを着せられていたせいだろう。現地スタッフと間違えられて、一緒に写真をというお願いをされたり、部外者と説明して気まずかったり。

 いろいろ気まずい思い出なので、蓋をして仕舞っておく。いずれ心の整理がついてから、思い出すことにしよう。




 期末試験と実力試験、今回は頑張った! 超頑張った!

 期末試験は二位だったけど、実力試験はトップ。まずまずだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大人の事情で、詳しいドレスのお話しは出来ないのかもしれませんが、個人的には是非読んでみたいと思います(実はものっすごく楽しみにしていました)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ