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カルテNO.3 青木(盗賊)8/10

 8

「それは、どうすれば…… どうしたら俺は、妻と子供を幸せにしてやれますか」


 必死の形相で青木が聞いた。


「家族と幸せに暮らすための唯一の方法、それは、ダンジョンハーブをやめ続けることです」


 医師の言葉を聞いた青木は、再び肩を落として「それができないから、こうして相談に来てるんじゃありませんか……」と言った。


「ええ、確かに青木さん一人の力では、不可能かもしれません。しかし、奥さんや身近な人たちの力を借りたら、どうでしょう」


 医師は、一旦言葉を切って青木に考える時間を与えた。


「依存症の治療では、家族や友人など、身近な人たちの理解と協力を得ることが不可欠です。家族のためなら何でもするとおっしゃった、その覚悟があるならば、自分が依存症であることを認め、助けを求めることもできるはずです」


 じっと考え込んでいた青木は、顔を上げて「俺にもできますかね」と言った。


 医師は表情を緩め、「現に、今日もこうして相談できているじゃありませんか」と付け加えた。


「勇気を出して。青木さんは男でしょう」


 医師が笑顔で言うと、青木は照れ笑いして頭をかいた。


   ※※※


 診察を終え、青木が椅子から立ち上がりながら「そういえば」と言った。


「先生は、ずいぶんダンジョンハーブに詳しいみたいですが、どちらで……?」


 医師はキーボードを打ちながら、「いや、それほど詳しいわけではありませんよ」と言って笑った。


「そうですか。もしかしたらシンジケートの連中とも懇意なのかなと思いまして」


 医師は、「シンジケート」という言葉にわずかに反応したが、青木はそんな様子には気付かず、「それじゃあこれで」と言って診察室を出て行った。


「シンジケートねぇ……」


 医師は、一旦手を止めてつぶやいた。


「まあ、もう関係ないしね」


 うんうんとうなずき、医師は再びキーボードを打ち始めた。


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