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カルテNO.3 青木(盗賊)5/10

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「なんだよ、話にならないな!」


 青木は、フンと鼻を鳴らして言った。


「ろくに検査もしないで人のことを依存症だと決めつけて、挙句の果てには妻が不幸になるなんて、縁起でもないことを言う。あんた、占い師かなんかか」


 青木に言いたいように言わせた後、医師はゆっくりと話し始めた。


「まずは、私があなたのことをダンジョンハーブ依存症と診断した根拠からお話ししましょう。ダンジョンハーブ依存症の診断基準は、世界保健機関やアメリカ精神医学会の提唱しているものを参考にしています。これらの基準は、主にダンジョンハーブの摂取量や頻度、常習性を計るものです」


 医師が一旦話を切って青木を見ると、不服そうにしながらも黙って話の続きを待っていた。


「一方、これはダンジョンハーブに限らない話ですが、家族など、近しい人間がどれだけ困っているか、という点が、依存症の診断では重要であると、私は考えています」


 青木が、チラリと医師のほうを見た。


「あなたの奥さんは、初めての妊娠という大きな不安を伴う事態にあって、本来ならば真っ先にその事実を伝え、不安も喜びも分かち合うべきパートナーに、どうしても打ち明けることができなかった」


 医師は、まっすぐに青木を見据え「このことの意味を、よく考えてみてください」と言った。


 しばらくの間、うつむいていた青木が、「あなたは女性だから」と言った。


 医師が「なんです?」と聞き返すと、青木は顔を上げ、「女のあんたに、男の苦労がわかるわけない」と言った。


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