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カルテNO.3 青木(盗賊)1/10

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「青木さん、診察室へどうぞ」


 名前を呼ばれ、やつれた様子の女性が待合室の椅子から立ち上がり、診察室のドアを開けた。


「青木さんですね、そちらの椅子におかけください」


 医師が問診票を読みながら着席を促すと、女性は座るが早いか「あの、お薬だけ出していただけますか?」と聞いた。


「はい?」


 医師は顔を上げて、女性を見た。


「だから、あの、ダンジョンに行かなくなる薬が欲しいんです」


 じれったそうに女性が言う。


「うちの主人が、毎日のようにダンジョンに行っていて、このままでは生活できなくなりそうなんです。だから、ダンジョンに行かなくなる薬を出してください」


 医師は問診票をデスクに置き、女性と向き合った。


「青木さん、ご主人がダンジョンに行ってばかりで、ご心配なのはよくわかりますが、どうか落ち着いてください」


 医師の言葉に、女性は少し表情をゆるませた。


「あと、今日はよく相談にお越しいただきました。勇気がいったでしょう」


 医師がいたわるように言うと、女性は「いえ……」と言って、椅子に深く座りなおした。


 医師が順を追って質問し、女性が答えたところによると、女性は夫と二人で道具屋を営んでおり、樹界深奥に挑むのに必要な道具類を売って、生計を立てているという。


 商品の仕入れのために、夫は時々ほかの冒険者と一緒に樹界深奥に潜っていたが、多くても月に2~3回だった。それが、1年ほど前から徐々にダンジョンに潜る回数が増えていき、今では3日と空けずにダンジョンに入り浸っているとのことだった。


「ご主人は、そんなに熱心にダンジョンに入って、何をしてらっしゃるんですか?」


 聞けば小さな道具屋のようだ。あっという間に店の中が商品であふれかえってしまいそうなものだが。


 医師が不思議に思って聞くと、女性は気まずそうに「その、ダンジョンハーブを……」と言った。


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