学園の切符4
彼が最初に当たった部屋は今のような場所だった。周りをキョロキョロと見るとソファやワインなどの金持ちの好きそうなものが並ぶ。
「虎の毛皮か。……成金かよ」
彼はそう呟いてからその奥に向かっていく。新品の靴を履いているため足跡の心配などもない。
この世界には虎のような元いた世界の動物も多少はいる。ただし力の強さなどが魔物とは段違いに弱いため数は少ない。虎は希少価値が高いと言われ金持ちの間で集められていた。
それを彼が知っていれば成金などという言葉は出なかったかもしれない。
その部屋に扉はなかったため彼は一度部屋から出る。元の廊下をずっと動き回る蜘蛛型ロボットを他所にほかの部屋を順々に開けていく。
外れか、と思う彼の目に映るものの中でめぼしいものはなかった。女神信者のことやもう一つこの家にあるはずの生存反応。それらの情報を一切得れないままで最後の扉を見る。
しかし彼がそれらを見つけることは出来なかった。
彼は一つの結論を出す。生存反応がありながらどこの部屋にもその人はいないことを考えると、
「地下とかありそうだな」
その考えはとても的を得ていた。彼は重点的に床を探りそれらしい場所を探す。十数部屋あるうちのほとんどを探りすべて失敗に終わる。
「……最後はここか」
最初に訪れた部屋に入りいろいろと周りを見てみるが何も見つからない。ふと彼は足元の虎の毛皮をめくってみる。すると、
「ここが階段か」
予想通りなのか彼はニヤリと笑いその中に入っていく。携帯を見てまだキースが遠くにいることを確認してから辺りを探る。
彼は人の気配を頼りに道を進んでいく。灯りが点いている場まで来て彼はそこがどんな場所なのかを知る。
「……こんなの牢屋と変わらないじゃないか」
血の匂いが漂う檻の中にいる一人の少女。ブツブツと助けて、と呟く少女の近くまで行き彼は尋ねる。
「君はなんでここにいるんだい」
少女はビクッと体を震わせたかと思うと彼をじーっと見つめる。
「あなたは……ミーを……いじめない?」
か細い声でそう問い彼から目を離さない。彼は少し悩んでから一言、
「俺の敵じゃないなら」
とだけ言った。
「ミーは女神信者十二使徒の十二の刻を司るの。……でも戦いたくてやったわけじゃないの」
「それはよくわからないな。俺は俺だし君は君だろ。……まあ、話くらいなら聞くよ」
檻に背を付け少女に話を促す。彼の後ろ姿を見た少女は同じく檻に背を付け話を続けた。
「ミーは生まれた時から女神信者十二使徒だったの。最初は首輪を付けられて無理やり奴隷にされてたの。命令が入れば動いてそれ以外の時には首輪は外される。それでも……好きじゃない人殺しを強要されてたの」
彼は薄らと自分の足を見つめ考える。嘘をついた様子は無さそうだ、と判断して話を続けさせた。
「それで?」
「ミーはここでキースに殺される役で連れてこられたの。ミーが悪役でこの街がよりキースに依存するように」
「ふぅーん、それじゃあ。君がいなければいいんだね」
彼は剣を取り出し少女に向けた。覚悟を決めた様子の少女の背中に付く、冷たい檻を切り裂いた。
「早く出ろ、目障りに感じ始めるから」
彼はぶっきらぼうにそう言い少女から目を離した。少女から見えない顔は真っ赤になり臭いセリフを言いすぎたと後悔をし始めた。
「……ミーは……」
「言い訳や話は後で聞く。……もしかして俺を殺したいのか」
この時の彼の言葉はキースにと付く。それを少女は気付いていたためてけてけと覚束無い足取りで付いていった。
階段に差し掛かったところで少女をおんぶして外へ出る。少女にまで偽造をかけていたためロボットが気付く気配はない。
そうして彼は名も知らぬ女神信者十二使徒の少女をキースの元から連れ出した。
偽造を持つものは少ない。そのためか彼が背負っている少女に不信感を抱くものはいない。全力で走ったため彼と少女はすぐに宿までたどり着いた。
キースが既に家に戻っているとも知らずに。
すいません、時間がかかりました。後、不死鳥の召喚士でも書いた通りこの小説を二、三日に一回の投稿に変えさせていただきます。
理由はネタ切れです。ちょこちょこと短いですが書いていくのでぜひこれからもよろしくです。
これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。
後、消す予定はないですがリメイク版を出すかも知れません。ちょっと急展開過ぎる気がしてきて……。ですが「在り来り」のように消しません……多分




