学園の切符3
「こんにちは、ヨーヘイ様。このようなことで不快感を与えて申し訳ありません」
「……構いませんよ。それよりも通っていいですか?」
ええどうぞ、とロスたちに向けたような礼をしてから手を門の中へ指さす。本当に薄気味が悪い、と彼は感じていた。
「一つだけ聞いていいですか?」
「なんでしょう」
「もし蜘蛛の巣に蝶が囚われていたらどのようにして逃がすのがいいんですかね」
キースはうーんと数秒考えてから、
「両者を殺してしまうのがはやいのではないでしょうか。どうせ巣にかかってしまった蝶は飛べないでしょうし」
キースはそう答えた。彼はそうですか、と笑いその場を後にする。
彼の震えはもう止まっており終始笑顔を絶やさない。サーシャたちに驚かれていようとそれをやめることはなかった。
「蝶が俺か女神信者かの違いさ。どっちが蜘蛛か証明しないとな」
彼は携帯を片手に地図を探る。キースの位置もその中に書かれていた。
それによって彼の移動する時の速さは尋常ではない。そしてキースには鑑定が通らなかった。つまりは女神信者十二使徒の可能性は大いにある。
彼が欲しかったのは情報。もし拠点としている場所があるのならそこへと向かい女神信者十二使徒の情報を得ようとした。キースについては不思議なことが多い。それこそ女神信者十二使徒として広まっていないのだろう。
キースがルーザーのような狂人かどうかも気になるところだった。
そのための情報。それが彼には欠けている。
運良くというべきかすぐにどこかの家でキースが動かなくなる。
「一応、ピンを指しておこう」
重要な場所などに置けるピンをその場所に置きロスたちと宿を取りに行く彼。
その頭の片隅にはキースのことが残っている。
「それではよろしくお願いします」
宿を取り終えた彼らは分かれて行動することになった。彼に保護者をつけるという考えはロスたちにはないため簡単に単独行動が出来る。
それによって彼は嬉しいような悲しいような気持ちになる。
今回の行動は本当に単独。つまりは彼の近くにサーシャたちはいない。
それはキースともし戦うことになったとして勝てる自信がないためだ。彼がステータスを見れば未だに消えず残っている女神信者十二使徒の資格の文字が目に映る。
地図を見ながらキースが役所で動かないのを確認してピンを刺した家に向かう。
家の大きさは普通の一軒家の二倍程度だ。その家の鍵がかかっていないことを確認して中に入って行く。
「中は……普通だな。偽造で気配をおかしくしておくか」
彼は偽造で気配を偽造、つまりは自分のものではないものとした。
家の中をよく見ると数台の床を這う蜘蛛のようなロボットが動いておりそれを避けながら中を進んでいく。
彼の読みは正しくこのロボットは気配を察知して攻撃を仕掛けてくるもので、家の鍵が閉まってなかったのはこのためである。
キースがまだ動かないことを確認してから扉を順々に開けていく。
短いですが、どうぞ。
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