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学園の切符2

 魔法国と王国の間の関所に行くには二箇所の街を通らなければいけない。そしてその二箇所は都合よく半日でつける距離である。

 彼はそのうちの片方に向かっていた。王国にも学園というものはあったが卒業後王国兵士に強制的にされることを考えて、彼は魔法国の学園に入ることにした。サーシャやリコは彼がそちらに行くため共に通うことを決める。

「後、三時間くらいでつくから」

 時々出てくる魔物はハクが風魔法で撃破し倉庫の中に溜まっていく。キラは彼の横に寄り添いながらプルプル震えている。

 キラを触ることによってリラクゼーション効果があるようで数時間の馬車移動でも彼が疲れることはなかった。

 距離ごとに置かれている塚を見て時間を計算していくことによって、サーシャたちに気を使う。

「ヨーヘイ大丈夫?」

「当たり前、中に入ってな。危ないから」

 馬車のカーテンから首だけを出し聞いてくるサーシャに彼は簡単な答えを返す。

 馬車の馬は魔物に近いらしく三日走り続けても倒れることはないらしい。それを聞いていたのだが彼は数回、回復魔法をかけ馬の体調をきちんと管理していた。

 そんなことを繰り返していると次の街の門が彼らの目の前まで迫る。

「おい、止まれ」

 門番が馬車の近くまで行き行動を止める。彼らの前に並ぶ人はいなかったらしく直通で並ぶ必要はなかった。

「なんですか?」

「ガキ、早く身分証出せや」

 傲慢な門番に少し彼はイラついたがギルドカードを見せて門番の様子を伺った。やはりと言うべきかCランク冒険者と書いてあるそれを見た時に一瞬驚く門番。

「お前、誰からこれ奪ったんだ? そういうことをするやつは通せねえ」

 門番にとって運が悪かったことは彼は子どもだからと侮っていたこと。そして前からこのようなことをやって金を毟っていたため今回もいけると踏んでしまったこと。最後に彼の馬車の上でくつろぐハクの姿が見えていなかったこと。

 そして彼がすぐに対処出来なかったのはロスたちの馬車が後方で門番と話をしていたこと。ロスも彼も関係性を話していなかった。そしてロスもギルドカードを提示してはいない。

「通して欲しければ金だしな」

 彼の襟を掴んでそう脅す門番。それを彼は嘲笑い門番の腕を握る。

 ステータスがBランクの上の方の力があれば、たかだか平均が千程度の門番の腕を握りつぶすことは簡単であった。

 彼はトマトを潰すかのごとく門番の腕を握りつぶし一つだけ聞いた。

「それで何か御用ですか?」

「お前……ぜってえ許さねえからな」

「それはうちの子に対して言っていますか?」

 彼が声のする方を振り向くと大きな盾を構え冷静な顔をしながらも血管が浮き出ているリースの姿が見えた。

「父さん、別にいいでしょ」

「そんなことを言ってはいられないんだよ。彼がやったことはパーティロイスをコケにしたのと変わらない」

「そうだぜ、ヨーヘイ。俺らを馬鹿にするってことはそれだけ強くなきゃいけねえ」

「ステータスの低さが仇になってるだけだからね。練度でいえばSランクの魔物すら倒せるから」

「ビーズたまにはいいこと言うわね。まあうちの息子バカにしたんだから、死ぬ覚悟はあるわよね」

 ロスは両手剣を持ち背中に弓を持っていた。ビーズとエレッタは杖を装備し魔法の詠唱を開始する。

 門番の謝罪の言葉はもうリースたちには聞こえない。

「そこら辺にしてもらえますかね。彼はこちらで罪を裁きますので」

 パンパンと手を叩き姿を現したローブを着た男。ローブの下で笑みを浮かべているあたりなんとも薄気味悪い。

 男の顔は至る所で縫われた跡があり線状になっている。

「お前は……キース。キース・ヴァレンタイン」

「あの有名なロイスの皆様に名前を覚えていただき光栄です」

 彼はわざわざ体を大きく九十度に曲げ恭しくお辞儀をする。

 彼は震えが止まらなかった。それはキースと呼ばれた男の雰囲気が、

「女神信者……十二使徒……か?」

 彼のその一言は誰の耳にも届かなかった。

女神信者十二使徒の一人、キース・ヴァレンタインの登場です。彼の訪れた街で何が起こるのか。もう少しでミーが出てきます。お楽しみに。


これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。


最後に明日、朝八時に投稿出来ないため午後に投稿すると思います。ご了承ください。

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