元仲間3
「あれ? 確か現在入るのは禁止って看板出てたはずなんだけどな」
リーナの言葉を聞いた彼はすぐに首を横に振る。
「俺は見てないです」
「それはいろんな意味で?」
からかうように笑うリーナに彼はこくりと頷いた。リーナはそれを見て可愛い、と思いながら頬は緩めないように気を配った。
「別にちっちゃいんだから気にしなくてもいいのに」
「俺が気にしてしまうんです。どうしても恥ずかしくて」
タオルを巻くことをやめたリーナを見て彼は赤面した。
「本当に可愛いわね。お婿さんに欲しいくらい」
リーナの冗談じみた言葉は彼をより赤くさせた。取る時期を間違えたトマトのようにとても熟れている。
「そんなこと言って他にいい人がいるんですよね」
「いやいないわよ。言い寄ってくる馬鹿たちはいるけどあんな可愛くない人は嫌」
彼はじゃあ俺って可愛かったんだ、と昔の自分の顔を思い出した。すぐに首を横に振りその考えを消す。
「ずっとそんなところに立ってないでここに来なさい」
リーナに従って彼は横に座る。遠くからだとよく見えない、そんなエルフ特有の小さな胸を見て彼はより頬を赤らめる。
「もう慣れないと将来大変だよ」
リーナは彼のことを抱きしめ反応を待った。しかし数分経っても何もなかったのでおかしいと思いよく見てみると彼は気絶していた。
「……本当に世話が焼けるね」
リーナの笑顔だけがそこには残っていた。
「ふあっ」
目を開けた彼が一番に見たものは覗き込むリーナの顔。何故そうなったのかに気が付くのに時間はかかったものの彼がお風呂場で倒れてしまったことに気付く。
「ようやく目を覚ましたんだね。いやー心配したんだよ」
ニコニコ笑うリーナに触発されたのか彼も笑顔を見せる。瞬間、彼女の胸をドキンとトキメかせてしまったことには彼は気付けない。
むしろ俯くリーナを体調でも悪いのか、と心配する程だ。
もちろん、彼女の心の中もおかしくなっていた。
そんなわけないぞ、なんでこんなにただの幼児に心をときめかせているんだ。もしかしてこれが運命の赤い糸だとでも言うのかい、と。
内心乱れまくった心を纏めるかのようにリーナは彼に話しかける。
「あっありがとう、リコと仲良くしてくれて。あの子には共感っていう固有スキルがあってね。それで村から出たって言うのも理由としてはあるんだ」
「共感……ですか」
「ああ、エルフには第六感とも言える共感するって感情があるんだ。話をする前に自分たちにこんな感情を抱いてるってね。でもリコの場合それは固有スキルとして強化され過ぎたんだ」
彼は何も言わず黙って聞いていた。リーナはそれを見て話を続ける。
「例えば相手の心を事細かにわかってしまうんだ。殺したい、疎ましいと思えばリコに直接伝わる。それも強い感情であれば他人に対してでも伝わってしまう」
「……でも俺が話しかけても嫌な顔はしませんでしたよ」
「だから共感したんだと思うんだ。それもいい方向でね。私たちにはわかる。あなたはただの二歳児じゃないでしょ?」
彼は黙った。黙るということは肯定したことに等しい。肯定したという前提でまたリーナは話を続ける。
「それを私たちは感じ取った、それでいてあなたに心を許した。だからあなたには話をしたのだと思うわ。そしてリコはとても嬉しがっていたわよ。だからこそ、ありがとうって言ったの」
「……俺は二人の過去を知りませんが前の世界で同じパーティを組んでいたんです。そしてもしその時の過去がここでも起こるなら」
「……二年前くらいだったかしら、その時に不意に頭が痛くなったの。今の公爵の息子、そいつに見初められて嫌なことが起こった。そんな簡単なことしかわからないけどそれが起こるんでしょ」
リーナの言葉に彼はこくりと頷く。数分の時が流れてリーナはまた口を開いた。
「……リコを学園に連れていきたいと思ってるんだけど冒険者になったらすぐお金って貯まるかしら」
「……わからないけど俺は回復魔法を覚える程度までは稼げたよ」
「なら、決まりね。私は風魔法と槍が使えるの。リコは近接戦闘がメインね。でも筋はいいと思うわ。……私たちとパーティを組まないかしら」
彼にとっては願ってもいないことだったがそれを肯定してしまうと二人は、
「……もしかしたら死にかけることが沢山あるかもしれないよ」
「その度に守ってくれるんでしょ。サーシャちゃんっていう子とリコと私を」
「良い暮らしは出来ないかもしれない」
「私はただパーティを組むだけ。稼げるまではいくらでも内職はするわ。それにあなたが助けてくれるって確信があるし」
「俺は一度死んで、守れなかったのに」
「本当に? みんなは死んだの? それとも自分が犠牲になって他の人を助けようとしたんじゃないの? それに百パーセントなんでも守れるなんてそれこそ甘えよ」
彼の言葉全てを否定するリーナ。それでも彼はそれを心地よく感じていた。いくらかあった村を百パーセント守りきれなかった劣等感。それがいくらか楽になった気がしていた。
「……あの時は二人とは結婚の約束をしてたんだよね」
彼の一言にリーナは笑った。
「学園を卒業するまではダメね。それにハーレムが出来ることはもう覚悟した方がいいわ」
彼は二歳児本来のようにリーナの胸で少しだけ泣いた。母性本能をくすぐられたリーナはやっぱり十歳を過ぎたら、と前言撤回をし始めていたが。
どーしてこうなった感が強いですが、すいません。とても眠いんです。これでハーレム作成は確定ですね。
これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。
新しく小説を書かせていただきました。今度からは途中で消すというようなことがないようにしたいと思います。
『不死鳥の召喚士』
https://ncode.syosetu.com/n2153er/
※作者の都合上「在り来り」を消させていただきました。誠に勝手ながら申し訳ありません。
今、「在り来り」のプロットの練り直しと新しい作品を作成しています。これからもよろしくお願いします。




