元仲間1
彼らが宿から出るともう一台の馬車が待っていた。それを彼は見るやいなやその馬車に入っていく。
「サーシャごめんなさい」
「怒ってないよ、ただ遅すぎ。何やってたの」
もう一台の馬車は女性たちの馬車で男性陣を迎えに行ったのだ。ロスはビーズにリースはエレッタに、彼はサーシャに多少注意されたがその後は穏便に済んだ。
元々、話さなければいけないことを先に終わらせていたのであまり怒る理由はなかったようだ。ただサーシャは彼が学園に行くことを聞いて喜んだ。ロスのサーシャが行くと聞いた瞬間決めたそうだ、という余計な言葉により喜びを露わにする。
「ヨーヘイは買い物に付き合ってくれる?」
サーシャのその言葉に反射的に彼は首を縦に振った。もちろん、エレッタやビーズもいるがそれでもサーシャといれることが嬉しいようだ。
その日は彼は一日中買い物に付き合い、フラフラしながら女性たちのとった宿に向かう。
「ごめんね、ヨーヘイ」
眠った彼を膝枕して寝かしていたサーシャは彼の頭を撫でる。小さい頭を撫でる小さな手にエレッタとビーズは苦笑した。
「私たちがパーティ組む前ってこんなんだったのかな」
「わからないけどエレッタとリースはいっつもイチャイチャしてたよね」
それはどっちもどっちよ、と言うエレッタにビーズはニマニマと笑顔を浮かべた。
「良かったわね、ロスが死ななくて」
「……本当にあなたの息子に感謝よ。まあ戦って欲しくはなかったって気持ちはあるのだけどね。今は賢者すら様子がおかしくなっているらしいし」
ビーズは嫌味などを言わず本音を漏らした。エレッタはその姿を見てニヤリと笑う。
「あらあなたがそんなこと言うなんて槍が降るわね」
「もしかしたら隕石かもしれないわよ」
そんな二人の笑い声が消える頃には彼らは宿に着いていた。
「旅館って名前なのか。初めて見る造形だな」
「あまり言い過ぎてはいけないわよ。それに中を見たらびっくりするわ」
ロスの言葉に苦言を呈すビーズ。彼は半目だった目を見開きその場所を見た。
「リーナさんの店だ」
彼の言葉を聞いた者はいなかったがそれでも彼は驚きを隠せなかった。
中に入る彼らに姿を現したのはよく見ていたエルフの女性。だが旦那さんのような人はいない。
「あら、今朝の方たちですね。どうぞこちらです」
いつも聞いていたリーナの声に彼から微かに笑顔がこぼれる。それに気付いたリーナは変な顔をしたがすぐに元の顔に戻った。
「こちらですの」
現れた彼と同じくらいの少女を見てまた彼は驚いた。
「……もしかしてリコって名前かな」
「なんでわかるぅの。もしかして超能力なの」
そうかもね、と言う彼にリコはニコリと笑う。
「お父さんはどうしたの」
彼のそんな言葉にリコは変な顔をした。
「お父さんはエルフの里にいるの。お母さんも同じ場所にいるの」
彼は驚いた顔をしたがすぐに聞いてみる。
「リーナさんとはどんな関係なの」
「お父さんとお母さんの冒険者仲間だったらしいの。それで預かってもらってたの。……リコは外を見たかったの」
これ以上は破蛇かな、と思った彼はそうか、と返した。それに満足したのかリコは彼の近くまで来てニコリと笑う。
彼は気付いた。前いた世界とは少し違うのだ、ということに。もしかしたら前の世界でもリコはリーナの娘じゃないと知りながらお母さんと言っていた可能性もあるが。
彼は少し安堵した。それに気づいた彼はリーナとリコへ独占欲を抱いていたことに気付き始めた。
ちなみに仲間と書いてヒロインと読みます。元ヒロインと書いてますが普通に二人はハーレム枠です。要は……わかりますよね?(ニッコリ)
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