日常と成長7
「お前ら本当に仲いいな。これは十二歳になったら即結婚だな」
朝食をとった後、彼は馬車に乗り込んだ。移動し始めてすぐにロスからいじられ始めた彼は少し頬を染めた。
ちなみにリースは言った瞬間に彼に何倍返しもされるので言えていない。でも仲が悪いという訳ではなく、
「父さん、馬車酔いしてない」
「大丈夫だ、それにしても初めて乗るはずなのにヨーヘイは馬車酔いしないな」
そんな簡単な会話をしていた。
そして彼らは楽しみながら街の門までたどり着く。実際三日かかっていたが彼が力を使えば十分でつけただろう。それを言うのはナンセンスだな、と彼はその言葉を飲み込んだ。
「ヨーヘイは村から出たの初めてだよな。どうだ?」
リースが指を指したのは衛兵たち。きちんとした仕事ぶりなようで街の人からも評判がよかった。
彼はそれを見てあいつを思い出す。あの時は約十四年後だった、と思い出しそうならないように画作し始める。
「お父さん、俺冒険者になりたい」
「はっ……いきなりどうしたんだ」
リースは明らかに動揺した。もちろん、近くで聞いていたロスも驚いた。
「冒険者がすぐに死んでしまうっていうことはわかって言っているのかい」
リースの諭すような声に彼は首を縦に振る。
「わかっているよ、それでも俺は行きたい場所があるんだ。なりたい夢もある」
「……ヨーヘイは学校に通う気はないか。勉学は大丈夫だと思う。魔法とかの威力も高いしな。サーシャちゃんも通おうかなって言って」
「俺はサーシャと一緒に学校に通うよ。でもやっぱり冒険者登録はしておく」
彼は二つのことをリースに認めさせた。彼の心配事といえば村がおかしなことにならないかどうかだが、
「お前らが帰ってくるまでは村を守ってやる。だからいいネームバリューになってくれよ」
ロスの言葉にうん、と頷き任せることにした。
「ロス、これを渡すから剣も強くなっていてくれ」
そうして彼は水の魔剣を渡した。ロスは手に取ってからわかった。
「お前これ……魔剣じゃねえか。そんなもの渡してどうするんだ。ってかどこで手に入れた」
「魔剣だって……ヨーヘイ盗んだのかい」
ヨーヘイは首を横に振って口を開く。
「近くにダンジョンのようなものが出来ていたんだ。それのクリア報酬で手に入れたんだ」
彼が言ったことは嘘だ。それでもそれが一番信用して貰えるとわかっていた。ロスは彼が転生者だということを知っていたためそうか、と納得しておいた。ロスが引き下がったので子どもに言い続けるのは良くないと思いリースも引き下がる。
「俺はあそこにまた帰ってきたいんだ。だから」
「安心していい、俺は弱いとはいえゴブリンソルジャー程度なら倒せる」
えっ、と答えた彼に対してロスも首を縦に振る。
「こいつの考え方がおかしいんだ。ゴブリンソルジャーを武器なしで倒せることを非戦闘員っていうくらいだからな。もちろんエレッタも魔法を撃てばゴブリンキングは殺せるぞ」
はっ、と言う彼を放っといてロスは続ける。
「俺と冒険者をしていた時はこいつが前衛を務めていたからな。防御に関しては馬鹿みたいに強い。俺の攻撃も効かないからな」
「よく言うよ、結構効くんだからな」
盾兵であったリースは攻撃自体は雑魚に等しい。と言ってもゴブリンソルジャーを殴打して殺せるほどはあるが。
「俺の攻撃でも倒れない?」
「それは無理、なんせ俺は非戦闘員だからな」
リースは高笑いしたがロスが腹をぶん殴る。痛くねぇけど痛てぇ、とリースは言ったかと思うとまた笑い出した。いつもとは違う父の姿を見て彼は嬉しかった。
次回から二歳児冒険者のランク上げが書かれます。
これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。
※「在り来り」を書き直そうと思います。一度消してということはせず新しい作品として書かせていただきます。何卒両方ともご贔屓にお願いします。




