日常と成長5
「あぁ私に殺される気ができたのですね。さぁ私とともに死にましょう」
ルーザーの魔法の玉が彼に向かうがそれは届かなかった。
「ヨーヘイ起きろッッッ。お前、サーシャに顔向け出来なくなりてえのか」
彼を守ったのはイヤフォンとロスの矢。頭の中で言い訳だけを並べていた彼の耳には届かない。だがそれでも、
「やるよ、跳弾」
彼が戦闘を行う言い訳を考えるにはいい時間稼ぎをしてくれた。近くの家に当たった銃弾はルーザーの方へ飛び三つの穴を開けた。
「その程度今まで何回も受けてきたわ。……ああその痛みが愛なのでしょう。愛とは何、愛は永遠……なの」
舌打ちをした彼はもう一度銃弾を撃ち込む。次は剣で切り込みに行く。だが彼の斬撃はもう飽きたとばかりに全て手でいなした。
「切られることは愛ではない。それはもうわかったことよ。回りなさい、犬のように」
ルーザーの手が怪しく光ったがすぐに矢を止めるためにその光を消す。ロスの矢は予想出来ていないところを見ると彼は一つの考えを出した。
「ロス、援護お願い」
彼の言葉にグッと親指を立てているロス。もちろんウルフは数が少なくなりほとんどが姿を消していた。
「行きます、空間魔法からの断罪」
ルーザーに少しずつ傷が入っていく。それでも多少だ。彼はルーザーの目の前に飛び斬撃を二つ食らわせた。
「痛みはもうない。心はもうない。それはそれは不必要なもの」
「そんなものまで捨てたらもう人じゃない。食らえぇぇぇ」
彼の斬撃に意識を飛ばしていたルーザーの元に二発の矢が刺さった。その瞬間彼を見失うルーザーは周りを見るがもう遅かった。
「同調、そしてこれで死んでくれ」
彼が気付いたことはルーザーは思い込みが強いこと。もしそれが能力に影響を与えているかと思うと一番に使えそうな能力は同調だった。相手の意識を飛ばして思い込みづらくさせる。
「ツァァァ、こんなことでは死なない。私はまだ……死ねないの」
彼の正常さが同調によってルーザーは影響を受けて仮初の正常な心を与える。それでもルーザーは魔法を撃とうと指に魔力を集め始めた。
「させない」
彼は銃をルーザーの手に撃ち意識をまた散らせた。魔法は集中しなければ出たとしても、
「その程度ならイヤフォンの能力でダメージはない」
小爆発を起こしただけで彼に傷を与えることは叶わなかった。そして未だに弓を援護は来ている。よく見ればウルフはもう全滅していた。
「それはさせられないな」
彼の後に現れた男は彼を吹き飛ばす。それによって元に戻り始めたルーザーはブツブツと呟きルーザーは消えた。
「済まないね、もう少し話してみたかったんだが時間のようだ」
フードを被り顔を出しているのに認識をすることが出来ない。まるで、
「お前は……シンドウ……なのか」
「違うよ、ただその人は知らない訳では無いね。じゃあね、転移者でありながら転生者であるカナクラヨーヘイ君」
その男の声は彼にしか届かなかった。ロスが彼の近くに来た頃にはもう男はどこかに消えている。
だが彼は考え方を変えてロスを救えたことを喜んだ。
「……ロス、俺は」
「わかってたさ、ヨーヘイが転生者だって。だからこそ……俺はお前に救われたからな。ところでお前転生する前は何歳だったんだ?」
一切気にすることのないロスを見てヨーヘイは笑った。これからもこの幸せが続けばいい、と心の底から願った。
彼が戻る頃には村人は全員中心から少し逸れた場所に集められていた。というのもリックの暴走で中心に魔物が来る可能性が高くなったからだ。
リックは親に怒られるという程度ではすまず他のものにまで見放されていた。それを見て彼はわかった。
ロスが死んだのは暴走したリックを守り逃がすためにルーザーと戦ったからだと。その際にホワイトウルフの一体の目に傷をつけそいつらが人の味を覚えたのだと。
今回、彼がいたから死者は数名。それも逃げ遅れたものだけですんだ。それを思うと僥倖だった。
街の立て直しをし始めて四日後、村長たちは戻ってきた。しかし冒険者たちは助けてくれなかったそうでとても激怒していた。しかし彼らが全てを脱したことを知ると彼を神様だ、と言い始める始末。それを久しぶりに見て彼らは笑った。
という訳で村の過去であったロスの死を書くことが出来ました。次は冒険者登録ですかね。それとも公爵のバカ息子?
これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。




