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日常と成長4

 彼はすぐに空間魔法を使い村の中へと戻る。そこにいたのは血を垂れ流し横たわるロスだった。そしてロスに抱きつき謝り続けるリック。

「てめぇ」

 彼はリックを吹っ飛ばしロスにイヤフォンを巻き付ける。しかし回復能力は薄い。

「グルァァァ」

「だから、うるせえんだよ!」

 大きな遠吠えをあげたホワイトウルフ三体の首を一瞬で切り取り眷属たちを銃で撃ち殺した。

「ロス、何があったんだよ。死なないんだろ」

「……すまん、婿さんを泣かせるなんて親として最悪だ。……リックがお前に触発されて……ホワイトウルフに挑みやがったんだ。庇った……ら……こうなっちまってな」

 少しずつ喋るのを億劫になってきたかのようにロスは喋らなくなっていった。

「俺はまだ二歳なんだぞ。……二歳児の目の前で……死んでんじゃねえ」

 彼は手に魔力を集めた。魔法はイメージだった。それは彼自身身をもって実感していた。固有スキルのように徐々にだが回復していく力。それを彼は今望んだ。

「痛えよ……ああ、なんだろうな。……この気持ちよさは。……死ぬ前は……こんな心地になるのか」

「ロスよく見てみろ、治ってきてるんだ。俺の力を信じろ」

 ははは、と力なく笑うロスは自分の腹を見て少しずつ精気のあるものへと変えていく。

「……お前はまだ生きれる。強く気を持ってくれ。じゃないとサーシャに顔向け出来ないだろ」

「……そうだな、諦めたらダメだよな」

 いつの間にかロスは傷が完治して立ち上がれるようになっていた。それはロス自体の固有スキルが開放されたのも関係していたのかもしれない。

『生死逆転』、一度のみ死にかけた傷を癒す。もちろんその時に誰かの助けが必要。だが死にかけていても微量の回復魔法をかけられれば完治することが出来る。

 そして彼には回復魔法LV1の文字がステータスに並んでいた。

「あぁ、ダメなのですよ。せっかくサレムから魔物を借りたというのに殺してしまうなんて」

 現れたのはフードを被った女性。

「あぁ、愚かです。愚か愚か愚か、意味すらわからないでしょう。そのような愛に反するものなど」

 女性は彼らに攻撃を仕掛けた。女性の包帯の巻かれた手から数発の炎の玉。しかし速度はサーシャ以上で避けるのが精一杯のようだった。

 彼は避けてすぐロスにリックを安全な場へと送るため一瞬消える旨を伝えそれを了承した。その間、約五秒。その時にはもう既に次の魔法が放たれロスは水を纏った矢で撃ち返す。

 空間魔法でリックを親元に戻した彼はすぐに女性の上に飛び一閃を加えた。

 「……ぁあ、私を……女神信者十二使徒に逆らうなど……愛ではない、愛は私のモノなのォォォ」

 死にかけだったはずの傷は全て癒え、また空へと戻る女性。

 「ルーザーの名前に恥じない。生きることは恥、殺すことは愛。全てを、壊すの。死ねばいい、それが愛だから。まだウルフは死んでいない」

 ルーザーは地面を指で指した。瞬間、何もいなかった場所からウルフの群れが現れロスに向かっていく。ロスは全てを冷静に対処してルーザーの方を彼に任せた。

 指揮の効果もあってかロスは傷一つ追わず、ましてやルーザーに数本矢を放てるだけの余裕があった。

 彼は何度も空間魔法で近くへ飛び剣を振り落とす。例え首が落とされていたとしてもその強靭的な回復力によって傷はすぐ癒え、彼に少しずつ怪我を追わせていく。

 数発の弾丸でさえも次第に届かなくなる。それが彼は怖かった。アレッサ所のレベルではない。下手したらアレッサは女神信者十二使徒の中で最弱だったのかもしれない。

 彼の頭には恐怖が渦を巻き、体の自由を奪っていった。

女神信者十二使徒のルーザー登場です。女神信者十二使徒は普通に全員頭おかしいので注意してください。過去の影響でこうなっているので外伝とかで出そうと思います。出来ればストーリーの中で女神信者十二使徒の一人一人の過去を出していきたいですが。


これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。

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