初めてのダンジョン4
少しぶっ飛んだストーリーになるかもしれません。ご都合主義、ご都合主義(笑)
彼らがあと五階で最下層に着く際にララは目を覚ました。
「……っは、ここは……」
ララは痛い手を見ようと前に出そうとするがそれは叶わない。首を斜め後に曲げ手の方を見ると手錠で繋がれている。
ララはそれに気付き急いで魔法を撃とうとするがやはりそれも叶わない。
「やっとお目覚めですか」
「……あなたは……アレッサ? なんで元賢者が」
アレッサは一つため息をつくとその問に答えた。
「簡単な話です。元弟子であったあなたに最後の指導をしなければと思いましてね」
「……あんなことが起こってからあなたを師だとは思っていない」
「そのような言い方も久しぶりですね。あの時と同じく全てを壊されたいのでしょうか」
アレッサは意地汚く笑った。小さな魔法を放ちそれは横にいた少女にぶつかる。煙が上がり痛がる少女を悦に浸りながら見るアレッサ。
「あなたは変わってしまった。元賢者アレッサ」
「いえいえ変わりません。それに今の私は女神信者十二使徒の一人、七の刻を司るアレッサです。あなたが可哀想と思っている少女はただの吸血鬼ですよ。人ならざるものでありながら人であるもの。両者から嫌われているものではないですか」
「ええ、そうかもしれないわね。でも彼女も生きようとしている。それを踏み付けるのはおかしなことよ」
ふむ、と唸ったアレッサはすぐにまあ良いでしょう、とその場を後にした。出ていく際に、
「ここに冒険者が向かってきているようですよ。願ってみてはいかがです? 私を助けてくれと」
そんな言葉を残して。
ララはそれを見てすぐに少女に呼びかける。
「あなたは吸血鬼なの?」
少女はそれに応えることは無い。だが少し困ったような表情を浮かべていた。少しの沈黙が流れる。少女は少し口を開くとまた閉じる。それを繰り返しているうちにまたアレッサは現れた。
「さぁ準備が整いました。ララ、あなたには魔族となってもらいます。……そして私と永遠の誓いを結びましょう」
とても嬉しそうな顔でララを見るがララの表情は優れない。それを知りながら強制的に立たせたアレッサは下の階へ降り始める。
「彼らの目の前であなたとの誓いを見せましょう。彼らの死をもってあなたは完成するのです」
自分勝手なアレッサにララはただ一言、勝手にすればいいとだけ言いアレッサの後を付いて行った。手錠が外れることは無い。ほぼほぼ諦めきったララは自分の人生を恨んでいた。
そんな時だった。アレッサが開こうとしていた扉が勝手に開き始める。
「そういう事は相手の顔見てやった方がいいと思いますよ」
アレッサは急いでララを手元に寄せようとしたが、もうそこにはララはいない。
「えっ?」
「大丈夫ですよ。ヨーヘイが来ましたから」
サーシャのその一言とともにリーナとリコの元へと飛んだ。破壊のグローブの効果で破壊したのはダンジョンの結界。転移などでほかの場への移動が出来ないようになっていたものを一瞬だけ壊して外へと連れ出した。空間魔法はレベル一であろうと転移が使える。それは賢者自身が書物に残していたためサーシャは使った。だがMPの消費も大きくリーナに背負われながら外へと向かう。レベルがとても上がってSランク一歩手前の力を持ったサーシャでさえ一度、しかも短距離が限界だった。だが短距離でも賢者から距離を取らせることに意味があった。
「貴様ら……」
「ダメですよ、嫌がる女の子にそんな事をしては」
この時賢者は気付いていなかった。シンドウとハクがもう既にそこにはいないことに。そのまま怒りを杖に乗せアレッサは攻撃を仕掛けるが剣ではじかれる。
しかし彼も焦っていた。思いのほか強すぎる。冷静さを欠かせたことによって攻撃が単調だからかわせている彼はすぐに距離をとる。一撃一撃が重い。それでいて魔法も撃たれているため彼に反撃のチャンスはない。それがわかっていたため彼はサーシャとララを先に逃がし、シンドウとハクに吸血鬼を任せた。
そして彼は体を貫かれていく。一回目は右足に、二回目は左手に、三回目は左肩に。そして体の殆どを貫かれた彼はもう虫の息となっていた。
「助けに来たと言う割にはお粗末ですね。それでどうやって私を倒そうと思ったのですか」
彼はアレッサの言葉を聞かずにアレッサに同調を仕掛ける。アレッサはさじと無視していたが彼からしたら好都合だった。
「お前と心中するためさ」
アレッサの空間魔法を使用して両者を他の場所へと飛ばした。
【スキル、空間魔法を獲得しました】
そんなアナウンスの中、彼は瞳を閉じた。アレッサに刺された傷が少しずつ彼の命の灯火を消していく。遂には彼は息を引き取った。
それを横から見ているアレッサは彼の死体を炎で葬り去りただ笑う。飛んだ暗闇が続く場所でアレッサは黒い魔物に頭を食われて命を落とした。
そして目を覚ました彼は気付いた。
「ーーお子様が生まれましたよ」
彼はサーシャのいた村、リズの村で新しく生を受けたことに。
ちなみにですが元の世界とは時間軸が違いますしあちらの世界のシンドウなども後になって出てきます。
こちらの世界でどのような行動を取るのか、そこら辺を楽しみにしていてください。
これから起こることを知っている彼の取る行動、そして前の時間に戻っているためやりたい放題ですね。
死亡フラグは絶対ですね(笑)




