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綺麗なエルフ3

 公爵の息子は焦っていた。定期的に報告に来ていた執事の連絡が途絶えてもう数日にもなる。執事が命令に従うということは自分自身で出来ると判断し完了するということ。今まで執事が命令を失敗するということは無かった。例え見初めた宿屋のエルフの妻を手に入れるためであろうと執事は出来ると判断したため行動を移した。

 エルフの夫をまず殺すため買出しに出た夫を路地裏まで監禁する。だがひょろひょろとした夫を見てなんの気まぐれか執事は金をやるから別れないか、と問うた。この時夫が妻と別れると言っていたのであれば殺されてはいなかったのかもしれない。だが夫は俺が殺されようと俺以上に二人にお似合いの人が現れる、とだけ言って舌をかみちぎった。執事は手を出さずとも夫は死んでいただろう。だがいくらかの情を持っていた執事は夫を苦しませないように首を落とす。

 この世界では首が落とされたということは事故ということになる。喧嘩に巻き込まれて死ぬ者も多い世界では認識が違うのは当たり前だろう。

 予想通りと言うべきか舌が噛みちぎられていたのは殴られた時に誤ってそうなってしまった。そして首が落とされていたのは口封じのためということで解決した。

 当たり前だろう。その衛兵の裏にいるのは公爵家、どのような終わりが決める権利が公爵家にはあったのだから。

 リーナはそれを聞き失意のどん底に陥った。それをチャンスととった公爵の息子はリーナに近付くがリコがそれを許さない。またリーナも下心が見え見えの相手に心を開くことは無かった。だからこそ公爵の息子は二人を奴隷として手に入れる算段を立てる。

 同業者に金を払い女を用意することで嫌がらせを始めさせる。客を奪いそれでも泊まろうとするものには執事が手を出していた。

 だがそんな仕事の最中であっても定時連絡はきちんと行っていた。つまりは、

「エルートが死んだのか。……そんな馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な。あいつは人外一歩手前のAランクだぞ。ここら辺の衛兵を鍛えたのもエルートだ。そんなやつがDランクの奴らに負ける?」

 公爵の息子は未だに彼らの力を知らない。そして執事を倒したのは本気ではないことも。そんな公爵家にある知らせが入る。

「申し上げます、何者かが侵入しました。……侵入しました、侵入しました、侵入しました」

「はい、ご苦労さん。さて罪を償う気にはなりましたか?」

 白い紐のようなものを体に巻き付けた少年。あの姿は、

「何故ここにいる、Dランク冒険者ぁぁぁ」

 彼は今、シンドウの能力によって他のものからの認識を変えている。それを受けながらも彼の正体がわかった公爵の息子に少し感心していた。だがそれまでだ。

 公爵の息子は剣を持ち彼に向かっていくが遅い。執事の速さを、ホワイトウルフの速さを超えているわけはないだろう。公爵の息子は執事の力を過信していた。そのため自分から強くなろうということをしなかった。

 そして公爵の息子の首になにかが絡みつく。白い紐、イヤフォンに首をじわりじわりと締め付けられていく公爵の息子はそのまま泡を吹き気絶した。

 彼は公爵の息子を背負う。彼にかかっている認識変化が公爵の息子にまで影響を与え、彼らを見つけられる者はいない。

 翌朝、飲みから帰宅していた冒険者の一人によって晒し首のようにされた公爵の息子が見つかった。

 公爵家の者はそれを知り安堵した。息子の行っていた行動は目に余るところがあり実質絶縁状態に近かった。だが執事の存在によりそれは叶わなかった。

 目の上のたんこぶとも言える二人がいなくなった公爵家は次第に民を重んじるようになり吟遊詩人に歌の作成を頼む。ある夜に自分のところを訪ねてきた男の話を。

「あなたたちの話を聞きたいのです」

 盗賊の義が消えた時に執事の首を持ってきた少年。なぜか顔を見ても覚えることが出来ずフラフラする頭で対処をしていた。

 もちろん領主家は本当のことを答えた。そして執事であるエルートが殺されたことを喜んでいると。出来れば息子も殺してしまってほしいと。息子のせいで領主家の評判が悪くなってしまったということを。

 彼は三つの条件を出しそれを快諾した。

 一つ目に衛兵の練度をあげること。二つ目に民を重んじること。三つ目に裏ギルドを潰すために他の表上にいるギルドと手を結ぶこと。

 領主家にとっては願ってもいないことだった。領主の妻は平民出身、それで平民たちがどのような生活なのかを知っていたから。そしてそれを一番恥だと馬鹿にしたのが息子であったこと。息子が三人いる中で他を馬鹿にすることを教えたことはないと彼に答える。

 首を縦に振った彼は扉から消えていく。そして誰にも気付かれずに翌朝息子の死体が発見されたのだ。領主家は喧嘩に巻き込まれたとして事件を闇に葬る。図らずも夫と同じ事件の片付け方は恨みから来ていたのかもしれない。

 その後、その街はより活気に溢れ領主家と良い関係を結ぶ。吟遊詩人が歌った闇夜に消える白き紐を持つ者の噂から伝説。そして民はそれを神の使いと崇めた。

 神の使いはそれを知った時顔を強くしかめて馬鹿なのか、と言い、他はその歌を賞賛した。

次回、綺麗なエルフ最終回です。またストーリーが進み始めます。

ちなみにですがコチラの作品にも女神信者十二使徒は出てきます。ミーも出てくるのでミーが好きな人はこれからを楽しみにしていてください。


これからも「イヤフォン」をよろしくお願いします。ブックマークや評価等もよろしくお願いします。

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