午後の冒険者ギルド
「依頼完了の報告をするためにはどうすればいいのですか」
彼は中に入ってすぐに近くのギルド職員に聞いた。話しかけたのはララではなく男の人。
「それならこちらまで来てください」
そうして彼らが通されたのは受付の隣にある素材提出場と書かれている場所。
「このテーブルの上に一人ずつ置いていってください」
彼は言われた通りにみんなが倒したのを個別に分けて提出していく。素材提出場と書かれているが討伐証明の場所を出すだけでいいので簡単であった。
「はい、一人四十匹が……三回……?」
ギルド職員は顎が外れるかというところまで驚いた。それを横目で笑うハクは彼に怒られそして頭を撫でられる。同じ手は食わんぞ、とサーシャに言うあたり彼の優しさが垣間見えている。
「確認しました……依頼を八回分完了したということでこの紙を受付で提出してください。また素材や他の討伐した魔物も出してもらえるとありがたいです」
彼はそう言われたのでコボルトソルジャーの討伐証明も提出しコボルトたちの素材を出す。コボルトの素材は皮と武器であるジャックナイフだけ。鍛冶師がそれを溶かして武器にするそうで意外に高く売れている。
FとEランクの魔物とはいえ数が数だけに総計約七千五百ミラーになったため彼らは喜んだ。
彼はその後受付に向かうのだがやはり朝の縁ということでララの前に並ぶ。もちろんサーシャとハクは反対してシンドウはヨーヘイさんがしたいならと考えを放棄していた。
「すいません、討伐してきました」
「早かったですね。えっと討伐数は……はい?」
ララが驚いたのも無理はない。このギルドで入りたてしかも名前も知れていない人たちが総計百六十匹の魔物の討伐依頼を三回も完了しているとは思えなかった。ましてやどうやってその魔物たちに出会ったのかも分からない。そのためララは少し恐怖を抱き震えた。
「えっと……大丈夫ですか?」
彼はララに一言そう言って頭に手を乗っけた。彼からしたらセイナやサーシャ、ハクがそうしたら喜ぶからと言った理由でやったことなのだがララからしたら、いきなり頭を触られた、これは好かれているのか、と頭が錯乱状態に陥っていた。その甲斐あってかララの彼らに抱く恐怖はなくなり朝と変わらない態度をとることが出来た。
「はい! 四人とも力を示してそれに実績も叩き出したので一弾飛ばしでDランクに昇格です。もしかしたらすぐにAランクになってしまいそうですね」
ララは半ば冗談で言ったのだがそれが間違いではなかったと後々気づくことになる。
「おい、まだであるか。あとがつっかえておるのだ」
後ろの小さな少年と執事のような人に急かされて彼らはすぐに横に退散する。Dランクと書かれたカードを持ちながらギルドを出ようとしたその時だった。
「さっきのお主、その魔物可愛いであるな。譲る気にはならんか」
さっきの少年のわがままが始まった。周りはというとまたこれか、と言うばかりで助けようともしない。執事は周りに睨みを聞かせどちらかというとチンピラのようだ。
「いえ、お断りします」
「私も行く気は無いから」
彼とハクの言葉で泣きそうになる少年を無視して彼らはそそくさとその場を後にした。
残った少年はというと、
「許さぬぞ、我が公爵家を馬鹿にした罪その身に知るがいい。頼むぞ、エルート」
自分のことを棚に上げた貴族の少年の怒りに触れたようだ。だが、この少年は後になって手を出したことを後悔する。あの時彼の魔物がハーピィクィーンという従魔にするだけでSSSランクの力は必要だということを知っていればと。
ちなみにこの貴族の少年の名前は作る気がありません。ぽっと出の雑魚なので。