表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編・エッセイらしきもの

冬に咲く恋

作者: 本谷文途

手に誓おう──

「ふふ、今日はお豆腐おまけしてもらっちゃいました──」


 今夜は冷奴(ひややっこ)にしてもらいましょう、と浮かれながら今野(いまの)(ふゆ)が帰り道を歩いていると、前からガラの悪い男二人が歩いてきた。

 冬は端に寄って、そっと通りすぎようとした。だが、ガラの悪い男たちは、身なりの整った冬を見逃さなかった。


「こんにちはぁ、お嬢さん。買い物帰り?」

「……ぇ、まぁ、はい……」

「荷物重そうだから持ってあげるよ、なんなら家まで送るし、なあ?」

「ああ──」


 と男二人は顔を見合わせてにやつく。


「け、結構です、そんな重くないし……」


 そっと冬が避けて行こうとすると、一人の男が腕を掴んだ。


「っ?!」

「まあまあ、そんな警戒しないで──」

「そりゃ警戒するだろう、下心丸出しな顔をした男に腕を掴まれたら」


 とがたいは良いが、すらっとした男がやって来て言う。

 そして、制服を身に纏っている彼は、冬に訊いた。


「この男たちは知り合いで?」

「ち、違います……!」

「そうか──」


 それから彼は軽く頷くと動いた。

 まずは冬の腕を掴んでいる手を離させ、そのまま腕を後ろに回して押さえる。


「って! 何すんだお前!」

「いや、その方があなた方を知らないと言っているので、防衛を──」


 と彼は言いながら、腕を上にあげていく。

 男は「痛い痛い痛い」と顔を歪めながら言った。


「わ、わかった! そのお嬢さんにはもう近づかないっ、だから腕を離してくれ……! 折れる……っ!」

「大丈夫、関節が外れるだけだ」


 真顔で言う彼を見て、片方の男は「ひぃぃぃぃ」と悲鳴をあげて逃げ出し、捕まっている男の顔は青ざめていく。


「や……っ、やめてくれっ」


 あまりにも男の顔色が悪くなっていくので、彼は仕方なさそうに溜め息を吐いた。


「ふむ……。懲りたなら結構だ。早く立ち去れ」


 ぱっと彼が手を離すと、男は脱兎のごとく逃げていった。


「……次はないと思うが、これからも気を付けた方がいい」

「あ、はい、ありがとうございます。あの、貴方様のお名前は……? 私は冬と言います。今野冬です」


 「お礼がしたいんです」と冬が言うと、彼は少し困ったように笑ってから答えた。


「お礼なんてとんでもない──。ただ、困っているのを見過ごせなかっただけだ。私は来島(くるしま)光治(こうじ)。次は気を付けるといい──」


 と光治は答えて歩いていく。


「……光治様」


 光治が過ぎ去った後、冬はぽそりと名前を呟き、胸がきゅっとなるのを感じるのだった。


 *


「何? 冬、帰ってきてからずっとぼーっとしちゃって──」


 と冬の母はテーブルに夕飯を運びながら、うっとりとする冬に訊く。

 冬はふふっと嬉しそうに笑うと、母にさっきあったことを話した。


「……まあまあ、そんな人が? 良いじゃない。私は好きよ、そういう人」

「でしょう? お礼したかったんだけど、住所とか訊くの忘れちゃって……」


 しゅんと肩を落とす冬に、母は「あらま」と苦笑いして続ける。


「大丈夫よ、きっとまた会えるわ──」

「何? 何の話」


 とそこに冬の兄である夏輝(なつき)がやって来て、話に加わった。


「冬がね、今日助けてもらったんですって」

「光治様っていうの」

「光治……名字は?」


 夏輝はどこかで聞いたことのある名前だと思案する。


「来島──来島光治様よ」

「来島光治……ああ!」


 と夏輝は「思い出した!」と手を叩いた。


「後輩だよ、お前と同い年だ。来島は校内で有名な奴でな──家はそんなに名高いわけではないが、腕は立つし頭もキレる。一回手合わせしたが、いい動きをしていた。まぁ、俺には勝てなかったようだが」

兄様(にいさま)と同じ所に通っているのですか?!」


 思わず、ぐいっと冬は夏輝に顔を寄せていた。

 夏輝は「近い……」と冬の顔を遠ざけてから答える。


「……そうだな」

「やった! また光治様に会える……!」


 冬は嬉しそうに笑ってから、またぐいっと夏輝に顔を近づけて言った。


「兄様、お願いがあるの──」


 キラキラとした瞳の奥に、何か企んでいるのを感じ取った夏輝は、少し眉間に皺を寄せて、冬の願いを聞くのだった……。


 *


「光治様はどこに居るのでしょう……」


 次の日、冬は校内をきょろきょろしながら、光治を探していた。

 校内といっても、冬が通っている学校ではなく、夏輝が通っている学校だ。

 もちろんそのままの格好では追い出されるので、夏輝から借りた制服を見に纏っている──。


「うーん……うわっ──」


 よそ見をして歩いていたせいで、前から来ていた生徒とぶつかってしまった。


「どこ見て歩いてんだ? あ?」

「す、すいません……、ちょっと人を探していたもので……」

「そうか──というかお前、見かけない顔だな──」


 とその生徒は冬を訝しげに見つめる。

 そしてじっと頭から爪先まで見てから、生徒は口を開いた。


「お前……もしかして、お」

「お話中失礼致します。能都(のと)さん、先ほどあちらで岩見(いわみ)さんが探しておりました。至急来てほしいとのことです」

「ん? 来島──そうか、わかった。今行く」


 能都はまだ冬を怪しんでいたが、そのまま早足で歩いていった。


「光治様……!」

「何をしている……!?」


 冬が名前を呼ぶのと同時に、光治も言葉を発する。


「光治様にお礼がしたくて……!」

「そんなことを訊いてるんじゃない──とりあえず、移動しよう」


 と光治は周りに注意を払いながら、冬を先導した……。


 *


「改めて、何をしているのですか……」


 人目の付かない場所に着いてから、光治は改めて冬に(たず)ねる。

 冬は少し考えてから答えた。


「……潜入、でしょうか」

「なぜ……」

「光治様に、お礼がしたくて──」

「迷惑だ」


 ずばっと、光治は言って続ける。


「貴方は女性だ。もし男しかいない校内で女だとバレたら、どうなっていたか想像したか?」

「そ、れは……」

「私が通りかかったから良かったものの、もし来なかったらどうするつもりだったんだ?」

「ご……ごめんなさい……」


 返す言葉が見つけられず、冬は俯いて謝る。

 「はぁ……」と光治が小さく溜め息を吐いたのがわかって、冬は俯いたまま言葉を溢した。


「迷惑かけて、ごめんなさい……。でも、どうしてもお礼がしたくて……。あの時は住所も聞けなかったし──でも、家に帰って話を

したら、兄様と同じ学校に通っているってわかって、いてもたってもいられなくって……! だから、その……」


 控えめに顔を上げ、光治の顔色を窺うように、冬は言った。


「貴方に、どうしても会いたくて……自分でもわかってるんです、ちょっと大胆だったかもしれないって……。でも、こうでもしない

と、もう会えないと思ったから──」


 一生懸命言った冬に、光治は少し驚く。

 けれども、ちゃんと注意はするべきだと、光治は一つ咳払いしてから言った。


「……いかなる理由があろうと、やっていいことと悪いことがある。今後、潜入など、こういうことはしないように」

「はい……」

「それから──」


 あまりにも冬がしょんぼりと肩を落とすので、光治は少し苦い顔で続けた。


「……次会う時は、普通の格好をすること──わかったか」


 冬はそっと顔を上げ、それからぱあっと笑顔になって聞き返す。


「また、会っていただけるのですか?!」

「……あぁ。ただし、帰りだ。それでもいいなら、授業が終わったら校門の前にいろ。帰りに通るから、ついでに送る──昨日の輩(

やから)も手を出してこないとは限らないからな」


 と光治は言って、小さく溜め息を吐いた。

 冬は嬉しそうに、大きく頷くと笑った。


「はい……! 待ってますね──!」

「ぁ……あぁ……」


 光治はそんな冬に少しどきりとしながら、そっと視線を逸らした──。


 *


「光治様ー」


 次の日、本当に冬は校門の前にいた。

 大きく手を振って、嬉しそうに笑っている。


「……帰らなかったのか」

「だって、光治様が言ったんですよ、校門の前にいろって。それに、光治様に会いたかったので」


 少し照れたように笑う冬に、光治はどう反応すればいいのかわからず、頬を掻く。


「……そうか……」

「はい──」


 それから歩き出し、隣で嬉しそうに笑う冬に、光治は疑問を投げ掛ける。


「何がそんなに嬉しくて笑うんだ?」

「光治様の隣で、こうして歩けているのが嬉しくて笑っているのです」

「そ、うか……。申し訳ない──」


 と光治は少し難しそうな顔をして謝った。

 冬は「なぜ謝るのですか」と不思議そうな顔をする。


「こういう時、どう反応していいのか、よくわからないのだ──慣れていなくてな……」


 と光治は頭を掻く。

 そんな光治が可愛くて、冬はふふっと笑った。


「そうなのですね──それじゃあ、まず呼び方から始めましょう」

「呼び方?」

「そうです。私が光治様とお呼びするように、光治様は私のことを冬とお呼びください」

「いいのか? 呼び捨てにして」


 と光治が訊くと、冬は笑顔で頷く。


「もちろんです。だから提案したんですよ」

「……そうか。わかった。じゃあこれからは冬と呼ぶよ」

「はい──」


 と嬉しそうに笑った冬に、光治も微笑み返すのだった──。


 *


 それからほぼ毎日、用事がある日以外、冬と光治は帰りを共にした。

 冬は、今日何があった、何をした、そんな些細なことを光治に話した。

 最初は「そうか」など、光治からは短い返事だけだったので、冬の一方的なものだったが、今は光治も短いながらも話をするようになり、一方的ではなくなってきていた。


「今日猫さんが、近所の塀の上でお昼寝をしてたんですけど、可愛かったんですよ」

「そうなのか。そういえば、俺……失礼、私も見たな」


 と光治は一つ咳払いして言い直す。

 冬は首を傾げて言った。


「何で今言い直したんですか……?」

「……外では礼儀正しくと、幼い頃から言われている──学舎(まなびや)じゃないとはいえ、気が緩んでしまった。失礼」


 小さく頭を下げる光治に、冬は嬉しそうに笑って光治に言った。


「謝ることないです。それって、気を許してくれてるってことでしょう? 嬉しいです、光治様のまた新しい一面が見られて──。これからは遠慮なく、自分のことを俺と言っていいんですよ」


 ぐっと親指を立てて見せる冬に、光治はプッと小さく噴き出す。


「……そうか、わかった。ありがとう」

「いえいえ──」


 と笑う冬に、光治は微笑んで言った。


「冬と居ると、新しい発見がある」

「新しい発見、ですか……?」

「あぁ。些細なことなのに、冬から聞いた後にそれを見ると、なぜか優しい気持ちになるんだ。それに、冬が話した物とかを見ると、冬が思い浮かぶ。不思議だな──」


 と光治は言って、冬を見る。

 冬は「それって……」と胸が高鳴った。


「あ、の、光治様……それって──」

「よお、お二人さん、今帰りか?」


 とそこに夏輝がやって来て間に入る。


「兄様?!」

「よ。ちょうどお前らが見えたからな。声かけてみた──来島、毎日悪いな。妹送ってもらって」


 声かけなくていいのに!と冬は恨めしく夏輝を見るが、夏輝は気付いていないのか、光治に話を振る。

 光治は「いえいえ」と軽く手を振り応じた。


「新しい発見があるので楽しいです──では、私はこれで」

「おう。またな」


 夏輝に軽く会釈し、冬にも軽く頭を下げ、光治は先を歩いていった。


「……なんで声をかけたのですか!」

「なんでって、お前らが居たから」

「~っ、兄様の無神経!」


 と冬はずんずん先を歩いてく。


「無神経とはなんだ、無神経とは……って、こら、おい!」


 と夏輝はなぜか苛立っている冬の後を追うのだった──。


 *


「ただいま」

「おかえり光治、悪いけどちょっと手伝ってくれる?」

「わかった──」


 母に言われ、光治はお盆に乗っている定食を、お客に運ぶ。

 光治の家は小さな定食屋を営んでいる。

 厨房で父が料理を作り、母もその手伝いをしながら料理を運ぶ。

 小さい頃から店の手伝いをしている光治は、お店の雰囲気とお客さんの笑顔を見るのが好きだった──。


「お待たせしました」

「おう、ありがとよ。お前さんは偉いねえ、いつも家の手伝いしてよ。もっと他にやりてえこととかねえのか?」


 常連客のおじさんにそう問われ、光治は少し考えてから答える。


「そうですね……。特には──でも、こうやって店の手伝いをすることで、両親が少しでも楽になるなら、俺はいいです」

「く~っ、ほんとお前さんはできた子だ。よし、餃子追加だ!」

「ありがとうございます」


 光治は笑って、餃子追加お願いしますと厨房に声をかけた──。



 閉店後、母は光治に訊いた。


「最近、良いことあったでしょ」

「え?」

「表情が柔らかくなった気がする」


 と母は笑って、カウンター席に座る光治の隣に腰を下ろす。


「ほら──、最近いつも冬さんの話するじゃない? その人のおかげかなって、母さん思ってるんだけど」

「え、あぁ……かもしれない」


 と光治は冬を思い出して微笑んだ。


「まあ。光治ったら、そんな顔初めて見た。いつも真面目な顔ばっかりで、母さんちょっと心配だったのよ、笑えないんじゃないかって」

「母さん……」

「冗談よ冗談──」


 と母は笑って手を振る。

 それから優しげに光治を見て、微笑んだ。


「でもよかった。光治にそういう人が出来て……。大切にするのよ?」

「あぁ──」


 光治も微笑んで頷いた。


 *


「……今日は元気がないみたいだが、何かあったのか?」


 普段なら会った直後から冬のお喋りが始まるのだが、今日は口数が少なかった。

 冬はしょんぼりした様子で、光治に言った。


「何かっていうか、明日から二週間、同じ教室の人たちと勉強会があるんです……」

「ほう。勉強が嫌なのか?」

「いえ、勉強は嫌じゃないんです。でも、そうなると光治様と一緒に帰れなくなるのが残念で……」


 と冬は肩を落とす。


「たった二週間だろ? あっという間に終わる」

「されど二週間です……!」


 と冬はあっけらかんと言った光治に、力を込めて言った。


「……なら、二週間会えない分、今日いっぱい話しておけばいい」


 「それじゃ駄目なのか?」と光治が冬に問い掛ける。

 冬は明日のことに気をとられ、今の時間を忘れていた。


「あ、そうですね! 嘆いてる場合じゃないです! 光治様、今日はちょっとゆっくり歩きましょう、話し足りないです」


 といつものように喋りだした冬に、光治は可笑しそうに笑って提案する。


「なら今日は、少し遠回りするか」

「はい! お願いします」


 にこりと笑った冬に、光治も笑い返して、二人は普段とは少し違った道を歩きだすのだった──。


 *


 冬と帰らなくなって一週間。

 光治は胸の中で、冬の存在が大きくなっていることに気づいた。


「……静かすぎる──」


 通りすぎる子どもたちのはしゃぎ声、井戸端会議をする主婦たちの甲高い笑い声、それらが静かに聞こえるほど、冬との話は光治にとって大きかった。

 周りの声なんか気にならないくらい、冬と過ごした帰りの一時は、光治にとって良い意味で騒がしく、心地の良いものだった。


「あと一週間か……」

「どうした?」


 いつの間に来たのか、夏輝が光治の顔を覗き込んで訊く。

 光治は少し驚きながら、夏輝に言った。


「いえ、最近、冬さんと帰らなくなってから、何と言いますか……こう……」


 と光治は伝えようとするが、上手く言葉に出来ない。

 夏輝はそんな光治を見て、ふっと笑った。


「寂しいか?」

「寂しい──? ……あぁ、そうかもしれません」


 光治はその言葉で妙に納得した。

 せいせいしたとは違う、何となく物足りない……、そんな感じだ。


「今野さん、きっと私は、冬さんのことが──」

「やめろやめろ、今それを言うな」


 と夏輝は光治の顔の前に手の平を突き出して、言葉を止めさせる。

 それから夏輝は一つ息を吐いて言った。


「その言葉を向けるのは、俺じゃないだろ? それに、俺がお前からその言葉を聞いたとアイツに言ってみろ、きっとアイツは何で何でと掴み掛かってくる。それだけはごめんだ」


 と夏輝は眉間に皺を寄せる。

 光治は難なくそれが想像出来てしまい、口元を隠して少し笑った。


「……やりそうですね」

「だろ? だから、その言葉はアイツに直接言ってくれ──。あと、俺から言えるのは、まぁ……これからも仲良くしてやってくれってことぐらいだな」


 と夏輝は苦笑いする。


「で、兄としてあと一つ言わせてもらえるなら……。冬を宜しくな」


 微笑んで言った夏輝に、光治はしっかりと頷いた──。


 *


「ちょっと冬? もう帰るのー?」

「うん! ごめんなさい! また明日──!」


 友人にそう答えながら、冬は下駄箱に向かって走っていた。

 やっと二週間が終わり、今日からまた光治と一緒に帰ることができるのだ。


「今野さん! 廊下は走らない!」

「はい……! ごめんなさい──」


 途中教師に注意され、冬は走るのをやめて早歩きにする。

 それから教師に見えない所まで来てから、また少し走り始める。

 それから靴を履き替えて門の前に向かうと、すでに光治が来ていた。


「光治様──今日は早いですね」

「ちょっとな」


 と光治は笑って、冬を見る。

 冬は笑って、さっきあったことを話し始めた。


「聞いてください、光治様。さっき、私光治様に早く会いたくて、廊下を走ってしまいました」

「それは駄目だろう」

「はい。今みたいに注意されちゃいました──」


 「ダメですね」と冬は苦笑いしてから、でも……と続けた。


「光治様に会えると思ったら、いてもたってもいられなくて……」


 照れて笑う冬を見て、光治は「あぁ……」としっかり自分の中で、確かな感情が芽生えているのを感じた。


「光治様……?」


 少しの間ぼんやりとしていた光治に、冬は顔を覗いて言う。


「どうかしましたか? 帰りましょう」


 にこりと笑った冬に、光治は優しく伝えた。


「冬」

「はい……?」

「俺は、貴方が好きみたいだ──」


 冬はきょとんとしてから、ふふっと笑う。


「光治様でも、冗談を言うのですね。それでも嬉しいですけど」

「冗談ではない。本当だ。ゆくゆくは一緒になりたいと思っている」


 真剣な顔で告げる光治に、冬は徐々に頬を染めた。


「口に誓うのは、一緒になる時と決めている。だから、今はここに誓おう──」


 と光治はすっと冬の手を取り、甲にキスを落とす。


「……俺と一緒になりませんか」

「っ……はい!」


 頬を染めた冬は、嬉しそうに笑って頷いた。


「でも……、もうちょっと場所を考えてほしかったです……」

「え? ……あ、すまない──」


 気づくと、周りには生徒の群れが出来ていて、冬と光治を遠巻きに見ていた。

 二人は気恥ずかしくなりながらも、顔を見合わせて笑うのだった──





冬「これからは手を繋いで帰りましょう(笑顔)」

光治「あぁ──(微笑む)」



良ければ他のも読んでってください(^^)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お世話になっております、太ましき猫です。 只今、ブックマーク拝読の旅に出てまして、伺わせて頂きました。 初々しい二人の様子が、温かな周囲の視線に見守られ、ほっこりする物語にまとまっています…
2017/06/27 19:48 退会済み
管理
[良い点] シンプルなガール・ミーツ・ボーイ物であるところ。 [気になる点] 時代詐欺と仰っておられますが、そうならないための創意は必要かと思います。 [一言] 明治でも大正でも昭和初期でもいいんで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ